旧十月十二日。今日は昼過ぎから南からの風と陽射しがポカポカと暖かく、まさに「小春日和」でありました。
昨日は“暮らしのリズム”が主催するイベント『手前味噌仕込みの会』の参加メンバーによる宴を開催しました。
今年の3月20日(春分の日)に皆で仕込んだ味噌。参加メンバーそれぞれの瓶に詰めて、自宅で8ヶ月間熟成させました。大豆・麦こうじ・塩を同じ配合で一緒に仕込んだ味噌も、熟成させる環境によって味も香りも色みも微妙に違ってくるものなのです。それぞれの味噌をスプーン一杯くらい持ち寄って一つのお皿に並べ(写真右上)、みんなで自慢し合う会、題して『手前味噌自慢の会』です。場所は仕込の会でもお世話になっている渋谷の居酒屋ニュー信州。宴の料理は、手前味噌を使ったものを中心にしたおまかせのコースです。甘みを増して美味しくなって来た大根を昆布出汁でじっくり煮で手前味噌で練った柚子味噌を掛けた「ふろふき大根」(写真右下)に始まり、味噌漬にして焼いた鶏肉、いか、鰆。脂が程よく乗った「金華鯖の味噌煮」(写真左上)。〆には皆が持ち寄った手前味噌を合わせて作った天然なめこの味噌汁。まさに手前味噌三昧の一夜となり、お酒もクイクイ進んでしまいました。
食に対する並々ならぬ熱い想いを抱く『手前味噌仕込みの会』の精鋭メンバーたち。飲んで食べておしゃべりしてだけでは物足りません。そこで、今回は発酵食品を一つ仕込んでみよう、ということになりました。チャレンジしたのは豆板醤。
できるだけ本場四川省の味を再現してみよう考え、中国人向け食材店で売っている郫?豆瓣(豆板醤の故郷、四川省の郫?=pixian地方で作られているもの)を舐めたり眺めたり水に溶いたりして、材料の配合とレシピを考えました。
『手前味噌仕込みの会』の大豆調達でお世話になっている上野の松葉屋商店で今回仕入れたのは乾燥空豆1キログラム。これを二日間じっくり時間をかけて水で戻します(写真左上)。種ごと粗く粉砕した唐辛子と米麹、塩を混ぜて(写真右上)、皮を剥いてから蒸し上げた空豆(写真右下)とよく混ぜ合わせてから瓶に仕込み(写真左下)ました。こうじ菌が活きている手前味噌を種味噌として少々加えるのがポイントでしょうか。これで一年?あるいはもっと?熟成させて、あの黒い郫?豆瓣のような色になれば出来上がりです。さあ、どうなりますやら。完成したあかつきには手前豆板醤で麻婆豆腐作りにトライします。お楽しみに。
旧十月九日。二十四節気の【小雪(しょうせつ)】に入りました。
冷ゆるが故に雨も雪となりてくだるが故なり
『暦便覧』(天明八年/1788年発行)
北海道や北国の山からは続々と雪の便りが届くようになってきました。まだ真冬の冷え込み、というわけではありませんが、今日のように陽射しの弱い日は、寒さを実感させられます。
桜の葉が色づいたかと思えば、木枯らしが吹くたびに舞い落ち、冬木立の様相になってきています。明日からの三連休を前に、静かな初冬のひと時を迎えているように感じます。
(写真は中央区新川の桜並木が続く土手から石川島・佃・豊洲方面を望む今朝の風景)
いくつかお知らせを。
◆BCXSY exhibition [Origins in Progress]
11月17日(土)~12月23日(日) 毎金・土・日13時~19時
大阪・PANTALOONにて開催中。
“暮らしのリズム”で何度も紹介して来ているオランダで活動するイスラエル人アーティストBoaz Cohenさんと山本紗弥加さんの作品展が大阪で開催中です。足立区の伝統指物工芸師、田中清八さんとの共同作業で製作された[Origin part I : Join]も展示されています。関西方面にお住まいの方、期間中に大阪を訪れる方はぜひお運びを。
田中清八さん、[BCXSY]に関してはこちらもぜひご覧下さい。
2011年8月23日『Join at Victoria & Albert Museum』
2011年2月11日『おめでとう![BCXSY]、田中清八さん』
2010年6月30日『建具職人・田中清八さんとBCXSYの共同制作』
2008年2月20日『伝統工芸、指物
師・田中清八さんを再び訪ねて』
2007年6月17日『職人技に触れる。指物師・田中清八さんとの再会』
2006年7月2日『指物建具工芸師、田中清八さんを訪ねる』
◆浅生ハルミン作の絵本『キッキとトーちゃん ふねをつくる』(芸術新聞社)
友人であり、このブログでも何度か紹介している作家・イラストレーターの浅生ハルミンさんが、初の絵本を出します。ハルミンさんのご実家と東京のご自宅に住む実在の猫が登場する物語。いつもながらのほのぼのとしたハルミン・ワールドが開かれます。発刊を記念して以下のイベントが行われます。ぜひ。
浅生ハルミン原画展『キッキとトーちゃん ふねをつくる』
11月23日(金)~28日(水)
トムズボックス+ギャラリー
12時~19時30分
浅生ハルミン・トークショー&サイン会
11月25日(日)16時~
高円寺・古本酒場コクテイル
参加費無料・飲食別
旧十月二日。昨日は朔。旧暦の十月になりました。この月のことを【小春】と呼ぶこともあります。旧十月のポカポカとした暖かい日のことを【小春日和】と呼びますが、今日は今季一番の冷え込みとかで、東京でも始めて最低気温が10℃を下回りました。北国や標高の高いところからは紅葉の情報に代わって積雪の便りが届くようになってきます。「今日は小春日和でいい塩梅だね」なんていう挨拶は、この寒気が一旦去ってからのことになるのでしょう。
そして今日は七五三。もともとは旧暦の行事ですからもう少し先なのですが、年末の慌ただしい時に重なってしまうので、今はすっかり新暦の11月で定着し、この季節の風物詩になっています。大きな神社の辺りでは、晴れ着を着た親子をよく見かけます。そうえばずいぶんしばらく千歳飴をたべていないなぁ、などとあの素朴な味に想いを馳せるものです。
東京でも街路樹や公園の紅葉が見頃になりつつあるようです。昨日今日のような、スカッとした青空の下、色づいた葉は見事なコントラストを見せてくれます。写真は昨日のお昼前後、お台場の奥、青海にある公園の様子。この辺りも公園が整備されて早いもので30年以上が経過しており、照葉樹と落葉広葉樹が良いバランスで植えられ、樹勢もついてきたので、四季を通じて目を癒してくれるようになりました。結構穴場があるので、足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。
旧九月二十四日。月は下弦となりました。今日から二十四節気の【立冬】になります。
冬の気立ちはじめて、いよいよ冷ゆればなり
『暦便覧』(天明八年/1788年発行)
二十四節気をさらに三つに分ける七十二候では「山茶(つばき)始めて開く」。色彩感が乏しくなる冬の野山を長く彩る椿、山茶花はこの頃から咲き始めるようです。
二十四節気の中で季節が立つ、立春(2月4日頃)・立夏(5月6日頃)・立秋(8月7日頃)・立冬(11月7日頃)の中で、最もリアルに季節の始まりを感じるのが【立冬】だとは思いませんか。
冷たい雨と乾燥した晴天が交互にやって来て、ひと雨ごとに日々の最低気温が下がってゆくのがこの頃です。本格的な雪の季節を前にした北国では晴れていたかと思うと急に曇って来てサーッと雨を降らせる【時雨】があります。俳句では冬の季語ということですから、これからしばらく、急な雨には「おっ!時雨れてきたね」なんて言ってみるのが粋なのでしょう。東京の紅葉もいよいよかな。葱も太くなってきて鍋と熱燗が恋しくなり始めます。冬もまたいい。
(写真は本日、江東区の木場公園にて。11月と言えばやっぱり菊です)