旧十月二十二日。二十四節気の【小雪】に入って五日が経ち、ぼちぼち関東北部の山からも雪化粧の話題が届くようになってきました。今年は暑い季節が長く続き、その分秋を実感する時期がとても短く、あっという間に冬になってしまったように思います。
急激に陽気が冷え込んで来るというのは、紅葉を美しくする条件の一つなのだそうです。
で、その紅葉前線が、今まさに東京の都心を通過中のようです。都心にある緑地の中でも、紅葉と言えばここが圧倒的、と断言できるのが新宿御苑です。落葉広葉樹が多く、樹齢も高く枝振りがとても美しいのです。
右の写真はいずれも新宿御苑の紅葉です。高層ビル群から1kmと離れていないところに、こんなにも広大な自然が在るのかと目を気分を疑ってしまうような環境です。
この公園の好きなところは、場所ごとの在るべき姿を考えて、自然の流れにまかせているところ、人の手を丁寧に入れているところをしっかり区別して、景観の美しさを作り出していることです。
もちろん、手つかずのようでいて綿密に計算されて管理はされているのでしょう。ただそのさりげない手の加え方がお見事なのです。特に素敵だなと感じ、おすすめしたいエリアが新宿門の右手奥に広がる「母と子の森」です。子供の頃に遊びと言えば走り回って探検していた雑木林の風景そのものです。里山によくある樹木が多く、紅葉もどこか見慣れた風景です。
そして、新宿御苑の魅力的なスポットがもう一つ。「エコハウスレストランゆりの木」です。開放的な窓から園内を眺めながら呑むビールは格別です。ゆっくり1時間ほどかけて歩いたあとには必ずここに立ち寄ります。惜しむべきはキリンハートランドの瓶ビールがメニューから消えたことくらいでしょうか。
都会の喧噪から逃げ込んで、のんびり一日過ごしてみてはいかがでしょうか。
旧十月十日。東京は今宵の雨を境に急に冷え込むようです。しばらく続いていた“小春日和”ともしばしお別れになるのでしょうか。
さて、一昨日の土曜日、11月13日に開催した『つるとかめライヴ~小春日和の会』には一杯のお客様にお越し頂きありがとうございました。
当日は陽射しこそ薄かったものの気温は19℃まで上がって、まさに小春日和でした。(写真はすべて水野稔さん撮影)
“暮らしのリズム”が主催する『つるとかめ』のライヴは2007年以来毎年開催して今回が4回目。澤田勝秋師匠(津軽三味線・唄)、木津茂理さん(太鼓・三味線・唄)のお二人にとっても、勝手知ったる気の置けない空間になってきているようです。
まだ外に明るさが残る頃、会場の居酒屋ニュー信州に到着したお二人は、早速小上がりにしつらえた舞台に楽器を組み上げて音を出し始めます。いろいろな曲を唄いながら、二人で合わせながら、プログラムを組み立てていました。ご予約頂いた皆さんには事前にリクエストを募っていましたが、一つ一つのリクエスト曲にじっくり向かい合い、演奏する曲を決めて行きます。そして出来上がったこの夜のプログラムがこちらです。
『つるとかめLive~小春日和に民の謡』演奏曲目
~第一部~
雨降り唄~越後松坂
俵積唄
おけさメドレー
(新しい)あいや節
(古調)あいや節
(ちょっと古い)あいや節
黒石よされ節
~第二部~
ホーハイ節
津軽三下り
信濃追分~小諸馬子唄
八丈ショメ
八丈太鼓囃子
津軽山唄
<リクエストコーナー>
郡上踊りより かわさき~春駒
南部牛追唄
こきりこ節
津軽甚句
~アンコール~
東京音頭
第一部の「あいや節」三曲はとても珍しく興味深いコーナーとです。
現在よく唄われている新しいスタイルは、澤田師匠によって唄われました。それに続いて今やほとんど唄う人がいないとされる、古調を木津さんが一人で唄います。「おけさ」の面影が三味線にも残っているということから、あいや節の流れを感じることが出来ます。そして、現在の新しいスタイルになる前の少し古いあいや節を澤田師匠が唄います。一つの唄が時代と共に変わってゆくさまをひと時に聴くことができる、貴重な時間でした。こんなことを粋にサラリとやってのけるのは、やはり“つるとかめ”だけなのでしょう。
第二部の「信濃追分~小諸馬子唄」は、澤田師匠が「唄ってみたい」というチャレンジ精神から実現したメドレーです。じっと聴き入っていると、噴煙をくゆらす浅間山を背景に旅人や馬がのんびり歩く牧歌的な情景が目に浮かんできます。
リクエストのコーナーでは、郡上の「かわさき」を澤田師匠が初挑戦。ゆったりしたリズムでとても艶っぽい唄でした。お二人による二丁三味線も贅沢の極みです。「こきりこ節」では木津さんのワークショップ「しげりずむ」のメンバーがその場で参加して唄ってくれました。ありがとうございました。(写真上の暖簾はこの春に根津神社の境内で見つけ、ニュー信州のマスターが買い求めたつるとかめの刺し子のもの/写真下は舞台の背景に飾った手拭三点。どれも鶴と亀とが舞い遊んでいます)
ライヴのあとは“暮らしのリズム”イベント恒例の酒宴です。ニュー信州からのお振る舞いのお酒は、北海道の幻の渓流魚、オショロコマの骨酒(写真左)。澤田師匠のご発声で乾杯です(4分割写真右上)。宴もたけなわとなれば、澤田師匠がおしぼりをマイクに見立てて一曲(4分割写真左上)。もちろん一曲とはいかず、さらに二曲・三曲と続いて行きます。木津さんも「花笠音頭」でお返し(4分割写真右下)。夜が更けると共に贅沢な時間がどんどん濃密になってゆきます。こうなればお客様もじっとはしていられません。
愛知の豊田から駆けつけて下さったご夫妻は「三条凧囃子」を聴かせてくれました(4分割写真左下)。
唄が、手拍子が、合の手が、自然に加わって行く。懐かしい昭和の民謡酒場って、きっとこんな感じだったのかもしれない、と思います。それとも、これぞ平成の民謡酒場なのかな、とも。こんな空間を自然に作ってくれる“つるとかめ”のお二人、澤田勝秋師匠、木津茂理さん、居酒屋ニュー信州の皆さん、おして何よりお客様には感謝の気持ちでいっぱいになります。皆さんありがとうございました。お疲れ様です。また来年も必ずやります。どうぞお楽しみに。
旧十月二日。二十四節気の【立冬(りっとう)】です。
冬の気立ち始めて、いよいよ冷ゆればなり
『暦便覧』(天明八年/1788年出版)
長い冬が始まりました。それでも今日の東京は気温が18.5℃まで上がり、小春日和でした。【小春】とは旧暦十月のこと。冬の季語です。昨日が旧十月朔日でしたから、これからしばらく、こうしたポカポカとした晴れの日がありましたら「今日は小春日和ですね」と言うことにましょう。厳しい寒さの前のひと時。身も心も暖まる小春日和を楽しみたいものです
そして、今日は11月最初の【酉(とり)】の日です。
慌ただしい年末のスタートを予感させる【酉の市】が立ちました。本場は浅草の鷲神社。新宿の花園神社もその賑わいからとても有名です。境内には市が立って「福をとり(酉)こむ」ことに因んで様々なお目出度い装飾を施した熊手が売られます。
近くの築地・波除神社でも小さな酉の市が行われている、ということで、行ってみました。築地市場の氏神ということで、商売にかかわるたくさんのお店や会社、そこで働く人たちの依りどころとなっています。
今日は市場がお休みの日曜日でしたので、わずかに観光客がいるだけで、意外にも閑散としていました。次の酉の日、11月19日金曜日が二の酉ですので、そちらの方が賑やかになるのではないでしょうか。
ちなみに今年の11月は酉の日がこの二日。次の酉は12月1日ですので、三の酉はありません。よく三の酉まである日は「火事が多い」という言い伝えがありますが、鶏のとさかが炎を連想させるから、という節が強いようです。それにしても景気の上向きがまったく実感できないこのご時世。熊手効果に神頼みなのでしょうか