"暮らしのリズム"的できごと

先人が培った暮らしの知恵を通じて今を楽しむ【暮らしのリズム】のブログ。旧暦、落語、音楽、工芸品、食、民俗芸能などをご紹介

お疲れさま『手前味噌仕込みの会』

2011年02月21日 18時39分06秒 | 主催する催し

 旧正月十九日。二十四節気の【雨水】に入りました。

陽気地上に発し、雪氷とけて雨水となればなり
            『暦便覧』(天明八年/1788年出版)

 まだまだ寒い日もありますが、天気の変化が忙しくなってきました。これが初春の陽気なのでしょう。そうなってくると心配なのが杉花粉です。今年は大量に飛散するとか。花粉症の方には本当に辛い季節が始まります。最近はいろいろな対策グッヅが売られています。どうか備え怠りなくお元気にお過ごし下さい。

 今年で6回を数える『手前味噌仕込みの会』を2月19日土曜日に居酒屋ニュー信州で開催しました。今回もたくさんの方にご参加頂き、楽しく味噌を仕込み、初の試みで手作りこんにゃくにトライし、
0221moji宴では話に花が咲きました。ご参加下さいました皆さん。ありがとうございます。そしてお疲れ様でした。

 今回は、一昨年作って大変好評だった玄米麹の手前味噌を仕込みました。玄米麹は半年から一年、さらには二年くらいまで、時間を掛けてじっくり熟成させるのに適していると思います。白米の麹に比べて栄養価や食物繊維が豊富なのは想像できるのですが、何より風味がとても良いのがいいのです。長く熟成させると田舎味噌のような独特の香りと濃厚な旨味を楽しめます。塩分はやや薄めの11%に、麹と大豆の比率はやや大豆多めというじっくり型の配合で仕込みました。0221misojikomi_2 皆で仕込んで参加メンバーそれぞれの一升瓶に仕込んで、持ち帰って頂き、ご自宅で熟成します。毎年感じるのが、同じ条件で仕込んだ味噌でも、熟成させる環境で千差万別に育ってゆくのが面白いです。人が暮らす場所には様々な菌、麹菌や乳酸菌があって、それが影響を与えるのでしょう。秋には参加メンバーが味噌を持ち寄って比べてみる『手前味噌自慢の会』という宴を行います。今年はどんな味噌が集まるか楽しみです。

 手前味噌仕込みに加えて、今回は特別企画で「こんにゃく芋から手作りこんにゃく」という試みにチャレンジしました。 こんにゃく芋は、名産地の群馬県下仁田町からインターネット通販で取り寄せました(ぜいたく庵のホームページはこちら)。
0221konnyaku こんにゃく芋を見るのが初めて、という方がほとんどで、こんにゃくを作る行程も皆初めて知る、という中、芋と一緒に送られてきたレシピを見ながら試行錯誤でやってみました。
 まず、八頭のようなゴツゴツしたこんにゃく芋の皮をざっと剥いて、水を張ったボウルの中に摺りおろします。生のこんにゃく芋には有毒の成分があって、素肌に触れると痺れるような強い刺激があります。そのため皆手袋をして慎重な作業です。摺りおろしたこんにゃく芋をこんどは練ってゆきます。だんだん粘りが出てきて重みが増してゆくので、一人でやると大変な重労働なのですが、ここは皆で交代しながら練りました。ある程度の堅さまでいったところで、凝固剤をぬるま湯に溶いて加えます。凝固剤は水酸化カルシウムなのですが、こんにゃく芋と一緒に届くのは、帆立の貝殻を焼いて粉にした貝殻焼成カルシウム。 薬品ではなく自然の素材です。摺りおろしたこんにゃく芋は淡いピンク色で、洋梨のような香りがしていましたが、凝固剤を入れるとその色はアッという間に薄い緑色に変わりました。
0221konnyaku2_2 ここからラストスパートで強く練り上げて再びしっかりとした粘りが出てきたら成形します。しばらく置いてから切って茹でて水に晒して出来上がりです。

 作業のあとは、これも大きなお楽しみ。宴です。腕の筋肉にほのかな火照りを感じる力仕事のあとのビールはたまりません。ニュー信州店主の榎 慎一さんの発声で乾杯。お振る舞いの肴は「豚肉の味噌漬焼き」と「味噌汁」です。味噌はもちろん手前味噌。そして出来上がったばかりの「こんにゃくの田楽」。市販のこんにゃくとは違って柔らかく味がしっかり感じられます。調味料の味が染み込みやすい食感ですから、おでんや鍋物、煮ものにとても合うでしょう。手前味噌との相性も抜群なので、これはクセになりそうです。

 時間に少し余裕のある朝、昆布や鰹節、煮干しでしっかり出汁をとって手前味噌のお味噌汁を作り、炊きたてのごはんを頂くと、なぜかとても充実した気持ちになるものです。ぜひ一家に一瓶手前味噌を。
 『手前味噌仕込みの会』は年に一回だけの開催ですが、ご興味ある方ぜひお気軽にご参加・お問い合わせ下さい。


おめでとう![BCXSY]、田中清八さん

2011年02月11日 06時57分11秒 | 手しごと

 旧一月九日。立春。今年は2月4日でしたが、まだまだ寒い日が続いているとは言え、確実に春の気配を感じることができるようになってきました。澄み切った冬晴れの青空に雲が増えたり、霞がかかったり、雪や雨の日があったり、もうそれだけで春なのです。東の空が白んでくるのは早くなり、日没も気がつけば随分遅くなってきました。春の気が少しずつ強くなって行くこの季節は、なかなか良いものだと思います。

 嬉しいお話が届きましたので、ここでご紹介したいと思います。このblog【“暮らしのリズム”的できごと】で何度かご紹介している建具・指物の伝統工芸師、田中清八さんの奥様から十日ほど前にお電話を頂きました。お話を要約すると・・・
 昨年(2010年)
、オランダをベースに活動するイスラエル出身のBoaz Cohenさんと山本紗弥加さんによるアーティスト・ユニット『BCXSY』と清八さんが共同制作で素晴らしい作品を創りました(その模様は0630bcxsy [Origin part I : join]と題されたこの作品は、斬新でありながらも自然を感じさせるデザインと、日本の伝統的な建具の美しさが見事に結びついています。和の空間でも洋の空間にも暮らしにフィットするインテリアであり芸術作品です。この作品がUKの雑誌Wallpaper*のDesign Award 2011で、Best domestic design部門の[Best screen]に選ばれた。ということでした。
 これは素晴らしい出来事です。作品が完成した後、ミラノでの展示に出品した、というところまでは知っていましたが、多くの人に伝わり、いい出会いがあったのだなと思いました。優れた芸術作品は、たくさんの人に知ってもらうことで価値が高まってゆくものだと思っています。
Boazさん・紗弥加さんの意欲的な活動と作品を伝えたいという熱意が今回の受賞に繋がったのでしょう。お二人には敬意を表したいです。おめでとうございます。
 清八さんの奥様は「BCXSYとの共同制作がとても有意義なものだったので、日本にもこの作品を残しておきたい」とお話されていました。もちろん受注がなければ作品作りも難しいです。理想を言えば、いろいろな人の目に触れることができる空間で普遍的に展示あるいは活用がされる場が、
[Origin part I : join]に相応しいかな、と思います。この日本で、たくさんの人に伝えてゆくために“暮らしのリズム”では何ができるのか、思いを巡らせています。

 山本
紗弥加さんからのメールによると[Origin part I : join]は日本の雑誌『Casa Brutus』2011年1月号でも掲載されているとのことです。

 そしてもう一つ嬉しいお知らせ。[Brit Insurance Design Award 2011]のFurniture Categoryにおいてノミネート作品にリストアップされました。
[Origin part I : join]は2011年2月17日から8月7日まで、ロンドンのDESIGN MUSEUMにて展示されるとのことです。

田中清八さんに関してはこちらもぜひご覧下さい。
2010年6月30日建具職人・田中 清八さんとBCXSYの共同制作

2008年2月20日『伝統工芸、指物 師・田中清八さんを再び訪ねて』

2007年 6月17日『職 人技に触れる。指物師・田中清八さんとの再会』
2006年7月2日『指物建具工芸 師、田中清八さんを訪ねる』


旧正月は春の予感

2011年02月03日 22時22分25秒 | 主催する催し

 旧正月朔。今日は旧暦の元日です。
あらためまして、あけましておめでとうございます。
 旧正月というと、テレビなどでは中国の春節ばかりが取り上げられ、日本人からすると、ちょっと縁遠い印象ですが、旧暦の時代(明治初期まで)はこれが当たり前のお正月でした。沖縄や奄美では、今もなお旧暦の風習が色濃いので、今日はご馳走をお重に詰めて、盛大な新年のお祝いを行っていることでしょう。わたしは新暦のお正月に漂う世の中の雰囲気があまり好きではないので、この静かな旧正月は背筋が伸びて、気が引き締まります。
 そしてもうひとつ。今日は節分です。立春・立夏・立秋・立冬の前日が節分ですから、年に4回あるのですが、やはり今日の節分が大きな節目という意味で、重要です。大晦日のような節分と、旧正月が同じ日、というのはちょっと不思議な気分になりますが、こんな暦の巡り合わせも珍しいことです。豆を撒いて、お屠蘇を楽しむ夜としましょう。

 寒中最後の日の今日は、麗らかな春のような陽気でした。
0203sumidagawa日中は陽射しの暖かさを感じることが出来ました。青空も、ついこの間の冬晴れとはずいぶんと違った、少し霞んだような感じです。霧島連山の新燃岳が激しく噴火し、火山灰を飛ばしている影響もあるのでしょうか。夕焼けがとても赤く、長く続いていました。美しい夕焼けを見せてくれる一方で、被災地では大変なご不自由と不安が続いています。心からお見舞い申し上げます。(写真左は佃大橋から西方向を望んだ旧正月・節分の夕景です)

 陽射しの暖かい植え込みに植えられている「まんさく」の花が少しずつ開き始めました。
0203mansakuこのblogでも昨年ほぼ同じ時期に写真と共にご紹介しました(詳しくはこちらをご覧ください)が、今年は雨が極端に少ないようで、黄色い花びらも乾燥気味に見えてしまいます。まるで錦糸卵のようです。先ず咲くから転じて「まんさく」。春の花が一つずつ開く時期になりました。楽しみな季節の始まりです。