旧五月二十九日。明日は二十四節気の【夏至】です。
陽熱至極しまた日の長きの至りなるを以て也
『暦便覧』(天明八年/1788年出版)
一年で最も太陽が高く、昼間が長い日です。ぐずつきがちの梅雨時にはあまり実感できませんが、晴れれば太陽はじりじり照りつけ、強烈な日差しを感じることになるでしょう。
上海も雨の季節を迎えているはずですが、日本流に言えば空梅雨です。晴れの日が続くと一足早く盛夏の花が開いてしまうものです。
公園のサルズベリ。一枝の先に固い蕾を開いて咲く花を見つけました。猿も滑るほどつるつるした幹からついた名前が面白いのですが、中国では「紫薇(zi3wei1)」という名です。占いの「紫微斗数」と関係があるのでしょうか。サルスベリは花期が長いので、しばらく楽しめそうです。
夏至といえば、6年前からスタートした『100万人のキャンドルナイト』の輪はますます拡大しているようです。夏至の夜8時から20時までの2時間、電灯やテレビを消してろうそくの灯りで過ごそう、という活動。ホームページで体験談を見ると「省エネルギーに繋がることはもちろん、家族や親しい人とのコミュニケーションがとても深まり貴重な時間になった」と、総じて紹介されています。
暗い時間に灯した火を囲んでいると、その光源がろうそくであっても、ランタンでも、ガス灯でも、たき火、暖炉、囲炉裏、線香花火・・・、普段とは違う落ち着いた精神状態になり、心を開くような気がします。火を司るという、決して人間が発明したという烏滸がましいものではなく、人間に与えられた特権を最も上手に活かした方法なのかもしれません。
昔の人は外のエネルギーを必要とすることはあまりしなかったものですし、出来ませんでした。明るくなったら活動し、暗くなったら寝てしまう。日の出・日の入りの時刻を基準にした時の数え方は、季節によって一定ではないリズムを刻む指標だったのでしょう。
中国の人たちは、朝が早いです。明るくなるとパジャマを着たまま外に出てきます。市場は早朝から活気があり、ハイテンションで語り合っています。その分夜は早いですね。少しでも日が傾くともうパジャマです。古い町では日没の頃に商売を終えると、風通しのいい路地や通りにテーブルを出して、裸電球一つの灯りでトランプをしたりしていますが、それも長くは続きません。すぐに静まり返ってしまいます。
流行語と言って茶化してはいけないのかもしれませんが、どこを見ても「eco」の文字に溢れいてます。いろいろな考え方がありますし、様々な立場でecoに向かい合っている人がいらっしゃるでしょう。私の考えは、昔の人の“暮らしのリズム”を感じることが出来れば、それが結果的にecoなのかな、というふうにいつも思っています。
さて、明るくなると床に入られる夜型人間にとっては過酷かもしれませんが、夏至は昼の時間が最も長い日。この日ばかりはお天道様のリズムで活動してみるのも面白いかもしれません。
明日東京の日の出時刻は4時25分。日の入りは19時ちょうどです。昼寝は有りです。月明かりはありません。暗くなったらとっとと寝ちまいましょう。まだ寝るには早い、となればろうそくを一本。