"暮らしのリズム"的できごと

先人が培った暮らしの知恵を通じて今を楽しむ【暮らしのリズム】のブログ。旧暦、落語、音楽、工芸品、食、民俗芸能などをご紹介

Join at Victoria & Albert Museum

2011年08月23日 18時32分24秒 | 催しごと

 旧七月二十四日。二十四節気の【処暑(しょしょ)】です。 

陽気とどまりて、初めて退きやまんとすればなり
               『暦便覧』(天明八年/1788年発行)

 早くも秋雨前線が日本列島に沿って停滞し、ここ数日間は10月くらいの陽気で、そらも愚図つきっぱなしでしたが、東京では今日の午後から、また残暑が戻ってきました。それでも、もう猛暑日になるようなことはなさそうです。蝉しぐれが止んで夜になれば秋の虫が元気になってきているようです。

 “暮らしのリズム”では何度もご紹介している建具・指物の伝統工芸師、田中清八さんと、
オランダをベースに活動するイスラエル出身のアーティストのBoaz Cohenさんと山本紗弥加さんによるユニット(と言ったらいいのかな)『BCXSY』の共同作業0630bcxsyよる素晴らしい作品[Origin part I: Join]が、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館に収蔵されることになりました。
 まずは2011年9月17日~25日に開催される特別展『ロンドン・デザイン・フェスティヴァル』でお目見えし、その後は半永久的に、V&A博物館の収蔵品として常設展示され、場合によっては他国などで開催される展示に貸し出されたりすることもあるでしょう。ロンドンを訪れるご予定がある方は、ぜひ博物館に足を運んで
[Origin part I: Join]をご覧頂きたいと思います。

 山本紗弥加さんから頂いたメールを抜粋してお伝えします。
「本当に光栄な事で、私達もすごく感激しています。また博物館に常設させる事で10年後、50年後、もし悲しくも日本で建具細工を見る事が出来なくなっても、このすばらしい技術・伝統を人々に知っていただけるという事が私はすごく嬉しいです。これも田中さんのすばらしい腕前のおかげだと思っています。」
「(東日本大震災の復興支援に関して)
私自身何もする事が出来ず、自分の力の小ささを実感し、歯がゆい思いをしています。何か少しでも役に立ちたいと思いBoazと話し合い、実は建具作品の1セット目(今回V&A博物館に買い取っていただけたものです)の50%売り上げを震災にあった方々の支援に当てるための告知を込めた展示を今年(2011年4月)ミラノで行ないました。結局ミラノでは買い手は付かなかったのですが、今回こういった形で買い手がつき、ささいですがこういった形で支援が出来る事がすごく嬉しいです。」

Boazさん、紗弥加さん、田中清八さん。本当におめでとうございます。


田中清八さん、[BCXSY]に関してはこちらもぜひご覧下さい。
2011年2月11日『おめでとう![BCXSY]、田中清八さん』
2010年6月30日建具職人・田中清八さんとBCXSYの共同制作

2008年2月20日『伝統工芸、指物 師・田中清八さんを再び訪ねて』

2007年6月17日『職人技に触れる。指物師・田中清八さんとの再会』
2006年7月2日『指物建具工芸師、田中清八さんを訪ねる』


BCXSYのホームページ
http://www.bcxsy.com/

Origin Part I: Joinの詳細
http://www.bcxsy.com/work/collections/2010/origin-part-i-join/

Victoria & Albert Museumのホームページ
http://www.vam.ac.uk/




福島・いわきの『じゃんがら念仏踊り』

2011年08月08日 19時13分14秒 | 催しごと

 旧七月九日。二十四節気の【立秋】です。

初めて秋の気立つがゆへなれば也
        『暦便覧』(天明八年/1788年出版)

 今年はどうも夏が行ったり来たり。早くに梅雨が明けたかと思ったら、戻り梅雨のような涼しい日が続いたり。この頃は盛夏の様相が続いています。秋の気は立っているのでしょうか。着実に日の出が遅くなり、暗くなるのも早くなってきていることでしか秋を感じることが出来ないように思います。

0808yugyouji 旧暦の七夕の夕、このあいだの土曜日に、藤沢にある遊行寺の盆踊りに行ってきました。盆踊りの元祖と言われている踊り念仏で日本全国を歩き念仏を広めた一遍上人が開祖の時宗総本山がこの遊行寺。正式名が「藤澤山無量光院清浄光寺」で、藤沢という土地の名のルーツとなっている名刹です。

 今年で6回目となる『藤沢宿 遊行の盆』。1回目の2006年に秋田の「西馬音内盆踊り」と富山の「おはら風の盆」が招待され、その舞台公演を観に行ったのが出会いでしたが、遊行寺境内で行われる盆踊りは今回が初めて。0808nishimonai箱根駅伝でも難所として知られる斜面にこんもりとした森が広がり、荘厳な本堂を始めお寺の建物が建ち並んでいます。蝉しぐれに包まれ、趣と凛とした空気に包まれた、とても清々しい境内でした。

 今回は“つるとかめ”の木津茂理さん(左の写真中央で水色の着物が茂理さんです)がご当地盆踊唄の太鼓を叩くというので、勇んで出掛けて行ったのもあるのですが、西馬音内盆踊りも招待されているので、こちらも楽しみの一つ。残念ながらお囃子は来ておらず、録音音源によるものでしたが、艶っぽい手先の動きを伴う踊りは、やはり素晴らしく、うっとりとしてしまいます。

 そしてもう一つ。これはほとんど予備知識がなく、ノーマークだったのですが、心を打たれました。福島県いわき市の『じゃんがら念仏踊り』。
 横に並んだ太鼓が三人。小さめの長胴の締め太鼓を柔らかいマレットのようなバチを両手に持って踊りながら叩きます。その周囲を鉦を打ちながら7人くらいだったでしょうか、輪をなして踊り歩きます。一つの踊りが15分くらいだったかと思いますが、踊り手たちの高揚感が一体となって独特のグルーヴを生んでゆきます。それは決して聴衆に対して見せ場を作る、というものではなく、内なるところから自然に湧き上がってきているように感じました。だからこそ心を打たれるのでしょう。地域に根ざした民俗芸能のあるべき姿です。
 この『じゃんがら念仏踊り』は、毎年8月13日から15日。新盆の家に行き、供養の踊りをするのが習わしとのことです。福島県災害対策本部が8月1日に発表した被害状況即報第314報によると、東日本大震災によるいわき市の死者は308人。さらに40人の方の行方がまだ不明ということです。『じゃんがら念仏踊り』の担い手たちにとっても、誰かしら近しい人が深刻に被災していることと思います。今年のお盆。彼らは哀しみを胸に何回踊ることになるのでしょう。一人一人が抱く強い想いを感じ取ることができました。この夜に観た『じゃんがら念仏踊り』きっと忘れることはないでしょう。

【時宗と遊行寺】は
http://www.jishu.or.jp/

【藤沢宿 遊行の盆】は
http://www.bonodori.net/fujisawa/fujisawa_top.html

【じゃんがら念仏踊り】は
http://ja.wikipedia.org/wiki/じゃんがら念仏踊り