"暮らしのリズム"的できごと

先人が培った暮らしの知恵を通じて今を楽しむ【暮らしのリズム】のブログ。旧暦、落語、音楽、工芸品、食、民俗芸能などをご紹介

『手前味噌仕込み会』写真集

2008年03月25日 14時13分18秒 | 主催する催し

 旧二月十八日。0325mokuren今日は七十二候【桜始開(さくらはじめてひらく)】です。東京の染井吉野開花は先週の土曜日3月22日でした。 0325bunaこの日の朝、浜離宮庭園ではハクモクレンの純白な花が雨上がりの青空に映えていました。(写真右)
  そして今日、自宅前に鉢植えしているブナの緑が芽吹きました。
(写真左)


 3月20日春分の日の水曜日。『手前味噌仕込みの会』の写真をいつもお手伝いしてくれている水野くんからお借りしました。
味噌造りの手順、酒宴の味覚をどうぞご覧下さい。

0325misophoto1_2 写真右の左上は大鍋で大豆を煮ているところ。沸騰する前には大量の泡が湧き上がってきます。ざるでとっては捨て、と目が離せません。沸騰すると泡が少なくなります。左下はこうじと塩を混ぜ塩切りこうじにする過程。ねっとりとした生こうじを手のひらでこすりながらぱらぱらした状態にしてゆきます。右は煮た大豆をボウルに少しずつ入れて、ポテトマッシャーで潰しているところです。軟らかく煮えていても結構力がいる作業です。

0325misophoto2 左の写真の左は、味噌仕込みの醍醐味、塩切りこうじと潰した大豆を混ぜる作業です。固さを見ながら大豆の煮汁を加えていきます。三度目ともなると、丁度いい固さにぴたっと収まります。右は各自の瓶に材料を仕込んでいきます。空気が入らないように気をつけて、手の甲を使って表面を平らに均してゆきます。最後に塩を薄く振って、ラップをし重石を載せれば作業はおしまいです。

0325misophoto3_2  
冬の味覚を代表する味噌を使った定番料理がふろふき大根です。大根は中太の「おふくろ大根」。大根の旨味と甘みを活かしてあっさり煮て、甘みを抑えた柚子味噌を掛けます。
 
酒宴のスタートは岩魚の骨酒で乾杯。香ばしく焼いた岩魚に熱あつのお酒を注いで数分待てば出来上がり。二回目まで美味しく味が出ます。



みんな職人肌、三回目の『手前味噌仕込み会』

2008年03月21日 22時15分30秒 | 主催する催し

 旧二月十四日。昨日は二十四節気の【春分】でした。「暑さ寒さも彼岸まで」とよく言いますが、今年の場合長く寒い冬のあと、ひとたび暖かくなると、寒の戻りもほとんどありません。桜の開花予想もどんどん前倒しに修正されているようです。

 今年で三回目を迎えた“暮らしのリズム”と居酒屋ニュー信州の共同主催イベント『手前味噌仕込みの会』。昨日無事開催することが出来ました。ご参加いただいた皆さまに厚く御礼申し上げます。
 今年は新たに初めてご参加いただくメンバー8人を迎え、総勢21人での会になりました。各自1升入る瓶に2kgくらいの味噌を仕込んで持ち帰ります。それに加えてお店にキープする4升の味噌。合わせて50kgの味噌を仕込みます。使う大豆が14kg、米こうじが11kg、塩が6k、と材料の量も年々増えてきました。みんなで一緒に仕込んでも熟成する環境によって風味や色に微妙な違いが現れるというのも興味深いところです。秋にはみんなで手前味噌を持ち寄って自慢会も行います。

0321miso1  イベントのスタートは午後1時でしたが、大豆はそれに先駆けて前夜11時に浸水させ、当日の12時に鍋に点火しました。大豆は青森県産の「おおすず」という、苦みが無く甘い大豆です。『手前味噌仕込みの会』ではいつも、上野・アメ横にある松葉屋商店で大豆を仕入れています。大豆以外でも様々な種類の豆や穀物などをお手頃な値段で売っていて、とても面白いです。お近くに行かれた際にはぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
(写真上:今年の会に合わせてお店では45Lの寸胴を増強。この鍋で10kgの大豆を煮る。写真下:アメ横の松葉屋商店。大豆だけでも5種類以上を供えている)

 メンバーが勢揃いするとまずはこうじと塩を良く混ぜ合わせます。こうして混ぜたものを「塩切りこうじ」といいます。昨年は米こうじと麦こうじを半々にして仕込みましたが、今年は米こうじだけを使うことにしました。こうじは昨年から静岡にある鈴木こうじ店から取り寄せています。こちらでは玄米こうじ、という珍しいこうじも取り扱っています。

 大豆は100分ほどで煮上がります。さらに1~2時間煮れば潰すのも簡単になるのですが、このくらいで十分。煮上がった熱々の大豆を醤油につけて食べると、濃厚な湯葉を思わせる感動的な風味です。作業の合間に醤油漬けの大豆を楊枝でつつくのは楽しみの一つです。

0321miso2  ここまで来れば味噌仕込みの醍醐味、煮た大豆をポテトマッシャーで潰して塩切りこうじとよく混ぜ合わせます。ここでは適当な固さになるまで大豆の煮汁を加えていきます。あとは各自の瓶に仕込んで作業はおしまい。三度目ともなると皆慣れたものでもはや職人肌が板に付いてきています。自分の手が空くと、初参加で戸惑っているのメンバーをサポートしたり、とても順調に良い雰囲気で作業は進んでゆきます。16時頃の開宴を予定していた第二部の酒宴より1時間も早く作業が完了してしまいました。
(作業は順調で、大豆は素早く潰されなかなか冷めてくれない。そこでみんな団扇で扇ぐことに。左の白いのが塩切りこうじ)

 仕込み作業の後は恒例の酒宴です。乾杯は岩魚の骨酒で。そしてニュー信州特製の味噌料理、まずは「きのこと根まがり竹の味噌汁」です。何種類かの自家製味噌を合わせた味と香りは絶妙です。続いて「ふろふき大根の柚子味噌かけ」が登場。寒かった季節に別れを告げたくなるような冬の代表的な味覚です。そして最後は「鰤の味噌漬け焼」。ほどよく油も落ちてきた春の鰤のあっさりした身に、味噌の焼けた風味が合います。美味しい肴と、お酒が進み、味噌談議にも花が咲き、すっかり日も暮れた頃、会はお開きとなりました。

 メンバーの皆さん。秋の『手前味噌自慢の会』でまたお会いしましょう。味噌造りにぜひトライしてみたいという方、ぜひ来年は参加してみてください。楽しみにしています。


 


“文化ナントカ”が気になります

2008年03月09日 22時47分55秒 | 季節のおはなし

<<3/20『手前味噌仕込みの会』たくさんのご応募ありがとうございました。
 当日の様子を後日レポートします。お楽しみに>>


 旧二月二日。3/5(水)の二十四節気【啓蟄(けいちつ)】を過ぎた頃から、春の彩りがぐんぐん濃くなってきました。
0309ume今年は冬が寒く、春の花もここ数年の暖冬傾向からすれば遅めだということです。  そのおかげもあって、梅の花がとても長続きしていますね。陽気に誘われて散歩がてら浜離宮庭園に出掛けてみると、いろいろな種類の梅の花が咲き誇り、芳香を放っていました。足元にはオオイヌフグリの青い小花やタンポポも咲き、色彩に乏しかった冬枯れの野原がだいぶ色彩豊かになってきました。(都会の青空に映える八重の梅→)

 昭和30年代が何かと話題になるこの頃ですが、高度経済成長の波に乗って生活様式が近代化し、少しずつ便利さが浸透してゆく時代だったと思います。その過程で登場したモノに“文化ナントカ”というネーミングがされていたのですが、これが最近どうも気になります。いよいよ時代の波に押しやられ、とても微妙な立場になってきているからでしょうか。パッと思いつくのが「文化住宅」「文化包丁」「鯖の文化干し」「文化鍋」・・・。なんだかロマンを感じませんか。
0309bunka1_2そんな中、最も気になっていた魅力的なアイテム「文化鍋」を今年になって買いました。(←どことなくノスタルジックで質実剛健とした形が魅力的な「文化鍋」)

 かまどや七輪に羽釜でご飯を炊いていたのが昭和20年代半ばまでのこと。底が丸い羽釜は、直火だと熱が回りやすくご飯がふっくら炊ける道具でした。やがて各家庭にプロパンガスが供給され、ガスコンロが台所の熱源になると、底が平らで噴きこぼれにくい構造の鍋が必要になりました。そこで登場したのが「文化鍋」。昭和26年のことだそうです。しかし昭和30年代半ば頃、電気炊飯器が普及し始めると、徐々にその短かい役割を終え、なんとなく忘れられてしまいました。
 どっこいそれでも「文化鍋」は現役なのです。作り続けられています。荒川区の町工場、株式会社トオヤマで製造・販売されている、往年のスタイルそのままの『亀印文化鍋』がそれ。調理器具屋さんや金物屋さん、ネット通販で入手できるのです。直径14cmから2cm刻みで26cmまで7サイズ、と用途に合わせてヴァリエーション豊富。鍋底の厚さが3mm、側面は2mmと厚手なので、ムラ無く加熱され、沸騰すれば保温性に優れているそうです。蓋も分厚く密閉性に優れ、適度な圧力が掛かるため、素材を軟らかく仕上げてくれる。と、ここまで書き並べるれば実に優れた台所の道具なのですね。
0309bunka2  こんな優れ物、ご飯を炊くだけでは勿体ない、といろいろ検討を重ね直径20cm(約5合炊き)を購入しました。早速ご飯を炊いてみると、狙った“お焦げ”は出来ませんでしたが、ムラ無く
ふっくら艶やかに炊けます。なによりご飯の香りがとても良いのです。子供の頃、朝の台所の風景がスーっと蘇ってくるような感覚です。まだご飯以外の料理には使っていないのですが、末永く大事してゆきたい道具だなぁ、と実感しています。目指せ!良い塩梅のお焦げ”が目下の課題でしょうか。(いろいろ雑穀を入れて3合半を炊いてみました↑)

 その他の“文化ナントカ”シリーズはまた別の機会に。