"暮らしのリズム"的できごと

先人が培った暮らしの知恵を通じて今を楽しむ【暮らしのリズム】のブログ。旧暦、落語、音楽、工芸品、食、民俗芸能などをご紹介

青じそ二株の小さな畑

2008年06月04日 19時34分11秒 | 日々のことなど

 旧五月朔日。明日は二十四節気の【芒種(ぼうしゅ)】です。

芒ある穀物、稼種するときなればなり
        『暦便覧』(天明八年/1788年出版)

 5月の下旬からなんとなく天気がぐずつき気味でしたが、6/2(月)に近畿・東海・関東甲信地方が一気に梅雨入りしてしまいました。関東甲信では平年より六日、昨年より二十日も早い梅雨入りです。じめじめと鬱陶しい季節ですが、この時期の雨がなければ穀物も育ちません。食料品の高騰が何かと話題になるこの頃、せめて日本の美味しいお米は丈夫に育って、美味しく味わいたいものですね。

 食料品の値上げが家計を圧迫している影響もあるのでしょうか、家庭菜園の静かなブームが来ているそうです。野菜作りのガイドブックが結構売れているそうで、ホームセンターなどでも用土や野菜の苗、種が人気商品になっているとのことです。野菜を育てる苦労を実際に体験し、それだけに収穫の喜びや新鮮な野菜の瑞々しさを感じることができるので、とても良いことだと思います。
 私も3年前に都会に引っ越して来るまでは、郊外で猫の額ほどの庭をほとんど菜園にしていました。3本の苗で一夏に100本のゴーヤを収穫することにトライしたり、イタリアから取り寄せた種でトマトを育てソースにしたり、育てた野菜は15種類ほど、エスカレートして生ゴミから堆肥を作ったりするほど熱を入れていました。何より今懐かしく思うのはその時に嗅いでいた土の匂いですね。

0604shiso_2  そんな想いがムラムラしてきたのか、スーパーで買う青じその風味に物足りなさを感じていたのか、ふと思い立って玄関先に青じその苗を二株植えました。ホームセンターで苗を(一株198円なり)、土は少量で良いからと100円ショップで培養土と腐葉土を一つずつ買い植え付けます。野菜にはちょっと渋い信楽焼の小さな植木鉢に手で土を混ぜ苗を植えていると、土の良い香りがしてきます。

 写真は植え付け済んで早一週間。鉢にしっかり根付いたのでしょう。青々とした葉っぱが育って来ています。冷や奴、味噌汁、納豆、卵焼き、素麺、パスタ、サラダ・・・。この夏は新鮮な青じそが大活躍してくれそうです。あとは茗荷、う~んこれは無理だなぁ。お店で買った茗荷を有り難く頂きましょう。


ぬか漬けとの美味しい暮らし

2008年04月04日 20時43分36秒 | 日々のことなど

 旧二月二十八日。今日は二十四節気の【清明(せいめい)】です。

万物発して清浄明潔なれば、此芽は何の草としれる也。
             
『暦便覧』(天明八年/1788年出版)

 桜も満開、春爛漫の頃になりました。お花見はしましたか。0404kaidou2 咲き始めてから少し寒さが戻ったため、今年の桜は長く楽しめましたね。見頃は桜ばりではありません。此の時期桃色の愛らしい花を咲かせる“海堂(カイドウ)”です。人の目の高さほどのところに花をつけるので、庭木などによく見られますが、この海堂が桜に負けじとばかりに、咲き誇っています。(写真は今朝、佃の住吉神社近くに咲いていた海堂です)

 春になると野菜も美味しくなってきます。毎年この時期になると、自分でぬか床をつくってみようかな、と思うのですが、0404nukaduke2 毎日の手入れが大変だから、と躊躇していました。そんな頃、鎌倉のとある居酒屋で〆に食べた「古漬けの茶漬け」に完全にやられてしまいました。大根の皮とかぶの葉をぬか床でうぐいす色になるまで漬け込み刻んだ古漬けが、なんとも言えぬ滋味に満ちていて感動的でした。この瞬間、やっぱりぬか床を作ろう、と思いを強くしました。
 その後とてもタイミングよく雑誌『サライ』2/7号で「ぬかみそ漬け入門」という特集が組まれ、冷蔵庫でも管理できる専用容器が紹介されていたので、早速買い求め“手前ぬか床”を始めました。
(写真:やっぱり定番は胡瓜、茄子、蕪、人参、大根。左端は大根の皮と辛味大根の葉っぱ。これは古漬けにします)

0404nukadoko  ぬか床を作るのには、まず糠を買わなければ、と月島の商店街にあるお米屋さんを訪ねました。このお米屋さんでは、大きな手前ぬか床があって、美味しいぬか漬けも売っています。ご主人によると「生ぬかからやるのは難しいから、うちのぬか床を売ってあげますよ。入れ物を貸してごらん」と買ってきたばかりの容器を持ってお店の裏に。すっかり熟れているぬか床を容器の1/3くらいまで詰めてくれました。
(分けてもらったぬか床には昆布がたくさん入っていました)
0404nukaduke1  理想のぬか漬けを食べられるまでにひと月位を覚悟していたので、ちょっと拍子抜けしてしてしまいましたが、ここはご好意に甘えてずるさせていただくことにして、早速漬けています。ん~~~美味しい!毎朝ぬか床をかき回し、翌日食べる予定の野菜を漬け込む。なかなか楽しい仕事であります。


ぬか漬け専用の琺瑯容器「ぬか漬け美人」は手前味噌の保存容器でも活躍している国産琺瑯メーカーの老舗野田琺瑯の製品です。
野田琺瑯のホームページをぜひご覧ください。


“きままにフロムヨーロッパ”

2006年04月13日 10時35分53秒 | 日々のことなど

 旧三月十六日。気圧の谷が短い周期で日本列島を通り過ぎてゆきます。菜種梅雨という天気でこのところすっきりとした青空を臨むことができません。しばらく月も姿を現していませんが明日は満月です。

0413fromeuro 一冊の本とその著者、木立玲子さんをご紹介しましょう。長年パリに住んでジャーナリストとして活躍していた彼女の近著『きままにフロムヨーロッパ』です。基準点をグローバル・スタンダードに置かず柔軟に地球の音楽を紹介し続ける雑誌『ラティーナ』に連載されていた記事の単行本化で、2年ほど前に出版されました。政治、民族、テロ、戦争、核などの社会事情が、音楽やアート、シネマといったエンタテインメントを通じてスムーズに伝わってくる内容です。

 彼女とはかれこれ15年ほど前に仕事を通じて知り合い、以来彼女の文章を読むたびに刺激を受け、羨望のまなざしを送っていました。【暮らしのリズム】の原型と言えるようなものがようやく見えてきた三年ほど前、パリへ戻る彼女に同行して成田空港まで押しかけ、午前中の日差しが眩しいカフェでゆっくりお話しをする機会に恵まれたのです。日本の民謡のこと、民俗芸能のこと、祭りのことなど、意外なほど熱い想いが伝わってきました。以来帰国のたびに超ご多忙な彼女のスケジュールの隙をついて、お目にかかり、情報交換とは恐れ多く、いつも励まされっぱなしです。「パリから日本を見ていて、いつもじれったく思う伝統芸能の状況をなんとか変えていきましょうねっ!」といった調子です。

 いつも元気で活力が溢れていた木立さんが3月9日にパリの病院でがんのため亡くなりました。シビアな病気と闘っていたことが信じられないほどバイタリティに溢れた活動を続けてきた彼女には下げる頭が足りないくらいです。

 最後の日本滞在となった2005年6月。離日前夜の彼女と数人の友人と一献傾けたのが、何かにつけてお世話になる『居酒屋ニュー信州
でした。「やっぱり日本にいるときはこういうのが食べたいのよね」とお刺身や天ぷら、季節の味覚に舌鼓を打つ彼女の姿が忘れられません。

個人的な想いが強かったのでこのblogで紹介するのは迷っていたのですが、がんと闘う一人でも多くの人に彼女の勇気が伝わって欲しいと思い、アップしました。


文化財指定のニュース

2006年01月21日 12時20分54秒 | 日々のことなど

 旧十二月二十二日。昨日は二十四節気の【大寒】でした。

冷えゆることの至りて甚だしきときなればなり
天明八年(1788年)出版の『暦便覧』より

 この冬は十二月の初旬から厳しい寒さが続いているため、この時期が寒さのピーク、と言われてもどうもピンと来ませんね。まだもうしばらく寒さが続くそうです。大雪に悩まされている地方の皆様には重ね重ねお見舞い申し上げます。

 今朝の新聞報道に文化財指定のニュースがありました。これは文化審議会が検討して文部科学大臣に、この文化財を指定してくださいと答申するものです。特に重要なもの、建造物などの重要有形文化財が1件、民俗芸能や風習などの重要無形民俗文化財が9件、新たに指定されました。今回の指定で大変興味深いのは、昨年4月に改正された文化財保護法で「民俗技術」が保護対象として追加され、初めて指定されたことです。その3件が以下の伝統技術です。

  • 津軽海峡及び周辺地域における和船製作技術(津軽海峡周辺地域)
  • 上総掘りの技術(千葉県上総地方)
  • 別府明礬(みょうばん)温泉の湯の花製造技術(大分県別府市)

 継承される地域の近くで暮らしていても、あるいはこのような伝統技術に興味を持っても、なかなか実態をつかむことができなかったのですが、このように“冠”がつくと、日本の素晴らしさが少しずつ見えてくるものですね。更新頻度が少し遅いのですが、ご興味ある方は文化庁が公開している国指定文化財等データベースをご覧下さい。旅先の文化財を下調べしたりするのに便利だと思いますよ。

因みに、その他に重要無形民俗文化財は
黒森神楽(岩手県宮古市)
月浜のえんずのわり(宮城県東松島市)
上総掘りの技術(千葉県上総地方)
下平井の鳳凰の舞(東京都日の出町)
犬山祭の車山行事(愛知県犬山市)
亀崎潮干祭の山車行事(愛知県半田市)
東光寺の鬼会(兵庫県加西市)

重要有形民俗文化財は
糸魚川木地屋の製作用具と製品コレクション(新潟県糸魚川市)
でした。
 


もうカレンダーを買いましたか?

2005年11月07日 12時18分34秒 | 日々のことなど

 旧十月六日。二十四節気の“立冬”です。秋の嵐をもたらした低気圧が足早に通り抜けて、東京では雲一つ無い秋晴れの空が広がっています。低気圧に向かって吹き返す南風の影響で、暖かい冬の始まりの日になりそうです。

 街のショウ・ウィンドウは、ハロウィンが終わるとオレンジ色から、一気にクリスマス・カラーの赤と緑に変わってゆきます。自然の微妙な移ろいが感じさせてくれる季節感よりも、人間によって演出された季節感がずいぶんと先走っているようで、師走へと向かうこの時期は、特に慌ただしさが増してゆくものですね。そんな気分にさせられる一つが、カレンダーです。書店や文具店では、来年の手帳とカレンダー・フェアが真っ盛りです。どちらかというとのんびりしている私は、年が新しくなってから、店頭の少ない選択肢から適当なものを選ぶことが多く、数年前には半額のカレンダーを買って、あたま2枚は過去のもので破ってから使い始める程でした。

11-7calender3 昨年のこと、ちょっと目を引いたカレンダーがあり、ちょうど今頃の時期だったでしょうか買ったものがあります。まだ50日ほどありますが、今年ずいぶんお世話になりました。『月と波のカレンダー』というカレンダーです。11-7calender1月の形が表示されているカレンダーは良く見ますが、写真にあるとおり、潮位も表示されていて自然のリズムがより手に取るように感じられるのです。住んでいる月島のは東京湾の運河に囲まれているため、干満はもちろん大潮・小潮の様子もカレンダーとリンクしていてとても面白いのです。釣りの趣味があればもっと活用することが出来たかもしれませんね。
11-7calender2 カレンダーには他にも旧暦の日付、日の出日の入り時刻、二十四節気などが表示してあり、このブログをアップする際にもとても役に立ちました。来年もお世話になろうか思っています。とぼちぼち人混みのカレンダー・コーナーに足を踏み入れてみようかな、と思うこの頃です。

『月と波のカレンダー』を発行しているのは東京国際フォーラムにあるアートショップ【graphic station】です。