"暮らしのリズム"的できごと

先人が培った暮らしの知恵を通じて今を楽しむ【暮らしのリズム】のブログ。旧暦、落語、音楽、工芸品、食、民俗芸能などをご紹介

『遙かなる佃』昭和の東京を見る

2006年07月22日 16時47分13秒 | 催しごと

 旧六月二十七日。梅雨前線が本州に沿ってべったりと張り付き、各所で水害をもたらせています。被災地の方には心よりお見舞い申し上げます。東京も平年の梅雨明け日を過ぎてなお週間天気予報には傘の行列が。このところは涼しい日が続き、過ごしやすいなぁ、と実感していたら、いつしか土用に入り(7/20)、明日は二十四節気の【大暑(たいしょ)】で、土用の丑の日でもあります。夏の太陽が恋しくなってきました。

 佃島の盆踊りも終わり、その余韻が何となく体に残っている頃、都内のフォトサロンで昭和の東京、下町の息吹を伝える写真展を観に行ってきました。
722nakada報道カメラマンとして長いキャリアのある中田利昭さんの作品展『遙かなる佃』です。
(←図録の表紙になっている作品「昭和39年3月22日 佃島渡船の船室」)
 佃大橋が架かり、隅田川を行き来する渡し船が姿を消す直前の昭和30年代中盤から昭和の終わりまでを描いたモノクロームのプリントによる作品の数々。生活感溢れる人々の表情、近所の人たちとの熱い連帯感や人情が伝わってくるドキュメンタリー・タッチの作品からは、演出など一切ないその時代の等身大な佃島が感じられ、とても感動的でした。ある部分は「今も変わっていないなぁ」と思わせ、またある風景は「いい時代だったんだろうなぁ」と憧れの気持を抱かせてくれます。7/30(日)まで行われています。

中田利昭作品展「遙かなる佃」
2006年7月30日(日)まで
JCIIフォトサロンにて開催中ー詳しくはこちらをご覧下さい

会場にて図録800円と、ハードカヴァーの作品集が2800円で販売されています。自ら佃島について紹介した文章も魅力的です。

 やっぱり銀塩モノクロプリントから伝わるメッセージは深いです。
722tsunesan_1アナログレコードの暖かみのある音のように、心に響いてくるものがあります。中田さんにしてみれば月とすっぽん以下ですが、私も少しずつその魅力にはまり趣味的に撮りためています。右の写真はそんな1枚、昨年の佃島盆踊り最終日、音頭を終え櫓を降りかける飯田恒雄さんです。


佃島の夏景色

2006年07月12日 16時08分59秒 | 季節のおはなし

佃島盆踊りの写真をアップしました(7/19up)
 旧六月十七日
712mangetsu_1昨日は満月、東京でも夜空が明るく夜半頃南の空には大きくまんまるい月がぽっかり浮かんでいました。こんなに明るい月を望むのはずいぶん久し振りのような気がしますね。梅雨明けも近いのでしょうか。
 
 明日からの三晩、中央区佃一丁目、通称“佃島”では恒例の盆踊りが行われます。このblogを始めて間もない昨年もご紹介しましたのでこちらをご覧下さい。
 お盆は本来旧暦の七月十三日夕方の迎え火に始まり、十五日が盂蘭盆、そして十六日の送り火で終わります。
712obon私の住む月島・佃などのように今のカレンダーに置き換えて7月に行うところ。旧暦が今のカレンダーより概ねひと月遅れることから8月13~16日に行うところ。そして沖縄などのように今も尚旧暦で行うところ(今年は8/6~9)、があります。
 月島の商店街では、もともとお盆用の供え物や装飾を売っていた“草市”が今日から三日間行われ、たくさんの露店が立ち賑わいます。
(↑月島西仲通り商店街では草市の準備が急ピッチ)
 佃島の盆踊り会場では真新しい材木で組み上げられた櫓が造られ、
712tsukuda真っ白な提灯も飾られ、準備が整っていました。連日蒸し暑い日が続いていますが、水辺を渡る夕方の風は心地良く、素朴な念仏踊唄に耳を傾けると、なんとも涼しげな気分に浸れます。都会の片隅に残る貴重な盆踊り。ぜひいかがでしょうか。(→日中に見ると櫓はとても小さく感じます。夜には提灯に照らされ薄暗く素朴で神秘的な空間になります)

 ◆◆佃島盆踊り(佃島念仏踊り)◆◆

日程:7月13日(木)~15日(土)
時間:19時頃から21時過ぎまで
  ※前半は子どもの踊り、名音頭取り飯田恒雄さんは20時過ぎに登場します。
場所:中央区佃一丁目(地図はこちら)
注意:必ず無縁仏を供養する精霊棚でお線香を上げてから踊りの輪に入りましょう。
(↓初日の模様です。名音頭取り飯田恒雄さんと旧渡船場跡に設けられた精霊棚)
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“舞と噺”の興味深~いイベント

2006年07月07日 11時34分53秒 | 季節のおはなし

◆イベント当日の写真をアップしました◆(7/19up)
 旧六月十二日。今日は二十四節気の【小暑(しょうしょ)】です。梅雨もいよいよ終盤戦、五月雨のしとしと降る雨から、時折ザーッと降る雨が多くなってきました。集中豪雨に見舞われている九州地方も皆さんには心よりお見舞い申し上げます。
 そして今日は七夕ですね。
七夕(しちせき)は人日(じんじつ、正月七日)、上巳(じょうし、三月三日)、端午(五月五日)、重陽(ちょうよう、九月九日)と並ぶ五節句の一つ、本来は旧暦の行事です。中国伝来の星祭り、牽牛星と織女星の伝説が一般的ですが、古来日本の民俗風習であるお盆を前にした穢れを祓う行事であったとされているようです。今年の旧暦七月七日は7/31(月)、夜空は晴れわたり星の伝説を観ることが出来るでしょうか。
 とても興味深いイベントをご紹介しましょう。
様々な流派で基礎を学び12年前に自らの流派、舞川流を立ち上げた舞川扇彩さんと、居酒屋寄席でいつもお世話になっている立川文都師匠のジョイントイベントです。
77maikawa舞川さんは川崎大師にほど近いご自宅の1階のお稽古場を【座・舞川】という名の小劇場として解放し、定期的に様々なイベントを開催されています。落語と日本舞踊は表現のスタイルこそ違えど、その流れには共通する部分がたくさんあります。日本の伝統芸能を探求し続けるお二人のお話を聞いていると、いつも驚かされることがたくさんあり刺激的です。今回のイベントでは、それぞれが落語・舞踊を披露され、違った視点で来る広げられるトークや、珍しい共演、なども観られると思います。ご興味のある方は、ぜひお運び下さい。必ずやご満足いただけることでしょう。(↑某日打合せ中の舞川扇彩さんと文都師匠、イベント本番にとっておいて、というほど話が弾む弾む↑)

◆さろん・まいかわ◆
出演:立川文都、日本舞踊舞川流家元・舞川扇彩
日時:平成18年7月16日(日)開場=13:30、開演=14:00
場所:座・舞川(川崎区伊勢町11-5)map
料金:前売=2500円、当日=2700円
詳しくは舞川流ホームページをご覧下さい。

(↓当日の模様。根多は『お菊の皿』扇彩さんがお菊をチャーミングに演じる)

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指物・建具工芸師、田中清八さんを訪ねる

2006年07月02日 12時57分29秒 | 手しごと

 旧六月七日。今日は雑節の【半夏生(はんげしょう)】です。夏至(6/21)から数えて11日目、七十二候夏至の末候にあたるこの日は、八十八夜などと共に農業の重要な節目の日とされていました。この日までには田植えを終えましょう、という頃です。“半夏とは野に生える「からすびしゃく」というサトイモ科の野草のことです。「夏半ばに生える」ちょっと早い気がしますが今や夏真っ只中なんですね。

 はっきりしない梅雨空の下、足立区は東武伊勢崎線梅島駅近く、72andon指物の伝統工芸師、田中清八さんの工房を訪ねてきました。6月の半ばに千住で開催された「足立伝統工芸品展」を見に行った際に、出品されていた行灯や障子に魅せられお話しを伺い「ぜひ後日工房にお邪魔させて下さい」という願いが実現しました。(←これが一目で釘付けにされてしまった、漆塗りの行灯と独特な意匠の“ちり返し障子”)

 お仕事の手を止めて、以前制作された衝立障子(ついたてしょうじ)を見せて下さったり、それぞれの細工を専用の特殊な工具と共に説明して下さったりと、72tanaka2たいへん親切に教えて下さいました。(↓田中清八さんと三年前に作ったという衝立障子。その下の写真が衝立障子の細部、細工と細部の面取りが美しい)
 都心では職人の技が活きる日本家屋や意匠が減っているとのこと。普段のお仕事は注文住宅の家具や建具などの制作が主で、伝統工芸の需要は少なくなっているそうですが「独創性と意欲が大事ですね」とおっしゃるとおり、
72tsuitateまだまだ伝統的な指物に対する熱い想いが伝わってきます。72koushi大量生産では決して得られない贅沢で豊かな気持になれることでしょう。
 朝に電話をしてその午後にお邪魔したのにもかかわらず、暖かく迎えて頂き感謝しています。奥様と共にこれからもどうかお元気で、私たちに驚きと感動と安らぎを与えて頂きたいと思います。
(↑お土産にと、こんなものを頂きました。これは癖になる)

 6/11“入梅の頃あけぼのは早し”の紫陽花の写真を差し替えました。