"暮らしのリズム"的できごと

先人が培った暮らしの知恵を通じて今を楽しむ【暮らしのリズム】のブログ。旧暦、落語、音楽、工芸品、食、民俗芸能などをご紹介

紅葉の古都鎌倉を散策

2005年11月30日 22時57分44秒 | まち歩き

 旧十月二十九日。『天気上謄し、地気下降す』。太陽の動きを元に季節を表す二十四節気を、さらに細かく三等分した七十二候というのがあります。新暦の11月27日から12月1日頃にあたるのがこの言葉です。天と地の気が逆になる、つまり暑さ寒さが逆になり、本格的に寒さが厳しくなる、という意味です。東京ではポカポカした小春日和が続いていましたが、それも昨日まで。いよいよ寒さが身にしみるようになってきましたね。

 少し前のことになりますが、この前の土曜日(11/26)に鎌倉へ行ってきました。紅葉のピーク、土曜日ということもあって、大変な賑わいでした。横須賀線の北鎌倉駅から鎌倉街道を歩き鎌倉駅まで向かおうかという計画。人混みを避けて小さなお寺をいくつか訪ねてみました。空は晴れているのだけれども霞がかかったような模様。陽の光も優しく、初冬の鎌倉にはこういう陽光がとても似合っているように感じます。
11-30jouchiji 最初に訪れたのは北鎌倉の踏切にほど近い【浄智寺】。開山伝や寺史はガイドブックに譲るとして、感じたままの雰囲気をお伝えしましょう。背後に低い山を控える谷戸の地形ですが、明るい雰囲気で圧迫感はありません。むしろそこだけぽっかりと空が広がり、気持ちの良い空間です。梵鐘がある楼門、仏殿の曇華殿(どんげでん)、茅葺きの曲屋のような客殿。と質素でかわいらしい建物があります。ビャクシンの大木の前にあるベンチに座ると、気持ちがよいです。
(花頭窓が印象的な浄智寺の楼門です↑)
11-30genjiyama 日曜日の原宿のような人混みの小町通りを抜けて一旦鎌倉駅へ。駅の西側に出て坂道を上り【銭洗弁財天社】へ。ここは鎌倉を代表する人気スポットの一つ。さすがに賑わっていますね。あやかりましょうと竹で編んだ笊にお金を入れて、柄杓で銭洗水を掛けます。背後の山頂上、源氏山公園は標高が100メートルほど。冷たい風も吹き抜けるのでしょう、紅葉が見事です。
(↑紅葉、銀杏、常緑広葉樹が豊かに彩る)
11-30kaizouji 【化粧坂(けわいざか)切通し】から細い谷戸を抜けて今度は【海蔵寺】を訪ねました。ここは雰囲気のある素敵なお寺です。風光明媚な景勝の広く明るい谷戸に、山門、仏殿、本堂がほどよい距離を保って建っています。本堂の裏手には四季折々の植栽が配された素敵な庭園が広がります。凛とした空気が漂いリラックスしながらも、すがすがしい気分にさせられるお寺でした。また違う季節に訪れてみたいものです。

 今日は単なる観光レポートのようになってしまいました。都心で暮らすようになると、こういう場所をリラックスして歩くことが、かげがいのない時間になることがよくわかります。気の置けない人と一緒であれば、なおのことかもしれませんね。いかがでしょうか。


“小雪”です

2005年11月22日 15時53分35秒 | 季節のおはなし

 旧十月二十一日。二十四節気の【小雪(しょうせつ)】です。

◆小雪◆寒さもまだ厳しくなく、雪まだ大ならずの意味である。市街にはまだ本格的な降雪はないものの、遠い山嶺の頂きには白銀の雪が眺められ、冬の到来を目前に感じさせられる。北風が木の葉を吹き飛ばし、みかんが黄ばみ始める。(「現代こよみ読み解き事典」より)

 北海道や東北、上信越あたりからは、平地の町にも初雪が降ったという便りが届き始めています。11-22karasuuriいよいよ本格的な冬です。「みかんが黄ばみ始める頃」とありますが、今の世の中はハウスみかんや品種改良した早生種のみかんが主流で、青く酸っぱいみかんが店頭に並ぶ時期が、ほんの一時期になってしまいましたね。

 里山の雑木林では、コナラやミズナラ、クヌギといったドングリの木々が葉を落とし、見通しの良くなった幹に朱色の烏瓜が絡まるのを見つけることができる季節です。色彩がなくなる野山にアクセントのような存在感の烏瓜が、子供の頃からなぜか好きでした。都心にいる今でも、この季節ならではの風景だなぁと、懐かしく思い出します。


都会の紅葉&北斎はスゴイ

2005年11月18日 23時57分25秒 | 季節のおはなし

 旧十月十七日。満月を二日過ぎました。東京ではこのところ初冬らしい晴天が続いています。都会の空でも夜は星をたくさん見つけることができますね。都会の明かりを反射する薄雲やスモッグが季節風に飛ばされてしまったのでしょうか。月は白く明るく、こういう晩は冷え込みます。

11-18kouyou1 遅れていた都会の木々も、本格的に色づいてきました。月島の拙宅前には鉢植えのブナの木が置いてあります。ブナといえば、標高500メートル以上の深い山で育つ落葉広葉樹。長年蓄積した落ち葉が雨水や雪解け水を保水し、時間を掛けて濾過し美味しい水にしてくれる、自然界にとって大切な木です。この鉢植えは、ちょうど10年前の今頃、岩手県の奥羽山脈にある秘湯、夏油(げとう)温泉近くで、樹齢300年クラスの大樹が落とした実を拾い、プランターに植え発芽した木です。昼夜の気温差が少ない都会ではなかなか綺麗に色づかないのですが、ここ数日の冷え込みのお陰で、うっすら黄色くなってきました。やがて葉を落とし、春はまた瑞々しい新緑を見せてくれます。その姿は春のお楽しみに。

11-18hokusai1 さて、本日は上野のお山、国立博物館『北斎展』を観に行ってきました。芸術のことを迂闊に語るとボロが出るため止めておきますが、見応えのある、なぜか楽しい気分になる展示でした。特に江戸時代の庶民の暮らしぶりを描いた作品が興味深いです。そこに描かれている人々の視線、表情、仕草に釘付けになってしまいました。江戸時代末期に90年の生涯、プロのアーティストとして70年のキャリア。北斎の人生そのものといった感じの展示です。これほどの作品が集結するのは1901年の展覧会以来とのこと。12/4までの開催ですので、ぜひお見逃しないように。
(↑看板が切れてしまいましたが国立博物館の前庭です)


早池峰大償神楽にまたしてもうっとり

2005年11月14日 16時51分39秒 | 芸能の催しごと

 旧十月十三日。今日の東京はどんよりとした曇り空ですが、月がずいぶんと丸くなってきました。明後日が満月です。このblogを始めるようになって、以前にも増して月の姿を意識するようになりました。ちょっと先に予定している心躍るイベントを、その日の月の形で覚えておくと、毎日空に浮かぶ月の姿がとても気になるものです。これはなかなか風情があって良いものですね。でも新月の頃は見失ってしまうかもしれないので気をつけましょう。
11-14hayachine1 
 先週の木曜日秋晴れの11月10日、千駄ヶ谷にある国立能楽堂で早池峰大償(おおつぐない)神楽の公演があり、観に行ってきました。今回の東京公演は、歴史的関連性がたいへん高いとされる能と神楽の関わりを探ろうという企画公演です。本公演は金曜日で、能の演目「道成寺」の原曲で廃絶している「鐘巻」を復曲させ、大償神楽の女舞「鐘巻」と同じ舞台で上演しようという試み。残念ながらこの本公演は観ることができなかったのですが、それに先立つ大償神楽の公演をじっくり楽しむことが出来ました。

 早池峰神楽はこのblogの『民俗芸能は心を洗う~岩手より』でも少しご紹介しましたが、岩手県の霊峰早池峰山山麓に伝わる修験山伏伝来の神楽です。11-14hayachine2二つの神楽座、『岳神楽』と『大償神楽』を総称して早池峰神楽といいます。勇壮な荒舞の岳と、優艶な女舞の大償という具合に、表裏一体を成しているそうです。そんな大償神楽にあって女舞の名手である佐々木隆さんの式舞「山神(やまのかみ)舞」は見事でありました。力強さと神秘性、神事としてのカリスマ性を併せ持ち、なおかつ流れるようにしなやかな身のこなしは美しく、たいへんんに印象深い舞でした。
(↑大償神楽の「山神舞」。写真は大迫町発行のブックレットより)

 今回の公演はたまたま地方紙「岩手日報」の記事をネットでも見つけたもので、平日の昼間ながらチケットは完売。大変熱心な愛好家が集まっていたように見受けられました。プロのエンタテインメントではないため、いろいろなバランスを考慮しなければならないのでしょうけれども、もっとたくさんの人が気軽に観られる環境になって欲しいと願うものであります。本当に綺麗なのです。

◆早池峰神楽舞台公演
 大償神楽 平成18年1月28日(土)
 岳神楽  平成18年1月29日(日)
 いずれも13時開演 全席自由各公演500円
 岩手県・花巻市文化会館大ホール(問)0198-24-6511


もうカレンダーを買いましたか?

2005年11月07日 12時18分34秒 | 日々のことなど

 旧十月六日。二十四節気の“立冬”です。秋の嵐をもたらした低気圧が足早に通り抜けて、東京では雲一つ無い秋晴れの空が広がっています。低気圧に向かって吹き返す南風の影響で、暖かい冬の始まりの日になりそうです。

 街のショウ・ウィンドウは、ハロウィンが終わるとオレンジ色から、一気にクリスマス・カラーの赤と緑に変わってゆきます。自然の微妙な移ろいが感じさせてくれる季節感よりも、人間によって演出された季節感がずいぶんと先走っているようで、師走へと向かうこの時期は、特に慌ただしさが増してゆくものですね。そんな気分にさせられる一つが、カレンダーです。書店や文具店では、来年の手帳とカレンダー・フェアが真っ盛りです。どちらかというとのんびりしている私は、年が新しくなってから、店頭の少ない選択肢から適当なものを選ぶことが多く、数年前には半額のカレンダーを買って、あたま2枚は過去のもので破ってから使い始める程でした。

11-7calender3 昨年のこと、ちょっと目を引いたカレンダーがあり、ちょうど今頃の時期だったでしょうか買ったものがあります。まだ50日ほどありますが、今年ずいぶんお世話になりました。『月と波のカレンダー』というカレンダーです。11-7calender1月の形が表示されているカレンダーは良く見ますが、写真にあるとおり、潮位も表示されていて自然のリズムがより手に取るように感じられるのです。住んでいる月島のは東京湾の運河に囲まれているため、干満はもちろん大潮・小潮の様子もカレンダーとリンクしていてとても面白いのです。釣りの趣味があればもっと活用することが出来たかもしれませんね。
11-7calender2 カレンダーには他にも旧暦の日付、日の出日の入り時刻、二十四節気などが表示してあり、このブログをアップする際にもとても役に立ちました。来年もお世話になろうか思っています。とぼちぼち人混みのカレンダー・コーナーに足を踏み入れてみようかな、と思うこの頃です。

『月と波のカレンダー』を発行しているのは東京国際フォーラムにあるアートショップ【graphic station】です。