"暮らしのリズム"的できごと

先人が培った暮らしの知恵を通じて今を楽しむ【暮らしのリズム】のブログ。旧暦、落語、音楽、工芸品、食、民俗芸能などをご紹介

情緒あふれる水郷の町“佐原”

2008年04月25日 17時18分24秒 | まち歩き

 旧三月二十日。季節は田植えの頃を告げる二十四節気の【穀雨(こくう)】を少し過ぎ(4/20でした)、日々緑が豊かになってきました。この頃は天気の周期は短く、雨もまとまった降り方をします。田畑を潤す成長の恵みなのですね。

0425sawara1  かねてよりずっと行ってみたい、と思っていた町、佐原に行ってきました。千葉県の北東部、遠いなぁといつも思う成田空港の先、少し行けば利根川が太平洋に注ぐ町、銚子という場所に位置します。そんなわけで軽い気持ちでちょっと、というのにはとても遠い町だなぁと思ところにある印象でした。10年ほど前に買った祭り囃子のCDでこの町の大祭で繰り広げられる「佐原囃子」を耳にし、笛の旋律の心地よさと、合の手のようなかけ声が魅力的で、ずっと気になってた町でした。
(写真:自然の流れそのままのカーブが町の景観を情緒豊かにしています)

 「お江戸見たけりゃ佐原へござれ 佐原本町 江戸まさり」
江戸末期に子供たちが歌った戯れ唄だそうで、かつて水運で栄えた頃の活気を伺わせます。
0425sawara2利根川下流の水郷地帯ですから江戸の頃から周辺には田畑が広がり、佐原は味噌、醤油、酒の醸造技術が進み、水運物流の拠点としてとても栄えた町だったそうです。そしてこの町を世に知らしめた著名人といえば、伊能忠敬。50歳にして家業を譲り江戸に渡って全国を測量し、初めて日本地図を作成しました。今の世でも彼は中高年にとって憧れの的ですね。
(写真左上より時計回りに:川岸に舫われた木造の小舟が良い雰囲気です/レトロな赤ポストと木造瓦屋根の家屋、という絶景/物流と商業の町を象徴する倉庫もほぼ当時のまま/改装時の補助金制度もあって眩しい白木の家屋も。職人もお忙しいことでしょう)

 町の真ん中には、利根川に流れ込む小野川が流れています。くねくねとした自然な流れをそのまま生かして、両岸は石垣が組まれ、川岸の道には柳が植えられています。0425sawara3 最近マスコミなどによく登場する町なので、さぞ観光客でごった返しているのであろうと思って行ったところ、平日ということもあり人影はとても疎らでした。聞けば、桜の頃が終わると、菖蒲が見頃になる頃まで静のだそうです。界隈は国の伝統的建造物群保存地区に指定されていて、保存会のご努力が伝わってきます。その美しく目に優しい情景は、ただ維持するためだけに守っているのではなく、生活とともに町並みが生きている感じが伝わってきます。
 小野川を小舟で巡るコースがあるので乗ってみました。川岸を歩いていた時とはまた違った川面からの目線は新鮮です。石垣と柳の新緑、古い建物越しに広がる空は意外にも広く、飛び回る燕の元気なこと。この風景はまさに時代劇の世界です。

(写真左上より時計回りに:小野川の観光舟と成田線を走るちょっと懐かしい横須賀線カラーの電車が交差/柳の新緑は目に優しい淡い緑です/佐原の名所、じゃーじゃー橋こと樋橋です。この橋の袂から観光舟が発着します/舟からの目線です。時代劇っぽいですよね)

 言葉を交わした町の人たちは皆とても親切です。観光地であるというの余分な力が感じられずなく、自然に接してくれるのが嬉しいです。この町では、どこの観光地にでもありそうな無粋なお土産も、そういうものを売る店もなく、おせんべいや漬け物、といった地元で生産された農産物の加工品や、川魚の佃煮などがお土産品の定番なのです。どれも素朴で懐かしい品々です。農産物を販売するお店で衝動買いした、自家製の餅米と黒米の2色揚げ餅は素朴でとても美味でした。これからも変わらず、ゆっくりとした時間が流れる、暮らしとともにある美しい町であって欲しいです。もちろんわたしなんぞが願わずとも、きっとずっとこのまま大切にされてゆくことでしょう。モノクロフィルムを装填したカメラを忘れてしまったのがなんとも残念。またあらためて出直すことにしましょう。

0425sawaracd  祭りの資料館「山車会館」も訪れました。毎年7月と10月に繰り広げられる『佐原の大祭』の勇壮な息吹が伝わってきます。念願だった
佐原囃子保存会演奏による『佐原囃子』のCDを買うことができました。祭りの時にもまた来てみたいものです。
(日本三大囃子の一つ、佐原囃子のCDです。三種類に大別される「役物」「端物」「段物」が良い音質でたっぷり収録されていて、聴いているだけで高揚してゆきます)

◆◆東京駅から佐原へのアクセス◆◆
●電車:約1時間50分、1620円
    東京駅=成田駅(総武線快速70分)、成田駅=佐原駅(成田線各駅停車30分)
●バス:約1時間25分、1700円
    千葉交通関東鉄道



 


銭湯で古本まつり

2008年04月10日 23時26分34秒 | まち歩き

 旧三月五日。花散らしの冷たい雨と風。寒暖の差が激しい時期です。風邪も流行っているとのこと。体調管理が難しいですね。
 一昨日、4月8日火曜日は旧暦の三月三日【上巳(じょうし)
ひな祭りでした。上巳は、旧正月七日の人日、旧五月五日の端午、旧七月七日の七夕、旧九月九日の重陽と合わせた、年中行事を行う重要な五節句の一つです。いずれも季節感を感じる行事なので、やはり旧暦に合わせたタイミングで風情を感じたいものです。ひな祭りといえば、桃の節句。桜と並んで、この頃は花桃が綺麗に咲いています。

0410tsukinoyu1 先週の土曜日、4月5日に都内にある築75年を越えた銭湯で“古本まつりのイベントがあり行ってきました。 いろいろな町の古本屋さんが集まって、本を売る古本市と、トークショーや、カフェまでがあります。友人のイラストレーター、エッセイストの浅生ハルミンさんが参加している縁で、このイベントを知りました。
(写真は外観。文京区目白台にある「月の湯」が会場です)

0410tsukinoyu3  日常はお湯をかぶるサッバーッという音と、ケロリンの桶をタイルに置くカラ~ンという響きに包まれる癒しの銭湯に、この日はいつもとはちょっと違うたくさんの人が集まっています。 女湯の脱衣場と風呂場では、
脱衣かごに本を入れて展示する古本市が。そして男湯の風呂場がトークショーのスペース。0410tsukinoyu2脱衣場がカフェになっています。銭湯における禁断の扉。男湯と女湯の脱衣場を繋ぐあの扉を自由に往き来できるのは、なんともニヤッな感じでした。
(写真左は女湯の古本市。右では風呂場で小説家・岡崎武司さんのトークショーが行われています。いずれも大盛況です)

 歴史を感じる庶民的な空間で行われるユニークなイベントでした。わが町にも昭和初期創業の木造建築破風造りの良い雰囲気な銭湯がありましたが、ちょうど一年前に突如廃業となり、勇壮な建物もあっという間に壊されてしまいました。昔は地域の人たちにとってコミュニケーションの場だった銭湯ですが、このようなユニークなイベントを開催することで、世代を超えて若い人たちにも見て触れて、コミュニケーションが始まるきっかけになってもらえるというのは、素晴らしいですね。

0410myounitikan  散歩日和の土曜日の午後。雑司ヶ谷から鬼子母神を歩き、西池袋の自由学園明日館に立ち寄り、池袋の雑踏に足を踏み入れると、突如現実的な世界に舞い戻るような感覚でした。
(明日館ロビーの大窓から庭の桜が望めます)



◆浅生ハルミンさんのblog【浅生ハルミンの『私は猫ストーカー』passage】
◆「月の湯」は文京区目白台3-15-7。営業は火・木(17~22時),日(16~23時)
◆明日館についてはこちらをご覧下さい。
 2007.9.17巨匠F.L.ライトの粋~明日館を訪れて
 自由学園明日館→http://www.jiyu.jp


ぬか漬けとの美味しい暮らし

2008年04月04日 20時43分36秒 | 日々のことなど

 旧二月二十八日。今日は二十四節気の【清明(せいめい)】です。

万物発して清浄明潔なれば、此芽は何の草としれる也。
             
『暦便覧』(天明八年/1788年出版)

 桜も満開、春爛漫の頃になりました。お花見はしましたか。0404kaidou2 咲き始めてから少し寒さが戻ったため、今年の桜は長く楽しめましたね。見頃は桜ばりではありません。此の時期桃色の愛らしい花を咲かせる“海堂(カイドウ)”です。人の目の高さほどのところに花をつけるので、庭木などによく見られますが、この海堂が桜に負けじとばかりに、咲き誇っています。(写真は今朝、佃の住吉神社近くに咲いていた海堂です)

 春になると野菜も美味しくなってきます。毎年この時期になると、自分でぬか床をつくってみようかな、と思うのですが、0404nukaduke2 毎日の手入れが大変だから、と躊躇していました。そんな頃、鎌倉のとある居酒屋で〆に食べた「古漬けの茶漬け」に完全にやられてしまいました。大根の皮とかぶの葉をぬか床でうぐいす色になるまで漬け込み刻んだ古漬けが、なんとも言えぬ滋味に満ちていて感動的でした。この瞬間、やっぱりぬか床を作ろう、と思いを強くしました。
 その後とてもタイミングよく雑誌『サライ』2/7号で「ぬかみそ漬け入門」という特集が組まれ、冷蔵庫でも管理できる専用容器が紹介されていたので、早速買い求め“手前ぬか床”を始めました。
(写真:やっぱり定番は胡瓜、茄子、蕪、人参、大根。左端は大根の皮と辛味大根の葉っぱ。これは古漬けにします)

0404nukadoko  ぬか床を作るのには、まず糠を買わなければ、と月島の商店街にあるお米屋さんを訪ねました。このお米屋さんでは、大きな手前ぬか床があって、美味しいぬか漬けも売っています。ご主人によると「生ぬかからやるのは難しいから、うちのぬか床を売ってあげますよ。入れ物を貸してごらん」と買ってきたばかりの容器を持ってお店の裏に。すっかり熟れているぬか床を容器の1/3くらいまで詰めてくれました。
(分けてもらったぬか床には昆布がたくさん入っていました)
0404nukaduke1  理想のぬか漬けを食べられるまでにひと月位を覚悟していたので、ちょっと拍子抜けしてしてしまいましたが、ここはご好意に甘えてずるさせていただくことにして、早速漬けています。ん~~~美味しい!毎朝ぬか床をかき回し、翌日食べる予定の野菜を漬け込む。なかなか楽しい仕事であります。


ぬか漬け専用の琺瑯容器「ぬか漬け美人」は手前味噌の保存容器でも活躍している国産琺瑯メーカーの老舗野田琺瑯の製品です。
野田琺瑯のホームページをぜひご覧ください。