"暮らしのリズム"的できごと

先人が培った暮らしの知恵を通じて今を楽しむ【暮らしのリズム】のブログ。旧暦、落語、音楽、工芸品、食、民俗芸能などをご紹介

春の彩りラストスパート

2006年04月19日 12時03分21秒 | 季節のおはなし

 旧三月二十二日。大陸からは黄砂が飛んできて、晴れているのになんだか空が霞んでいます。明日は二十四節気の【穀雨(こくう)】です。

春雨降りて百穀を生化すればなり
  『暦便覧』(天明八年=1788年)より

天気の周期が短くなり曇りや雨の日が多くなります。菜種梅雨の季節ですね。でもこの雨は農作物には欠かすことのできない恵みです。トマト、胡瓜、茄子・・・。夏の食卓を彩るピカピカの路地野菜に想いを馳せましょう。今日は季節の雑感などを。

 blog用の写真はもちろん、より手軽に目の前のことを記録したいのと、三年半前に入手したカメラが少々調子の悪いので、
最近デジカメを新調しました。418tsubame試し撮りにでも、と近所をうろうろしていると、初物を見つけました。電線にとまる燕です。長旅にもかかわらず元気に(我らが若燕軍はどうも調子が出ませんが・・・)飛び回っています。自分が生まれた巣を覚えているのですからすごいですね。ひと頃都会ではは天敵のカラスが大量に増えたことで、無防備に巣を作る燕がずいぶん減ってしまったとのことです。ここ数年の駆除作戦のお陰で燕が身近になってくることを期待しましょう。(電線にとまって半年ぶりの日本の風景に何を思う↑)

 最近都内某所での早朝稚鮎釣り、というのがなんとなくマイブームです。河口で孵化し、東京湾の三番瀬あたりで数センチまで成長した稚鮎が一斉に川を上ります。419chiayu水門下で体力を蓄えている稚鮎が群れをなしており、簡単な市販の仕掛けでじゃんじゃん釣れるのです。常連と見られるおじさんにいろいろと取材をしてみると、多い日には400~500尾も釣るのだそうです。何でそんなに、と聞くと、美味しいからなんだそうです。最近は、三人で出かけて三回目にして2時間で125尾。この釣果がどうなのかよくわかりませんが、さっそくお馴染みニュー信州に持ち込みました。天ぷら、塩焼き、山椒煮(写真)、卵とじ・・・と店主・慎ちゃんの手にかかり見事な稚鮎料理が登場します。7~8cmという大きさながら、風味は鮎そのもの。ほろ苦いワタと鼻から抜ける香りは紛れもなく夏を連想させられます。

 燕も稚鮎も季語では「春」ですが、夏はもうすぐそこまで来ているのですね。次の二十四節気は5月6日『立夏』です。

 

 


“きままにフロムヨーロッパ”

2006年04月13日 10時35分53秒 | 日々のことなど

 旧三月十六日。気圧の谷が短い周期で日本列島を通り過ぎてゆきます。菜種梅雨という天気でこのところすっきりとした青空を臨むことができません。しばらく月も姿を現していませんが明日は満月です。

0413fromeuro 一冊の本とその著者、木立玲子さんをご紹介しましょう。長年パリに住んでジャーナリストとして活躍していた彼女の近著『きままにフロムヨーロッパ』です。基準点をグローバル・スタンダードに置かず柔軟に地球の音楽を紹介し続ける雑誌『ラティーナ』に連載されていた記事の単行本化で、2年ほど前に出版されました。政治、民族、テロ、戦争、核などの社会事情が、音楽やアート、シネマといったエンタテインメントを通じてスムーズに伝わってくる内容です。

 彼女とはかれこれ15年ほど前に仕事を通じて知り合い、以来彼女の文章を読むたびに刺激を受け、羨望のまなざしを送っていました。【暮らしのリズム】の原型と言えるようなものがようやく見えてきた三年ほど前、パリへ戻る彼女に同行して成田空港まで押しかけ、午前中の日差しが眩しいカフェでゆっくりお話しをする機会に恵まれたのです。日本の民謡のこと、民俗芸能のこと、祭りのことなど、意外なほど熱い想いが伝わってきました。以来帰国のたびに超ご多忙な彼女のスケジュールの隙をついて、お目にかかり、情報交換とは恐れ多く、いつも励まされっぱなしです。「パリから日本を見ていて、いつもじれったく思う伝統芸能の状況をなんとか変えていきましょうねっ!」といった調子です。

 いつも元気で活力が溢れていた木立さんが3月9日にパリの病院でがんのため亡くなりました。シビアな病気と闘っていたことが信じられないほどバイタリティに溢れた活動を続けてきた彼女には下げる頭が足りないくらいです。

 最後の日本滞在となった2005年6月。離日前夜の彼女と数人の友人と一献傾けたのが、何かにつけてお世話になる『居酒屋ニュー信州
でした。「やっぱり日本にいるときはこういうのが食べたいのよね」とお刺身や天ぷら、季節の味覚に舌鼓を打つ彼女の姿が忘れられません。

個人的な想いが強かったのでこのblogで紹介するのは迷っていたのですが、がんと闘う一人でも多くの人に彼女の勇気が伝わって欲しいと思い、アップしました。