"暮らしのリズム"的できごと

先人が培った暮らしの知恵を通じて今を楽しむ【暮らしのリズム】のブログ。旧暦、落語、音楽、工芸品、食、民俗芸能などをご紹介

『つるとかめLive~収穫歓び民の謡』ご来場感謝します

2011年11月21日 17時49分28秒 | つるとかめ

  旧十月二十六日。二十四節気の【立冬が過ぎ、明後日はもう【小雪】です。秋と冬のせめぎ合いなのでしょうか。最高気温が22℃と、東京では小春日和となった昨日、夕刻の通り雨を機に空気が入れ替わって、冬が優勢になってきたようです。北国からはようやく雪の話が聞こえて来るようになりました。

 一昨日、荒れ模様となった土曜日に開催した『つるとかめLive~収穫歓び民の謡』。たくさんのお客様にお運び頂き、ありがとうございました。
1121tsurukame1  2007年の初夏、つるとかめにとって三枚目のCD『しゃっきとせ』をリリースする時にご縁を頂き、居酒屋ニュー信州でのライヴが実現し、以降毎年開催して今回が五回目となります。生音で、しかも至近距離で聴けるこの空間を気に入って頂き、毎回のように足を運んで下さるお客様に加え、民謡のライヴそのものが初めてというお客様もいらっしゃり、いつも皆さんの反応をとても興味深く拝見しています。
 今年は東日本大震災という忘れ得ぬ出来事がありました。被災地である東北や北関東の状況が頻繁に報じらることによって、地域に根ざすということやアイデンティティについて考えさせられることが多くなったと思います。1121tsurukame2 民謡は暮らしに寄り添って長いこと唄いつ継がれて来た、地域の宝物のようなものです。今のライフスタイルからすれば、非日常的で昔のものだった民謡が、なんとなく少しずつ見直されて来ているのでは、あるいは未知のものとして新鮮に受け止められているのではないだろうか。この夜皆さんとともに過ごした時間、そのような思いをしっかり感じました。民謡はこれからも日本人の心に行き続けるのだな、と思います。
 この日“つるとかめ
のお二人、澤田勝秋さん(津軽三味線・唄)と木津茂理さん(唄・太鼓)は、青森県下北半島でのお仕事を終えて長距離を移動し開場時間の直前に到着されました。いつもは敷いている毛氈をはずし、普段着での唄と演奏となりました。お客様との目線が一致し、これまでとはひと味違った一体感が生まれたようです。

『つるとかめLive~収穫歓び民の謡』演奏曲目
阿波よしこの節(徳島県)~津軽囃子(青森県)
おけさメドレー(新潟県)
あいや節-旧節(青森県)
あいや節-新節(青森県)
じょんがら節-新節(青森県)唄:木津茂理
リクエストコーナー
 長者の山(秋田県)
 生保内節(秋田県)
 秋田おばこ(秋田県)
 最上川舟唄(山形県)
 貝殻節(鳥取県)
 下津井節(岡山県)
 かわさき~春駒(岐阜県・郡上踊り)
 じょんがら節-旧節(青森県)唄:澤田勝秋
 信濃追分~小諸馬子唄(長野県)
斉太郎節(宮城県)唄:お客様と共に
さんさ時雨(宮城県)
ホーハイ節(青森県)
津軽甚句~津軽小原節(青森県)

 長旅でお疲れの“つるとかめ”のお二人は翌日も早朝からのお仕事のため、この夜は乾杯のご発声まで。本当にお疲れ様でした。
1121azumamine  そして恒例の酒宴が開宴。この夜の乾杯の振舞酒は、岩手県紫波郡紫波町にある吾妻嶺酒造の【あづまみね純米美山錦】。南部らしい、どっしりしていて切れもいい美味しいお酒でした。
 季節の味覚のお楽しみは『収穫歓び』の通り「丹波の黒豆の枝豆」と「蒸かしたさつまいも」。黒豆の枝豆は、枯らして乾燥すればあの丹波の黒豆になる直前の状態を茹でたもの。サイズは飛切等級。ほのかな甘みと旨味は黒豆の頂点の味わいです。さつまいもは、戦後広く栽培されていて昭和40年頃に姿をほとんど消してしまった「太白」という品種です。色は白く、甘みを強調して品種改良された今のいもと違って、優しい甘みとねっとりとした食感が特徴です。居酒屋ニュー信州からのお振舞でした。

(photo by Minoru Mizuno いつもありがとう)

つるとかめ”プロデュースの【青山民謡酒場 vol.4】
1111minyousakabaa11月24日(木) ゲスト=大工哲弘
11月25日(金) ゲスト=林 立夫+澤田勝秋社中
開場=18:00、開演=20:00
表参道 CAY(Spiral B1F 03-3498-5790)
前売=3000円、当日=3500円 飲食代別途


必見!『DOMA秋岡芳夫展』

2011年11月03日 11時07分04秒 | 催しごと

  旧十月八日。上弦の月です。11月に入っても暖かい日が続いています。昨日は一の酉。築地波除神社でも規模は小さいながら酉の市が行われ、半袖姿の人も目にする陽気の中、威勢のいい掛け声で熊手が売られていました。今年は二の酉(11月14日)、三の酉(11月26日)まであります。三の酉がある年は火事が多い、とよく言われますが、これ以上の災いがない穏やかな年の瀬になりますように。

 目黒区美術館で10月29日(土)に始まった展覧会『DOMA秋岡芳夫展~モノへの思想と関係のデザイン』を観に行ってきました。(12月25日まで開催)
1103yoshioakioka  圧倒されるヴォリュームの展示品と、秋岡芳夫の志が立体感を持って伝わって来る展示構成が素晴らしく、しばし夢のような空間を歩きながら、思わず頷いていたり口角が上がってしまうほどでした。
 『熊本県出身の秋岡芳夫(1920ー1997)は、童画家、工業デザイナー、生活デザイナー、プロデューサー、家具の収集家など多彩な顔を持ち、伝統と現代を融合させるそのユニークでユーモアのある思想と方法論は多くの人々に影響を与えてきました。』目黒美術館館長 田中晴久(パンフレット ごあいさつより)
 館内には、絵画、挿絵や装丁を行った本、椅子、ラジオキャビネット、露出計、カメラ、三菱鉛筆uni、学研「科学」の教材、オートバイ、子供のための家具、漫画によるレンダリング(アイディアの描写・描出)、ポット、木の食器、木製子供のおもちゃ、木工道具などなど紹介にある通り実に多彩です。そしてその一つ一つが有機的である、と表現したらいいのか、温もりを感じます。
 わたしを含めきっと多くの人が共感しているであろう、秋岡芳夫の言葉があります。

消費者をやめて愛用者になろう!

 1971年に刊行された著書『割り箸から車(カー)まで』のサブタイトルにある言葉です。初めてこの言葉を見た時、ハッとさせられるものがありました。モノをつくること、モノを手に入れること、モノを手放すこと、そのすべてが自分の暮らしの創造性に深く関わらなければならないことを考えさせられました。今年、日本はいろいろなことにおいて転換を迫られました。今こそこの言葉の重みを受け止め、暮らしを見直して行く時なのかもしれません。そういった意味でも、とてもタイムリーで重要な展示だと思います。
 館内に足を踏み入れるとまず目に飛び込んでくるのが、1500本もの竹とんぼです。秋岡芳夫は晩年の十年間、竹とんぼを作り続けました。二本と同じものが無いそうです。目にもシンプルな遊び道具、手を離れて9秒から11秒間滑空する竹とんぼ、その飛型の美しさは儚げではなく輝きなのだなぁ、と最後にもう一度竹とんぼを見て感じました。たくさんの人に観てもらいたい展覧会です。

DOMA秋岡芳夫展~モノへの思想と関係のデザイン
目黒区美術館 Meguro Museum of Art
2011年10月29日(土)~12月25日(日)月曜日は休館

秋岡芳夫の御次男、秋岡 欧はブラジル・スタイルのマンドリン、バンドリン奏者として、30年以上に渡って弦楽トリオ、ショーロ・クラブで活躍しています。優しくとても温厚な人柄でありながら、芯が強く創造力に満ち、とても魅力的です。生まれ育った環境とDNAをあらためて感じました。
Choro Club Homepage
秋岡 欧 Website