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南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

交通事故被害者のための刑事事件Q&A 7

2006年09月06日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
Q 弁護人から被害者側に連絡があった場合どうすればよいでしょうか。
A 加害者側から弁護人を依頼する理由の一つとして、弁護人に被害者との交渉窓口となることへの期待があります。
 弁護人が被害者側へ連絡を取るのは、加害者側からの謝罪の意を伝えたい、被害弁償をしたいということが主要なものとなるでしょう。
 これに対して、被害者側がどのように応対するかは被害者側の自由です。
 もっとも、次のことに留意してください。
 ① 被害者側からの発言は記録されます
 録音をしている弁護士はそう多くはないですが、被害者側の発言は電話でのやりとりを含め、記録されるものと思ってください。これは、加害者側の弁護人としては被害者側とのやりとりを加害者サイドに報告するのが責務だからです。
 ② 加害者側からの謝罪の意を受け入れる、被害弁償を受け入れる、示談をするというのは、加害者の刑事事件の処分で考慮されます。
 被害弁償や示談というのは民事の分野のことですが、実は刑事事件の処分で考慮されます。もちろん交通事故事件の場合、被害弁償や示談をしたからといって、刑事事件がないことになるわけではありません。
 刑事事件は刑事事件として手続きに沿って行われますが、加害者の処分、つまり、起訴になるのか否か、起訴になるとして略式罰金なのか正式裁判なのか、正式裁判になったとして執行猶予なのか否か、実刑になるとしてもその刑がどの程度になるのか等にある程度の影響を与えてきます。
 被害者の方にこのことをお話ししますと、「意外」という受け止め方をされる方が多いので、この点はあまり知られていないことのようです。
 このような理由から、加害者に厳しい処分を臨む場合は、刑事事件が終了してから民事事件のことをした方がよいということになります(もっとも、民事の時効には気をつけてください)。


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交通事故被害者のための刑事事件Q&A 6

2006年09月04日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
(加害者側の弁護人について)

Q  起訴される前に加害者側に弁護人はつきますか。
A 必ずつくというわけではありません。
 弁護人には、加害者本人やその親族がお金を弁護士に支払って弁護人として活動してもらう私選弁護人というものと、国費でつけられる国選弁護人という2種類にわけられます。
 私選弁護人を選ぶかどうかは、加害者側の自由です。
 国選弁護人については次のQ&Aをご参照ください。

Q 起訴される前に国選弁護人はつかないのですか?
A 2006年10月以前は、国選弁護人は、起訴後にしかつかないことになっていました。
 2006年10月以降は、起訴前に国選弁護人がつくことも認められるようになりましたが、全ての事件につくわけではありません。
 交通事故事件でいえば、業務上過失傷害や業務上過失致死事件は、起訴される前には国選弁護人はつきません。
 危険運転致死の場合は、起訴される前から国選弁護人がつくこととなります。


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交通事故被害者のための刑事事件Q&A 5

2006年09月02日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
(検察官との対応)

Q 検察官とは刑事事件でどのような役割をしているのですか
A 検察官は、警察から事件の送致を受け、それに対して、起訴するのか否か、起訴するとして略式手続きにするのか、正式裁判にするのかを決めることのできる権限をもっています。
 最終的な刑事の処分は裁判所が決めるのですが、検察官が手続きを選択する裁量権限を任されているので、検察官の権限はかなり広いといえます。

Q 刑事の処分の状況はどこに問い合わせたらよいでしょうか。
A 当該事件を担当している検察官に問い合わせれば、教えてもらえます。
 まず、担当の警察官に連絡すれば、検察庁の連絡先と担当の検察官の名前は教えてもらえるはずです。検察官宛に電話をすれば、検察事務官といって秘書役をしている事務方が対応してくれますので、その方に聞けばできる範囲で教えてもらえます。
これらは検察庁が定めている被害者等通知制度実施要項に基づいて行われています。
 検察庁における犯罪被害者に対する考え方については、検察庁のホームページを参照してください。

Q 検察官が起訴前に被害者側に連絡してくることがありますか。
A 検察官が被害者に事情を聞きたいという場合は連絡があるでしょうが、そうでない場合は連絡はしてこないでしょう。
 検察官が重大だと思う事件については、被害者側の供述調書を検察官も作成しますが、そうでない事件については、検察官は被害者側の話を電話で聴取するだけだったりします。場合によっては、被害者側の意見について検察官が直接聞くことはなく、警察での供述調書のみで検察官が判断することもあります。

Q 検察官に被害者側の話を聞いてもらいたい場合はどのようにすればよいでしょう。
A 担当の検察官を確認した上で、電話をしてアポイントを取って、面会を要請すべきです。この際、自分が話したいことを要領よく書面にまとめてそれを提出してください。
 検察官は事件処理に負われていますから、被害者側の話を聞く時間も自ずと限られます。そこで、あらかじめアポイントを取る必要がありますし、書面に言いたいことをまとめておく必要あるわけです。
 なかなか言いたいことというのは初対面の人に話せないものですし、その場の雰囲気で話せなかったということのないように、書面にまとめておくことをお勧めします。

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交通事故被害者のための刑事事件Q&A 4

2006年08月31日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
Q 警察官から加害者に対する処罰意見を加害者よりにしてほしいというようなことを言われるのですが、どうしたらよいでしょうか。
A 加害者に対する処罰意見を供述調書にするには、いくつかのパターンがあり、
 「厳罰にしてください」
 「法律上適正な処罰にしてください」
 「警察官や検察官にお任せします」
 「寛大な処分にしてください」
というものがあり、下に行くほど処罰を軽くしてくださいというニュアンスが出てきます。
 被害者側の処罰意見で加害者の刑事処分の全てが決まるわけではありませんが、一つの考慮材料とはされます。
 このように被害者側としては加害者に対する処罰意見を適正に述べる権利を持っていると思いますが、警察官によっては、「加害者も若いんだから寛大な処分でもいいのではないか」等と自分の意見を被害者に対して述べる方もいます。
 しかし、それはあくまで警察官の意見であって、被害者側としてはその意見も考慮しながら、はっきりと自分の意見を述べるのが大切であると思います。
 供述調書は、警察官が文章を作成するのですが、最終的に署名押印するのは被害者側であり、自分の述べたものと違う内容が書かれていれば、訂正を要求することができますし、それでも警察官が訂正をしなければ、供述調書に署名押印をするのを拒否することもできます。
 これを拒否しても法律上何かに問われることはありません。
 あとで悔いのないように、自分でよく考え、供述調書に意見を残すようにしてください。

Q 「告訴」というものを警察にしなくてもよいのでしょうか。
A 交通事故事件では、告訴をすることが必須ではありませんので、告訴をしなくても刑事手続きは進みます。「告訴」とは刑事訴訟法上は、捜査機関に対して、犯罪があったという事実を申告し、犯人の処罰を求めるものをいいます。強制わいせつ罪のような事件では告訴がないと被疑者を起訴することができないのですが(これを「親告罪」といいます)、交通事故事件は親告罪ではないので、告訴は必ずしなければならないというわけではありません。
 通常は、被害届を警察に提出することで刑事手続きとしては進んでいます。


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交通事故被害者のための刑事事件Q&A 3

2006年08月29日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
(警察官との対応)
Q 被害者側に警察から連絡があったときはどのように対処したらよいでしょうか。
A 交通事故事件において警察が被害者側から話を聞く目的には次のようなものがあります。
 1 事件の目撃者としての供述
 被害者が事故のことを記憶している場合は、その被害状況を証拠として使用したいと警察は考えます。この場合、実況見分や供述調書の作成が行われます。
 実況見分は、事故現場に行って被害者側が指示説明をしたものを、警察官が図面にするものです。
 供述調書は、被害者側が供述したものを警察官が物語調で文章を作成し、それに対して、被害者の署名押印するものです。
 2 加害者に対する処罰意見の供述
 加害者に対してどのような処罰を望むのかということを供述調書に記載することを警察は求めます。
 死亡事故のように被害者側が事故を目撃していない場合は、もっぱら加害者に対する処罰意見を求めることが多いと思います。
 以上について、被害者側としては正確な事実を話し、心にある感情を素直に述べることが必要と思います。
 なお、警察における犯罪被害者に対する考え方については、警察庁のホームページを参照してください。

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交通事故被害者のための刑事事件Q&A 2

2006年08月27日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
Q  交通事故の加害者が警察に逮捕されましたが、今後どのようになりますか?
A  警察に逮捕された場合、警察は逮捕したときから48時間(つまり2日間)以内に検察官に事件を送致しなければなりません。
  検察官は、被疑者を釈放するか、さらに身体を拘束するか検討し、後者の場合は、裁判官に勾留請求をします。
  裁判官が勾留を決定すればさらに身体拘束が続くことになります。
 交通事故事件では、警察は被疑者を逮捕したが、検察官が被疑者を釈放するということや、裁判所の段階で勾留を認めないという扱いもありえます。

Q 「勾留」されるとどうなりますか?
A  検察官は、勾留されてから、最長20日の間に起訴するか否かを決めなければなりません(場合によっては10日間のケースもありえます)。起訴しない場合は、釈放されます。
 起訴された場合は、勾留が起訴後も続くことになるのが原則ですが、この時点で検察官が釈放するという扱いもありえます。

Q  起訴される前に「保釈」というのにはならないのですか?
A  「保釈」というのは、被告人(加害者)側が保釈保証金(保釈金)を裁判所に納めて釈放されることをいいますが、これは法律上、起訴される前はできないことになっています。起訴された後は、被告人側が保釈を請求することができ、裁判官が保釈を許すか否かを決定します。


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交通事故被害者のための刑事事件Q&A 1

2006年08月25日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 2006年10月から刑事訴訟の新しい制度が始まります。
 以前の制度でも被害者からはわかりにくいところがありましたが、新しい制度が付け加わるためますます複雑なものになっていますので、この解説で少しでもわかりやすいものとなればと思います。以下、加害者は成人という前提です(未成年の場合は少年事件となり、手続きが異なります)。

Q  交通事故の刑事事件で加害者(被疑者)は逮捕されますか?

A 刑事事件といいますと、被疑者が逮捕とか勾留などというイメージが強いのですが、全ての刑事事件の被疑者が逮捕されるわけではありません。
 逮捕されないで裁判を受けるケースもあります。
 これを「在宅事件」といいます。
 10年くらい前は、業務上過失致死(つまり死亡事故)のみのケースで逮捕・勾留されるというケースは少なく、ほとんどが在宅事件(逮捕も勾留もされない処理方法)でした。
 つまり、被疑者を逮捕せず、警察は事件を検察に送致するという手法です。
 被害者が傷害を負ったというケース(業務上過失傷害事件)については、逮捕されないことが多いようです。もっとも、飲酒運転や無免許運転、ひき逃げというケースであれば、逮捕されることもあります。
 被害者が死亡したというケース(業務上過失致死事件)については、被疑者の過失が重大な場合逮捕に踏み切ることも増えてきています。
 加害者が異常な高速運転やアルコールや薬物の影響で異常な運転等をしたケース(危険運転致傷や危険運転致死)では、法律に定められた刑が重いことから、逮捕に踏み切ることが多いようです。

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正式裁判で被害者は何ができるか

2005年12月03日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 正式裁判になった場合は、不起訴のときや、略式罰金の時に比べ、被害者ができることが多くなります。
 1 証人として証言すること
 検察官が被害者(又はその遺族)を裁判所に証人として請求し、それが認められれば、証人として証言することが可能です。
 2 被害者として意見陳述をすること
 裁判所に対して意見を述べることができます。この場合、意見は証拠にはならないことが、証人の場合との違いです。
 3 刑事記録の閲覧謄写
 事件が確定しない時期でも、裁判長の許可があれば、刑事記録を閲覧謄写できます。
 4 公判の傍聴
 正式裁判は、公開の法廷で行われますので、傍聴をすることができます。マスコミの注目するような事件でなければ、傍聴券の発行という手続は通常行われませんので、自由に見ることができます。
 
 以上の手続はご自分で行うことも可能ですが、検察官との折衝(1,2)や裁判所に書面を提出しなければならなかったり(3)、法廷を見てもその意味がわからなかったり(4)することがありますので、弁護士などの専門家のアドバイスなどを受けたほうがよいと思います。

 このように、他の手続と比べると、正式裁判でできることは多いのですが、被害者は正式な刑事事件の当事者ではないので、判決に対して、被害者が不服申し立てをすることは、略式罰金のときと同様できません。

 
 

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略式罰金請求に対し被害者はどのようなことができるか

2005年12月02日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 加害者が略式罰金請求された場合、被害者は刑事手続でどのようなことができるでしょうか。
 不起訴の場合は、検察審査会に申し立てることができるのですが、この場合は被害者が正式裁判にしてほしいというような申し立てをすることができません。
 また、裁判所が略式請求を相当と認め、罰金刑を課した場合もこれに対して被害者は正式裁判を開いてくれという申し立てもできません。
 つまり、略式罰金の手続に載ってしまったら、その手続を変更するような申し立ては一切被害者はできないというのが現状なのです。
 ですから、手続を略式罰金に載せるのが相当でないと被害者が考える場合は、そのような処分がされる前に検察官に働きかける必要があるのです。

 このように、手続に対しては不服申し立てができませんが、罰金刑が確定してしまえば、刑事記録を閲覧・謄写できる範囲は不起訴の場合よりも広くなります。これは、ほとんどの刑事事件の記録が裁判所に提出されているからです。刑が確定すれば、必要性が認められる限り(通常、民事で損害賠償請求したいといえば必要性が認められます)、確定記録を閲覧謄写することができますので、実況見分調書の閲覧謄写しか認めない不起訴の場合とは開示の範囲が異なるわけです。

 

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刑事の正式裁判とはどのような手続か

2005年11月30日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
刑事事件一審の公判の目的は、
1 起訴された事実を裁判所が認定できるのか
2 認定できるとしたら、刑をどの程度にするのか
を決めることにあります。
 この2点について検察官と弁護側が証拠を請求し、証拠調べが終わったら双方から裁判官に対して意見を述べ合います。
 もう少し細かくいいますと、

・冒頭手続・・裁判官が出廷しているのが起訴されている被告人と同一であるかどうか確かめ(人定質問)、起訴事実に対して被告人の意見を求める手続
・証拠調べ・・・検察官が立証しようとする事実を主張し(冒頭陳述)、証拠を提出する手続
・論告弁論手続・・・検察官が被告人の行為について評価して(論告)、求刑し、弁護人・被告人がそれに対して意見を述べる手続
・判決宣告手続・・・判決を宣告する手続

 起訴されてから一審の判決まではどのくらいの期間がかかるが気になるところですが、千葉地裁(本庁)の扱いですと、第1回公判は、起訴されてから1ヶ月半~2ヶ月位(事件の比較的少ない庁はもう少し早く期日が入るはずです)。
 事実を認めている事件では、1回の公判で審理が終結し、その1~2週間後に判決となることが多いです。
但し、被告人が事実を争い、証人を呼ばなければいけないような事件ではさらに時間がかかることとなります。



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