"暮らしのリズム"的できごと

先人が培った暮らしの知恵を通じて今を楽しむ【暮らしのリズム】のブログ。旧暦、落語、音楽、工芸品、食、民俗芸能などをご紹介

“端午節に粽”の深い話

2009年05月28日 12時28分27秒 | 季節のおはなし

 旧五月五日。日本では五節句の一つ『端午の節句です。そして中国では『端午節』。去年から正式に国の法定祝祭日となったそうで、今日はお休みです。
 日本の五節句は“人日(一月七日)、上巳(三月三日)、端午(五月五日)、七夕(七月七日)・重陽(九月九日)”。日本と中国の風習が混合して江戸時代に出来上がった風習です。端午の節句は、その中でも唯一祝日「こどもの日」として今の暦で祝われていますね。思い浮かぶものとしては、男の子の成長を祈念する風習として「鯉のぼり」「五月人形」「柏餅」「菖蒲湯」「沖縄のハーリー(糸満ではハーレー)」。それぞれに意味深い風習が込められています。
 一方中国の端午節は紀元前3世紀、愛国詩人の屈原の命日がその起源ですから、
0528yomogiとんでもなく長い歴史があるのですね。祖国楚の国を追放され、その間に秦の国に攻め込まれてしまい祖国が滅んでしまったことを悲観した屈原が汨羅江という大河に身を投げたのだそうです。それを悲しんだ農民は竹筒に餅米をつめて河に投げ入れ、屈原が空腹にならぬように、あるいは魚が屈原の亡骸を喰わぬようにしたのが粽のルーツ。遺体を探すために手漕ぎの舟で一斉に河にこぎ出したのが龍舟、ドラゴンボートのルーツだそうです。
 端午節の数日くらい前から、街では草の束を持って歩く人を良く目にするようになります(上の写真は市場で売られているもの)。
0528zhujiajiaoこれは主に菖蒲と蓬の葉の束です。農暦五月の初めは夏の始まりの頃。 蚊や蠅が飛び始める頃です。香りの強い菖蒲や蓬の葉を戸口に吊るす風習は虫や病を寄せ付けないようにするためのものなのでしょう。菖蒲の葉は劔にも見えるので、魔除けにもなるのだそうです。
 粽も今では家で作るより、買って来る人の方が都会では多いそうですが、ご年配の方は、一日がかりでたくさんの粽を作って、
身内や近所に配ったりしています。上手に包むのには熟練した経験と技術が必要で簡単には出来ないそうですが、やはり手作りが美味しいですね。0528zong 独特な爽やかな香りのする粽、特に肉と塩卵の黄身が入っている大肉蛋黄粽が大好きで、郊外に行ったりすると良く買ってきます写真上は、郊外の水郷の村「朱家角」での一こま。このようにあちこちで粽を作って売っています。そして写真下は、仕事の同僚が作って来てくれた粽。紐がぐるぐる巻きなのが肉粽で、一カ所に紐を巻いたのが小豆の粽。どちらもたいへん美味でありました。粽作りワークショップがあれば、ぜひ参加してみたいですね。


『手前味噌仕込みの会』ギャラリー

2009年05月22日 21時31分01秒 | 主催する催し

 旧四月二十八日。二十四節気の【小満(しょうまん)】を一日過ぎました。 

万物盈満(えいまん)すれば草木枝葉繁る
            『暦便覧』(天明八年/1788年出版)

 三ヶ月の上海滞在が過ぎ、二週間の一時帰国も矢のごとし。ふたたび上海に降り立ちました。確かにこの二週間で、公園や道ばたの木の葉が少し鬱蒼としたように感じます。そして明らかに強さを増した日差し。木々の緑がその強烈な太陽をしっかりと受け止め、地表に涼をもたらせてくれているようです。梅雨入り前、にわかな盛夏を感じさせるこの頃です。

 

 『手前味噌仕込みの会』から二週間。0522yosemoji_2瓶の中ではこの夏の陽気に促されて麹菌が活発に暴れていることでしょう。会の模様の写真をスタッフでもあるmizunoクンから貰っていたのですが、日本滞在中は落ち着いてパソコンの前に座る時間もあまりなく、上海の夜景でも眺めながらのんびりとアップします。今年ご参加できなかった方、またご興味をお持ちの方にはぜひご覧頂きたいです。見ての通り、初めてでも簡単ですので、ぜひ来年はご参加ください。(写真右の文字は、残念ながら当日ご参加できなかったKさんが書いて来て下さった寄席文字です)

 写真左は仕込みの作業です。左上から時計回りに。0522shikomiまずは塩と玄米こうじをよ~く混ぜ合わせます。こうじは塊があるのでここは大胆かつ丁寧に手のひらでもみ合わせるようにします/続いて茹で上がった大豆を潰して行きます。ステンレスのボウルに入れてポテトマッシャーでの力仕事。厚手のビニール袋に入れてビール瓶で潰すという新手のソリューションを今年は開発に成功しました/潰した大豆の温度が人肌くらいに冷めたら、塩&こうじと一気に混ぜて行きます。茹で汁を少しずつ加えて、0522ofurumai仕上がり味噌の固さをイメージして/あとは各自の瓶に仕込んで終了。 乾杯から酒宴へと夜がふけて行きました。
 酒宴の始まり、乾杯のお振る舞いには写真右の二品がテーブルに。上は「地鶏のこうじ焼き」味噌の風味がしっかりしみ込んだ鶏肉をじっくりジューシーに焼き上げてあります。この味わいは日本ならではですね。そして下の左が「山うど」、右は「うるいの酢みそ和え」。味噌はもちろん手前味噌です。

 今回は味噌仕込みだけではなくもう一つ趣向がありました。青森・奥津軽から届いた天然のわさびを使ってわさび漬けを作ります。
0522wasabiわさびは栽培ものに比べて小さいけれども固く凝縮されているようです。茎と根を刻んで塩でもみ、ざるに上げて熱湯を回しかけます。一瞬水に晒して水気を素早く切り、密封瓶へ投入。このまま30分。辛み成分が気化して瓶の中に充満します。これに鼻を近づけたら失神するほど強烈な刺激に襲われます。鮨のキツいわさびの刺激を100倍くらいにした感じでしょうか。この辛みがピークに達しているわさびを、米焼酎で柔らかく延ばして砂糖と塩で味を整えた酒粕に混ぜて出来上がり。ちりめんじゃこやかまぼこには欠かせません。日本の朝食の名脇役ですね。手前味噌の味噌汁がますます引き立ちますよ。


【手前味噌仕込みの会】無事終了

2009年05月10日 13時37分25秒 | 主催する催し

 旧四月十六日。昨夜は明るい満月の夜。そして【立夏】(5月5日)から五日。初夏らしく眩しい陽気になってきました。
 今年で四回目の開催となりました“暮らしのリズム”と“居酒屋ニュー信州”の共催イベント【手前味噌仕込みの会】を昨日(5月9日土曜日)行いました。例年以上にたくさんの皆さんにご参加頂きまして、厚く御礼を申し上げます。そして今年は初めて参加された方が全参加者の半分以上、15名ということで、賑やかで楽しい会になりました。
 
手前味噌仕込みの会】では、メンバーの皆さんがそれぞれ一升の瓶を持っています。大豆を煮て潰し、こうじと塩と混ぜて2kgの仕込み味噌を瓶に詰めて持ち帰ります。同じ条件で作った仕込み味噌は、熟成させる環境によって微妙に風味が異なるのは、手前味噌ならではの興味深い楽しみです。半年ほど熟成させ、秋にはメンバーの皆さんが少しずつ手前味噌を持ち寄って自慢し合う、文字通り【手前味噌自慢の会】も行います。
0510miso  今年の仕込み量は30升分。およそ60kg。材料は大豆18kg、こうじ13.5kg、塩が7.4kgです。前夜の24時に水に浸した大豆を13時間後の当日午後1時に煮始めます。大きな鍋四つに分けえて厨房のガスレンジをフル稼働させて2時間ほど。大豆を煮ている間に塩とこうじをよく混ぜ合わせておきます。居酒屋ニュー信州の座敷に大きなシートを敷いて、こうじのかたまりをほぐしながら塩をよく馴染ませてゆきます。0510daizu そして大豆が潰すのにはまだちょっと早く食べるのにはちょうど良くなった頃。恒例のつまみ食い。熱々の大豆をを醤油に漬けるだけ。これがたまりません。甘みと旨味がぎゅっと詰まったチーズのような風味です。煮汁も自然の甘みが程よく美味しいです。なかなか自宅では乾燥大豆を煮ることもありませんが、大豆そのものの奥深さには毎回目から鱗ものの驚きと感動があります。作業に戻りましょう。大豆が煮上がると、ここからが醍醐味。皆で一斉に潰します。ボウルに入れた大豆をポテトマッシャーで潰すのがオーソドックスなやり方ですが、今回は、ビニール袋に入れてビール瓶で押しつぶす方法をメンバーの一人が見出しました。これはいいです。効率よくきれいに潰せました。潰した大豆が人肌に冷めてたら、こうじ・塩と混ぜ合わせます。この時、仕上がりの味噌を想定して、程よい加減になるまで煮汁を加えて行きます。これで仕込み味噌が完成。あとは各自の瓶に仕込んで行きます。空気をしっかり抜いて、表面をきれいに均して塩を薄くふり、ラップを被せて重石を載せたら仕込みは完了。お疲れ様でした~。
 仕込み作業のあとはやっぱりこれ。乾杯・打ち上げ・酒宴。これも大事です。前日に青森・奥津軽から届いた山菜が彩りを添えます。お店のお振る舞いでテーブルに並んだのは「山うど、うるいと酢みそ」「地鶏のこうじ味噌漬け焼き」「筍とわかめの味噌汁」。程よい塩分と味噌の風味でお酒の呼び水になりました。肴のメニューにも山菜が盛りだくさんで、みちのくや新潟の遅い春、芽吹きの季節が目に浮かんできます。そこで奥津軽の葉わさびを使って、ニュー信州店主の榎慎一さんが、わさび漬けの実演を披露してくれました。佐渡の大吟醸酒粕を米焼酎で柔らかく延ばしておきます。葉わさびの茎と根は細かく刻んで塩揉みし、熱湯を一気に掛けて水で晒し、絞ったら密封の広口瓶に入れて30分置きます。こうすることでわさびのつ~んとくる刺激が凝縮されて出てくるのだそうです。その辛さは想像を絶するほど強烈。眠気も酔いも一気に醒めるほどです。わさびと酒粕を素早く混ぜたら出来上がりです。わさび漬けを作る過程はなかなかお目にかかることが出来ないので、これは貴重な体験でした。
 傾いた陽が残る時間にスタートした宴も気がつけば終電間際。満月の明るい夜空のもと、家路を急ぎました。メンバーの皆さん、ありがとうございました。また秋にお会いしましょう。

大豆は上野・アメ横にある『松葉屋商店
で仕入れました。今回は三代目の康介さんも仕込みに参加して下さいました。お店には様々な豆類や乾物が並んでいます。お近くに行かれた際にはぜひ訪れてみて下さい。今回の大豆は青森産「おおすず」という品種の2.6玉というサイズ。とってもリーズナブルで美味しい大豆です。

こうじは静岡にある『鈴木こうじ店』から取り寄せています。今回は玄米のこうじを使ってみました。白米のこうじより栄養価、食物繊維などが豊富になるのではないでしょうか。近年こうじの人気がとても高いようです。ご自宅で仕込む場合には、仕込むひと月前くらいに発注した方が良さそうです。


中国の農民画に魅せられて

2009年05月04日 01時01分08秒 | 手しごと

 旧四月十日。月も膨らんできました。そして、明日5月5日は二十四節気の【立夏】です。
 公園の花も、初夏の彩りとなってきました。

 

池の睡蓮も朝日を浴びて蕾が開きかけています。池の畔には黄色い菖蒲も咲いています。う~ん初夏ですね(写真左)。0504hana2syu_2もう一つは写真右の花。中国名では「双色錦帯」と言うのだそうです。ネットで調べてみると日本名は「オオベニウツギ」の一種。一色ではなく、白・ピンク・紅色と様々なトーンが賑やかで華やかなことから「カルナヴァル(カーニバル)」という名前もあります。あまり意識したことのなかった花ですが、緑も濃く鮮やかなので、とても花が映えます。
0426budcard さて、前回のblog『街バス乗りの楽しみ』でご紹介した上海市の公共交通カード。 私が使っているのは2009年新春バージョンで、かわいい牛の農民画がデザインされています。この中国の農民画をテーマにした施設というか村が上海市の郊外にあります。ちょうど日本から友人が来ていたので、あいにくの雨模様でしたが、中行ってみることにしました。
 上海の街中から地下鉄・バスを二本乗り継いで1時間半。目的の『中国農民画村
は水郷の古い村???』の近く、牧歌的な農地の中にあります0504nouminga_2。もともとこの地域に多く住んでいた農民画家を村に集めて、コテージのような建物で実際に暮らし、作品を制作し、自分の作品を展示・販売もしています。村には資料館や売店、上海以外の農民画も扱われています。ちょうど行ったときもそうだったのですが、小学生の遠足コースの定番なのでしょうか。大型バスで上海の都会からやってきた子供たちで賑わっていました。子供も楽しめるように、素朴な遊具も用意されています。(写真左上より時計回りに:これが村の入口。入場料は30元/作家が暮らしている家/資料館に展示された生活の道具。農民画から飛び出して来たようだ/交通カードの絵を描いた陳衛雄さんと龔彩娟さんご夫妻)

 中国の農民画
の画風は、もちろん画家の創造性によって様々です。0504nouminga1 共通する主な手法は、手漉き和紙のような黄色がかった紙に、水性のポスターカラーでストレートに農村のとても日常的な風景を描いてゆきます。中国でも今ではあまり見られなくなった、ちょっと昔の光景なのでしょうか。衣食住、農作業、農機具、生活の道具、収穫物、季節の移ろい、年中行事、労働力の家畜・・・。
 絵の中からはとてもゆったりとした活気のある時間が流れ“暮らしのリズム”が感じられます。それは少し前の日本でも流れていたリズムなのでしょう。

 今週半ばから二週間、一時的に日本に戻ります。5/9(土)は【手前味噌仕込みの会】楽しい時間はきっとあっという間に過ぎてしまうでしょう。三ヶ月ぶりの日本がこの目にどう映るのか、興味津々です。