"暮らしのリズム"的できごと

先人が培った暮らしの知恵を通じて今を楽しむ【暮らしのリズム】のブログ。旧暦、落語、音楽、工芸品、食、民俗芸能などをご紹介

みちのくは猛暑~岩手で出会った南部鉄瓶

2007年08月20日 16時06分11秒 | 季節のおはなし

 旧七月八日。昨日は旧暦の七夕でした。市場も休みだしトラックが少ないせいか東京の空は日中澄んだ青空が広がっていました。夜にはいつもより星がたくさん見えたのではないでしょうか。(昨年の旧暦七夕の様子は“星が煌めく旧七夕の夜”をご覧ください)

 世間がお盆休みになる頃、岩手県の北上に行ってきました。彼の地に通うようになって早15年が過ぎましたが、やはり、これほど暑いなぁと感じたことはありませんでした。
820iwate 県内でも各地で最高気温が35℃を上回る猛暑です。夏はクーラーがいらず、冬の暖房も灯油に依存する北東北では家にエアコンがありません。 外は暑いながらも緑を抜けてくる風が心地良いのですが、それがなかなか家の中に入ってきてはくれず、団扇とタオルが手放せなかったです。そんな時、猫は家の中で一番涼しいところを知っていて、時間によって場所を変えながらいつも同じところでゴロリとしています。820geto家の中でじっとしているのも暑いので、涼を求めて山のスキー場に行ってみたり、清流に足を浸しに行ってみたり、東北の風を感じに走り回っていました。
(写真左:たんぼ、森、高い空、雲、山、目を癒してくれる日本の原風景です。右:夏油高原スキー場のゴンドラに乗って山頂。樹氷の芯になるブナは西から東に傾いたまま)

 かねてよりお湯が軟らかくなる南部鉄瓶が欲しいなぁ、と思っていたのですが、ずらーっと鉄瓶が並んだお店に行って、気に入った意匠を見つけるも、値札を見れば軽い目眩が襲ってくることの繰り返しでした。
820oigen1そこで今度こそ、と妥協案を考えて少し小さめのものでも、難ありのアウトレットでもいいことにしました。出掛けたのは南部鉄器二大生産地の一つ水沢(もう一つは盛岡)、東北新幹線の水沢江刺駅にほど近いキューポラのある町並み。その中の及源鋳造株式会社工場直売のお店です。820oigen2実はここ、有名デパートやセレクトショップなどで売られている南部鉄器がとても割安で買える上、アウトレットの掘り出し物もある穴場的スポットなのです。そこで見つけた鉄瓶がこれ。及川齊さんというベテラン工芸師による“寸胴桜”という意匠です。 蓋には桜の花びらが、胴には樺細工のように樹皮の模様が刻まれています。820oigen3ふつう南部鉄瓶の蓋には穴が空いていないのでお湯を沸かすときは蓋をずらさなければならないのですが、これには小さな穴が空けられているので吹き出すこともなく、蓋をして短時間でお湯を涌かすことが出来ます。さらに魅力的なのが、蔓が固定されていないこと。なぜ魅力的なのかと言うと。お酒に燗をつけるのにとっても良さそうなのです。これは冬が来るのが待ち遠しい?いやいや暑いときのぬる燗はまた格別なんです。
(写真上:及源ショップにある及川齊さんのコーナー。パネルに書いてあるTV出演は2002.1.19のOAです→こちらのバックナンバーから。写真中:及源の工場入り口。コンクリートに赤さびがついた風景がたまりません。写真下:これからずっと可愛がってゆく南部鉄瓶“桜”)


酷暑の東京に秋を探して

2007年08月11日 16時59分23秒 | まち歩き

 旧六月二十九日。二十四節気【立秋】の日(8/8水曜日)。テレビのお天気キャスターは皆口を揃えたように「今日から暦の上では秋、これからは残暑お見舞いです。まだまだ秋の気配が感じられない暑い時期・・・」と言っていましたね。
 確かに、二十四節気と実際の気候にはズレを感じます。南北に長い日本列島では特に土地土地によって感覚が違ってくるでしょう。それは、二十四節気が誕生したのが紀元前11世紀から17世紀の中国古代王朝、殷(いん)の時代で、その中心地、殷墟(いんきょ)の気候が内陸の乾燥した高原地帯だったことに因るようです。このことは、暦のことをいつも専門的に、かつわかりやすく紹介している『こよみのページ』「なぜずれる? 二十四節気と季節感」という解説がありますので、ぜひお読みいただきたいと思います。興味深く、なるほど、と思えるはずです。
 そうは言っても、その二十四節気は日本でずーっと使われてきたわけで、昔の人は二十四節気によって、新暦のカレンダーに支配されている現代ではピンと来ない微妙な季節の移ろいを肌で感じていたのでしょう。

811cosmos  そんな思いもあって、立秋の日の午後、自分なりの秋の気配を探しに旧浜離宮庭園をぐるっとまわってきました。春には一面の菜の花が咲き誇っていた花畑には代表的な秋の花コスモス(秋桜)の中でも、目に鮮やかなオレンジ色から朱色へのグラデーションが眩しいキバナコスモスが見頃を迎えています。午後の気温は当然30度越え。ビルの谷間に居たら気がつくことはない爽やかな風を感じます。空は盛夏の印象とは違って青空の色は少し色濃く澄み切って高い印象です。
811semi上空高いところには箒ではいたような薄い雲、その下には足早に駆けてゆく雲があります。この空と風の感じは、少しだけ秋なのかな、と納得してしまいました。
 夏の象徴である暑さは、まだまだこれからですが、少しずつ身近に感じられる秋の気配を楽しんでゆきたいものであります。週末からは岩手に行きます。みちのくはもっと秋の匂いがするのでしょうか。
(旧浜離宮庭園のベンチに座っていると羽化する直前のミンミンゼミが木と人を間違えてよじ登ってきました)


浴衣で聴きたいライヴを二つ

2007年08月07日 10時55分28秒 | 芸能の催しごと

 旧六月二十五日。遅い梅雨明け(東京は8/1でした)の後は茹だるように暑い日が続いていますね。夕立が空気を洗ってくれるまで、ムワっとした熱気に街は覆われています。今日あたり東京でもゴロゴロっと来てくれればいいのですが。暑さはまだまだこれからですが、暦は着々と進み、明日は二十四節気の【立秋】です。秋といってもピンと来ないのですが、夏至の頃と比べて日の出がだいたい30分遅く、日の入りはだいたい20分早くなってきています。明日からは“残暑お見舞い”ですね。
 そんな熱帯夜の東京。涼を求めて浴衣を着て聴きに行きたいライヴを二つお知らせします。“暮らしのリズム”ではお馴染みの二組です。

 まずは澤田勝秋(唄・津軽三味線)と木津茂理(唄・太鼓)からなる民謡のデュオ・ユニット『つるとかめ』です。087tsurukame_1 二人だけの生音ライヴは東京で三ヶ月ぶり。目を閉じて耳を傾けると、ききてそれぞれが大切にしている日本の原風景が浮かんできます。過ぎゆく夏への郷愁を噛みしめ、きたる秋の素晴らしさを予感させてくれるライヴになるでしょう。
日時 :2007.8.27(月)
18:00open, 19:30start
場所 :november eleventh
(港区赤坂3-17-8都ビル2F 03-3588-8104)
料金 :3150円
予約/問 :november eleventh (HPに予約フォームがあります)

 もうひと組は、松永鉄駒、松永鉄六からなる長唄三味線の女性デュオ・ユニット『スクイーズ☆ハジキーズ』です。087sukuhaji 長唄合方集の古典を中心に、洋楽曲や童謡、さらには童話を芝居仕立てアレンジした物語まで、三味線音楽を身近に感じることができるとても楽しく魅力的なライヴです。毎月第三火曜日に西麻布にある木の温もりを感じる小さなホールでやっているライヴシリーズ。今回は納涼をイメージにするそうで、浴衣での来場には何か特典があるそうですよ。
日時 :2007.8.21(火)
19:00open, 19:30start
場所 :ホールDOZ(東洋医学
松柏堂医院2F)
   (港区西麻布1-5-11 03-3479-5890)
問(前日まで):スク☆ハジオフィス(→mail)
047-353-8434/0465-36-9055

 皆さんぜひ浴衣でお出掛けしましょう。和楽器の響きがいつもより心地良く感じられることでしょう。

“つるとかめ
に関する過去のエントリー
2007.7.3梅雨半ば民謡三昧の日々
2007.5.20ご来場感謝“つるとかめ”ライヴ
2007.5.13日本の民謡「つるとかめ」のこと
2007.4.20民謡を聴いてみませんか“つるとかめ"ライヴです
2006.12.26蔵で舞うつるとかめの暖かい民謡

“スクイーズ☆ハジキーズ”に関する過去のエントリー
2007.5.16“スクってハジく”長唄三味線の愉しみ
2007.4.15満員御礼“居酒屋寄席~春爛漫の会”
2006.12.1長唄三味線にうっとり~邦楽は楽しい!