旧五月二十六日。二日前の6月21日は二十四節気の【夏至】でした。
陽熱至極し、また日の長さのいたりなるを以てなり。
『暦便覧』(天明八年/1788年発行)
梅雨も後半戦。気温・湿度共に徐々に高くなってゆき、蒸し暑く感じる日が多くなってきました。もう一息の辛抱です。
まさに夏至の日に開催となった、【居酒屋寄席~夏至の会】。一杯のご来場ありがとうございました。ご都合悪くお越しになれなかった皆さんは、次の機会にはぜひ。
今回は、居酒屋寄席初の三人による会となりました。そして、このところは人気と実力を兼ね備えた若手を中心に企画しておりましたが、今回は立川流の重鎮、大御所の立川龍志師匠にご登場願いました。
師匠に先立って高座に上がったのは、談志師匠の没後に龍志師匠の弟子となった泉水亭錦魚さんです。根多は、飄々とした物腰でウィットに富んだ笑いを聞かせる錦魚さんのはまり役といってもいい、したたか者が登場する「夏どろ」。泥棒から逆にお金を巻き上げる痛快な噺です。
続いては、立川吉幸さん。居酒屋寄席は4回目の出演でお馴染みの存在です。根多は、談志師匠の十八番でもある滑稽噺の「野ざらし」。噺の中にサイサイ節を歌うシーンが出てくるのですが、これが演者にとって難しいところ。談志師匠はこういうものをしっかり演じるために、弟子に伝統芸能の歌舞音曲を義務づけていました。吉幸さんのサイサイ節は実に見事。いい雰囲気を醸し出していましたね。
そして、龍志師匠が登場。大御所が上がると、空気がピーンと引き締まるもの。会場の気が一点に注がれている緊張感は心地良いです。根多は「酢豆腐」。上方では「ちりとてちん」でお馴染みの噺です。知ったかぶりの若旦那に腐った豆腐を食べさせるという痛快な滑稽噺を、龍志師匠はただただ圧巻の話術とアクションで聞かせてくれました。流石です。
三席の落語に続いて、三人によるトークのコーナー。「龍志師匠に聞く」として、入門~修業時代から、真打昇進の貴重な話を聞かせて頂きました。
落語のあとは、居酒屋寄席ならではの宴です。龍志師匠のご発声で乾杯。振舞酒は、山口県の銘酒「獺祭 純米大吟醸」です。先ずの肴、季節の味覚のお楽しみは、琵琶湖産「天然小あゆの山椒煮」、そして、葉の直径が1.5mにもなる「秋田蕗の煮物」です。いずれも梅雨時ならではの味わい。お酒も進みます。
三人には、テーブルを回り、お客様との懇親を深めて頂きました。一年で最も短い夜はあっと言う間に更けて、龍志師匠の手締めでお開き。皆さん、ありがとうございました。