"暮らしのリズム"的できごと

先人が培った暮らしの知恵を通じて今を楽しむ【暮らしのリズム】のブログ。旧暦、落語、音楽、工芸品、食、民俗芸能などをご紹介

暮らしの道具~秋田で見つけた貝風炉(きゃふろ)

2007年01月29日 15時43分51秒 | インポート

 旧十二月十一日。寒の真っ只中のはずなのですが、この超暖冬ぶりはどうしたものでしょうか。雪の便りよりも先に花の話をよく耳にしますね。

129kakunodate  さて、少し前のことになりますが昨年末に秋田に行ってきました。東京がクリスマスムード一色で彩られていた頃、“陸奥の古都”と呼ばれる町、角館はひっそりと静かな時間が流れていました。4年前の9月に伝統ある「角館祭りのやま行事」を見物に行って以来です。勇壮で華やかな祭りの時期とは対称的に、静かな雪の季節に訪れてみたい、という願いが叶ったわけです。夜更けに降った雪が、この町の名物である垂れ桜の枝に降り積もって、早朝北国のか弱い陽光に照らされるさまは、感動的な美しさでありました。

 地方の町を訪れた際の楽しみに、古道具屋さんを覗いてみる、というのがあります。角館にも魅力的なお店を見つけました。古い商家が多いこの町でも、このところは世代が替わるタイミングなどで蔵を開けて、古い生活の道具などを処分してしまうことが多いそうです。訪れたお店で、食器や道具などを見ていると、これまでに見たこともないような道具に目が留まりました。
129kyafuro1ご主人によると最近ではすっかり珍しくなったもので、大正時代頃に作られた【貝風炉(きゃふろ)】という品物なのだそうです。

 貝風炉とは秋田の伝統的な一人用の炭火コンロで、特に秋田の郷土料理“貝焼き”のための道具です。
素焼きのシンプルなコンロに炭を熾して、大きめな帆立貝の殻を乗せ、魚介類や肉、野菜を煮て食べることを総称して秋田では“貝焼き”と言うのだそうです。その代表的な料理が“ハタハタの塩汁貝焼”です。昔は男の子が成長して一人前になったら、その証として夕食の際に自分専用の貝風炉とお膳が用意されたのだそうです。

 この珍しい貝風炉に、簡単に漆を塗った木の台、129kyafuro2 そしてなぜか帆立貝の殻ではなくてこれまた珍しい土瓶がセットになって、なんと2000円というお値段。嬉しい収穫でした。東京に戻ってきて、早速貝焼きでもと大きめの帆立貝の殻を探しているのですが、なかなか適当な大きさのものが見あたりません。では、土瓶に湯を沸かして熱燗でも、と思ったものの、どうにも暖かくてその気になりません。暖かいのは助かるけれども、調子がおかしくなってしまいます。寒にはそれなりの楽しみがあるわけですからね。

(写真上:雪晴れの朝、角館武家屋敷の通りはシーンと静まりかえっていました。/写真中:これが貝風炉。漆を塗ることによって格調高く見せています。/写真下:なかなかお目にかかることもなくなった土瓶。)


早すぎませんか?春の訪れ

2007年01月16日 10時47分36秒 | 季節のおはなし

 旧十一月二十八日。関東地方は冬晴れの日が続いています。それでも朝夕の冷え込みはさほど厳しくもなく、日中も上着がいらないほどポカポカした陽気になっていますね。

116ume  さて、昨年(2006年)1月27日にアップしたこの写真をご覧下さい。 そして、右の写真が昨日、同じ湯島天神の同じ梅の木を撮影したものです。ほとんど同じ状態に開花しています。昨年より二週間近くも早い梅の開花です。やはり暖かいわけですね、この冬は。寒の真っ只中である今頃は、本来蝋梅(ろうばい)の黄色い花が一番早い春の訪れを伝える頃です。その蝋梅もどこかでは葉を落としきらないうちに花が咲いて、不思議な光景になっている、なんていうはなしも聞きました。この異常とも言える気候は私たちにこれから先どんな影響を与えてしまうのでしょうか。少なくとももう少しのあいだ鍋物をつつく幸せを愉しませてもらいたいなぁ、と寒中に思うのであります。


明日は七草~荒れ模様の“寒の入り”です

2007年01月06日 17時08分24秒 | 季節のおはなし

 旧十一月十八日。二十四節気の【小寒(しょうかん)】です。今日をもって“寒の入り”。節分(2月3日)までのおよそひと月が一年で最も寒いとされる『寒』です。日本列島を挟むように強烈な低気圧が二つ東へ進んでいます。東京は一日中冷たい雨。この低気圧が明日には一つになって三陸沖で台風並みに発達するそうです。暖冬といわれていた今季も、このときばかりは厳しい寒さに見舞われそうですね。暖かくして乗り切りましょう。

 明日1月7日は七草です。五節句の一つ【人日(じんじつ)】で行われる伝統的な行事です。詳しくはこのブログで昨年書いた「春はまだかな“寒の入り”小寒です」「七草粥です」「七草粥の追記(北国では)」あたりをぜひご覧下さい。
 で、今年も買ってきました、七草粥セット。16nanakusa お正月の三が日が過ぎるとスーパーマーケットや青果店に並び始めますが、200円くらいから400円くらいまで、ずいぶん値段に幅がありますね。『芹(せり)・薺(なずな)・御形(ごぎょう)・蘩蔞(はこべら)・仏の座・菘(すずな)・蘿蔔(すずしろ)』。この七つが春の七草の代表的なものですが、必ずしも全てが揃わなくてもいいそうで、大切なことは無病息災を願って粥を食べる風習を忘れないようにする、ということなのでしょう。というのも五節句はもともと旧暦の行事です。今年の場合、旧暦での七草は2月24日。梅もほころび日差しも柔らかくなる頃です。野原や畦道には七草が自然に芽吹く頃でしょうね。

 地域によってかもしれませんが、七草粥を作るときに“七草囃子”を唄う風習がありました。それは、人日の前の日六日の夕方に七草を摘んできて、歳の神を祀った神棚にお供えします。そして深夜から七日の未明にかけて、その七草を刻むときに包丁でリズムをとりながら唄うのが“七草囃子”で、メロディはなく、歌詞はこうです。
「七草ナズナ、唐土の鳥が日本の土地に渡らぬ先に、~セリこらたたきのタラたたき(あるいは)~トントンぱたりトンぱたり・・・(など)」
ここで歌われる「唐土の鳥」は日本に疫病をもたらす象徴。それを追い払おうという想いが込められているのですね。昔では疫病や流感、今で言えばインフルエンザのことなのでしょう。
 昔の人の知恵を思い出しながら、今夜は七草囃子を口ずさんで見てはいかがでしょうか。くれぐれもご近所迷惑にならないよう、鳴り物は控えめに。


平成十九年もよろしくおねがします

2007年01月03日 11時29分05秒 | ご挨拶とお知らせ

 あけましておめでとうございます。いつも【暮らしのリズムblog版“暮らしのリズム的できごと”をご覧頂きましてありがとうございます。今年もどうか宜しくお願いいたします。

 旧十一月十六日。今年最初の満月です。太平洋側では晴れ間に恵まれるようで、松の内のお月見が楽しめることでしょう。今年は暖冬のお正月ですね。日差しは軟らかく、木枯らしも吹きません。テレビさえ観なければお正月であることを忘れさせられてしまうほどです。

 初日の出は見ましたか。今年は拝めたところが多かった、とニュースで言っていました。13yuuhi 私の場合、元旦特に早起きしたりする習慣がないもので、お正月は起きるといつも通りに明るくなっています。なので、初日の出とはどうも縁がありません。その代わり、というわけではありませんが、大晦日に沈む夕陽がなんだかとても好きです。一年間に起こったさまざまな出来事や、この一年間に出会った人たちのことを思い浮かべながら、沈んでゆく太陽を眺めます。今年は三浦半島の海岸から相模湾を経て伊豆半島に沈む締めの夕陽を眺めました。日が沈んだあとは、いつもなんだか寂しい気持になるのですが、それだけに夕陽の美しさはいつどこで見ても格別です。
 元日には映画館で見逃してしまっていた映画『Always三丁目の夕日』をDVDで観ました。人々の暮らしが情報に支配されず、生きることに直向きだったあの頃、沈んでゆく夕日は、誰にとっても足を止めて眺めてしまうほど美しく、心を温めていたのでしょうね。“暮らしのリズム”もそんな気持を少しでも伝えてゆけたら、と思っています。どうか宜しくお願いします。
(写真は一色海岸から12/31の夕陽。デジカメを忘れたのが残念。携帯で撮りました。)