旧九月二十一日。朝晩は少し冷えるようになってきました。空気も乾いて風邪も流行り始める頃です。十分に気をつけましょう。
昨夜開催した【つるとかめ~実りの秋に民の謡】にはたくさんのご来場を頂きましてありがとうございました。
一年半振りに“暮らしのリズム”のイベントに出演して下さった“つるとかめ”澤田勝秋師匠(津軽三味線・唄)と、木津茂理さん(唄・太鼓・三味線)のお二人(木津さんは2007年11月3日【秋の夜長に民の謡を~木津茂理ライヴ】がありました)。居酒屋の座敷に赤毛氈を敷いただけのシンプルなステージ。マイクもスピーカーもない、完全生音のライヴです。お客さんとの距離は僅かに数メートル。太鼓、三味線の響き、肉声そのものが伝える喜怒哀楽に満ちた唄がストレートに伝わってきます。一つの唄が終わるたびになかなか鳴り止まない拍手が続きました。空間が一体となり、皆がいにしえの日本の情景を思い浮かべているのでしょうか、二人の紡ぐ唄に引き込まれているのがよくわかります。(写真:つるとかめのお二人。今回は二挺三味線の曲を三曲も聴かせてくれました)
先ずの一杯を体に染み渡らせて、余計な力を抜いて唄に身を委ねる前半。途中の休憩では、越後の久須美酒造が醸したその名も『祝鶴亀』(写真左です)がお店からのお振る舞い酒として配られました。そしてライヴの後半は澤田師匠の乾杯の発声でスタート(写真下です)。ほろ酔い加減で迎えた後半は、至極の名人芸がますます炸裂。お店の空気はどんどん熱くなって行きあっという間にライヴはフィナーレを迎えました。
ライヴのあとは第二部、酒宴です。季節の味覚を味わいながら杯を傾け、演者の素晴らしいパフォーマンスを反芻しながら語り合うのは、このイベントの恒例です。
まずの一品はお振る舞いです。澤田師匠の故郷津軽は目にも鮮やかに黄色い食用菊の旬を迎えています。蕪と天然しめじと酢の物で供されます。つるとかめがこの夜も聴かせてくれた越後の「出雲崎おけさ」。その一節に「春は鰯で大漁の浜よ、夏は小鯛で舌鼓、秋は秋鯖嫁には内緒、冬は鱈の味噌汁ソ~レ雪見酒」とご当地名物を唄っています。とくれば秋鯖。この日届いた日本海の秋鯖が〆鯖でメニューに並びます。他にも東北地方の各地で採れた天然の茸を天ぷらで。秋の味覚満載の宴となりました。
「つるとかめ~実りの秋に民の謡」曲目リストと収録アルバムです
~一部~
津軽小原節 (青森県) 「しゃっきとせ」
ホーハイ節 (青森県) 「あいのかぜ」
おけさメドレー (新潟県) 「つるとかめ」
松前三下り (北海道) 「あいのかぜ」
よされ節 (青森県) 「つるとかめ」
黒石よされ節 (青森県) 「つるとかめ」
~二部~
出雲崎おけさ (新潟県) 「しゃっきとせ」
じょんがら節 (青森県) 「つるとかめ」
八丈太鼓囃子 (八丈島) 「あいのかぜ」
津軽山唄入曲弾 (青森県) 「あいのかぜ」
秋田荷方節 (秋田県) 「あいのかぜ」
江差追分 (北海道) 「あいのかぜ」
越後甚句 (新潟県) 「あいのかぜ」
つるとかめライヴ情報です
12月18日(木)Gallery ef(浅草)
19:30~ 3000円+1ドリンク500円 定員25名/要予約
予約・問03-3841-0442(ギャラリーエフ)
旧九月十六日。 ある日突然鼻腔をくすぐり、瞬時に秋の到来を実感させてくれる金木犀を今年初めて意識したのは10月5日の日曜日頃のことでした。春の沈丁花と同じように季節の移ろいを香りで伝えてくれる花です。過去の手帳や、このblogで金木犀の香りを感じた頃を振り返ってみると、だいたい二十四節気の【寒露(かんろ)】の頃をピークに咲いているようです。温暖化が懸念されていますが、その前の【秋分】にぴったりタイミングを合わせて咲く彼岸花と同じように、暦に正確な花です。日照時間に関係があるのでしょうか。
【寒露】は10月8日水曜日でした。
隠寒の気にあって、露むすび凝らんとすればなり
『暦便覧』(天明八年(1788年)出版)
それにしても、どうも今年の秋は暖かいように感じませんか。厚手の衣類を出すのにも、夏物をしまうのにもなんだか躊躇してしまうような陽気が続いています。それでも油断は大敵です。日中は暖かくても日が落ちる頃に急に冷たい北風が吹いてくるのも、この頃です。
10月11日の土曜日。朝からの雨が一旦は上がって、晴れ間も覗いたのですが、夕方には急に黒い雲が広がりにわか雨が降りました。再び雨の上がった夕刻、それまでとは空気が変わり、来たから冷たく乾いた風が吹いてきます。「ああ秋から冬の季節風、葉枯らしの風だな」と空を見上げると、ぽっかり浮かんでいるのは【十三夜】の名月です。旧暦九月十三日の月は、旧暦八月十五日の【中秋の名月】に対して「後の名月」です。中秋の名月を丸く白い里芋をイメージして『芋名月』というのに対し、十三夜の月は『栗名月』あるいは『豆名月』と呼ばれています。まだ丸くなりきっていない、ちょと欠けている姿が、栗や豆(大豆なのかな)に見えるのでしょうか、それぞれの収穫期にだいたい一致するからなのでしょうか。秋の名月を二度見ることが出来ると縁起がいい、と言われていました。今年は中秋の名月を大和市の公所・浅間神社で拝むことが出来ました(その時の模様はこちらです)ので、何か良いことがありそう、と期待に胸が膨らみます。