"暮らしのリズム"的できごと

先人が培った暮らしの知恵を通じて今を楽しむ【暮らしのリズム】のブログ。旧暦、落語、音楽、工芸品、食、民俗芸能などをご紹介

ご来場深謝!【長唄三味線の会】

2010年02月21日 19時33分50秒 | 主催する催し

 旧一月八日。一昨日(1/19)は二十四節気の【雨水】でした。

陽気地上に発し、雪氷とけて雨水となればなり
            『暦便覧』(天明八年/1788年出版)

 立春過ぎても真冬のように寒い日が続き、東京でも雪が舞い降ることも多かったのですが、それもそろそろおしまいでしょうか。週明けからは少しずつ春らしい陽気になって来るそうです。天気予報で「三寒四温」という言葉を聞く頃になりました。

 昨日、2月20日土曜日。“暮らしのリズム”イベントとして初めての試み
0221ensou【長唄三味線の会~香り立つ早春の響き】を開催しました。念願叶って実現したライヴです。長唄松永流の三味線方、松永鉄九郎さんと、お弟子さんでもある女性三味線ユニット、スクイーズ☆ハジキーズの松永鉄駒さん・松永鉄六さんにご出演頂き、たくさんのお客様にお越し頂きました。どうもありがとうございます。

 一般的に長唄に触れることができるのは歌舞伎や日本舞踊、長唄の演奏会、という場面が多いのですが、あくまでも長唄を聴く、ということに限定されていて、
それ以上の情報を得ることはないものです。唄の内容、演奏法、聴かせどころ、楽器などなど、素朴な疑問やトリヴィアに満ちあふれているように感じていました。0221utaこの宵の会では、空を厚く支配していた雲に切れ間が出来て、青空が顔を出し始めたような気分になりました。長唄はなんと粋で美しく素敵なのでしょうか。
 軽妙でわかりやすく、なおかつすべらない解説といいますかトークに、至近距離での臨場感抜群の演奏。贅沢な時間です。長唄に心得のある方以外ではおそらく初めての経験となったのでは、と思う「長唄を唄ってみよう」のコーナーもありました(左の写真は鉄駒さんによる唄のお手本です)。そして昨日は五節句の一つ、旧暦での人日。七草粥の日でした。「何か新春らしい曲を」と予めリクエストさせて頂いたのですが、なんと鉄九郎さんは書き下ろしの「春の七草」という曲をご用意してくれました。唄は鉄駒さんです。この上ない感動です。親しみやすいメロディと、囃子唄や春の七草を折り込んだ詞は、どこか唱歌やわらべ歌のような響きです。鉄駒さんは、酒宴の席でも何度も何度も唄ってくれました。この宵の曲目は以下の通りです。

1、助六ー五郎ーぎっちょ
2、花春祭夏
3、舌出し三番叟
4、春の七草
5、京鹿子娘道成寺よりマリ
  ~「長唄を唄ってみようのコーナー」
6、大薩摩
7、衣替闇夜連弾
アンコール:チンチリレン

 長唄をたっぷり堪能した後は恒例の酒宴です。鉄九郎さん、鉄駒さん、鉄六さんの発声で乾杯するのは、ニュー信州特製「南高梅の梅酒」。0221shuen お振る舞いとして、七草粥に見立ててスズナ(かぶ)、すずしろ(大根)、田芹、花わさびで炊いたお粥(右上)。みちのく岩手から届いたばかりの天然ふきのとう天ぷら(左下)が運ばれます。長唄と味覚で春をたっぷり感じ、長唄談義に花を咲かせた酒宴は、鉄駒さんの音頭による三本締でお開きとなりました。
 皆さん。「京鹿子娘道成寺」の演目がある会に行かれる際には、昨夜お配りした歌詞カードをお忘れなく。周りのお客さんのご迷惑にならぬよう、くれぐれも心の中で一緒に唄って下さい。
 長唄の会、またいつか開催したいと思っています。今度はお唄さんにも来て頂こうかな~などと思っています。昨夜お越しになれなかった皆さんも、どうぞお楽しみに。

 旧七草の前日、春の七草は芽吹いているのか、午後の柔らかい陽射しが心地良い旧浜離宮恩賜庭園に図鑑片手に行ってみました。下の写真の四種類を見つけることが出来ました。0221nanakusa 左からナズナ(ペンペンクザ)、たぶんゴギョウ(ハハコグサ)、ハコベラ(ミドリハコベ)、ホトケノザ(タビラコが見つからず、これはたぶんオニタビラコ)です。

0221nanohana そして、浜離宮の春の名物、菜の花畑が、だいぶ咲きそろってきました。まぶしいばかりの黄色い花は気分も明るくしてくれるものです。


【手前味噌仕込みの会】仕込完了!

2010年02月14日 08時05分04秒 | 主催する催し

 旧一月一日。旧暦のお正月。中国では春節です。立春過ぎて十日が経ちました。まだまだ寒さは厳しく、寒の頃よりも寒いのではと感じてしまうこの頃ですが、東京では乾いた冬晴れの日が続かなくなるのは、確実に春らしくなってきている証拠です。陽射しの暖かさも感じられるようになってきました。「春だなぁ」と噛み締めるのは二十四節気ではもう一つ進んだ【雨水(うすい)】の頃、2月19日くらいからでしょうか。


 今年で五回目、恒例となりました“暮らしのリズム”食のイベント【手前味噌仕込みの会】を2月11日に行いました。0214misojikomi2 今年は22人が参加して、初めての試み麦こうじの味噌を仕込みました。これまでの最年少参加者は9歳。いつも大豆の仕入でお世話になっている松葉屋商店の永井康介さんのお嬢さんです。こうじをほぐして、大豆を潰し、材料を混ぜて団子にして瓶に仕込む。小さな手で一生懸命作業をしてくれました。
 今回は二度目以上の御参加という方が多く、皆さんもう手慣れたものです。丸麦にこうじ菌をつけて作られた麦の生こうじは香りが独特です。ビール工場を見学されたことがある方には、ピンと来るあの匂いです。しっとりと粘り気があって、まずはこれを細かくほぐすところから作業が始まりました。
 パラパラになった麦こうじを塩とよく混ぜ合わせ、その間に大豆をじっくり煮ていきます。
0214misojikomi前夜に水に浸した大豆はほぼ半日を経過して二倍半くらいの大きさに膨らんでいました。まだ新豆の柔らかさが残っているので、煮る時間は1時間半。煮上がった大豆は、ほんのり甘みがあって旨味もしっかりしています。これを熱々のうちに醤油に浸すと、それだけで美味しいおつまみになるのです。あとをひく大豆の美味しさにあらためて感動しつつ、次はポテトマッシャーで、大豆を少しずつ潰してはシートに積んでいきます。
 クライマックスは潰した大豆と、塩と合わせたこうじを混ぜる作業です。ここでいつもは大豆の煮汁を加えて固さを調整するのですが、煮汁は栄養分が多くて味噌が早い段階で赤くなってしまう、という情報を得ました。今回の麦味噌は、西日本で広く親しまれているような白味噌も楽しみたいと考えていたので、煮汁ではなく味噌と同じ塩分濃度の湯冷ましを加えることにします。そして仕込味噌を皆が持ち帰る1升の瓶に詰め込んで作業はおしまいです。
 作業の後は乾杯~酒宴の始まりでです。まずは味噌を使った料理が振る舞われます。味噌料理の定番といえば「鯖の味噌煮」。
0214koujiryouri白いご飯が恋しくなってしまう濃厚な味わいでお酒も進んでしまいます。もう一品は「鴨の味噌漬け焼き」。噛めば噛むほどに旨味と肉汁がにじみ出て来て、これも酒の肴に最高です。昨年仕込んだ玄米こうじ味噌の「味噌汁」も冷たい雨降る夜に嬉しい一椀でした。
 こうじを使った簡単料理を二品用意しました。米こうじと煮た大豆、少しの塩を混ぜ合わせて半日ほど常温で馴染ませたシンプルな「大豆のこうじ和え」(大豆300g/米こうじ100g/塩小さじ半分くらい)。大豆の旨味に米こうじの甘みが加わって、ちょっと甘酒の風味も感じられます。もう一つは麦こうじと納豆、乾燥芽かぶを合わせて醤油・酒・味醂で味付けした「もろみ納豆」(麦こうじ300g/納豆250g/乾燥刻み芽かぶ50g/醤油80cc/酒100cc/味醂100cc)。ネバネバの納豆と芽かぶに麦こうじのプツプツした食感がクセになります。こうじ菌と納豆菌の相乗効果はとても体に良さそうな予感がします。こうじを食べる、ということをこれまであまりして来なかったのですが、消化酵素をたっぷり含んだこうじ菌パワーをストレートに吸収できるので要注目です。米こうじはスーパーなどで200gのパックを300円くらいで売拉れているので、手軽に使えそうです。ぜひお試し下さい。

 昨年末に我が家で仕込んだ麦味噌の瓶を試しに開けてみたところ、わずか40日という熟成期間ですが、しっかり味噌の風味になっていました
(中央の写真左下)。まだ少し塩が尖っていますが色・香り・味は、若い麦味噌そのものです。秋には皆で仕込んだ麦味噌を持ち寄って手前味噌自慢の会】を開催しようと思います。麦味噌は熟成が早いので、どんな仕上がりになるか早くも楽しみです。


先ず咲く“満作”に春近しを知る

2010年02月01日 18時32分08秒 | まち歩き

 旧十二月十八日。今日から2月です。タイミングよく干支が壬午(みずのえうま)ですから、京都伏見稲荷の初午でした。二月最初の午の日が稲荷信仰の例祭日になったのは、和銅四年(西暦711年)の二月初午の日に五穀を司る宇迦之御魂の神が伊奈利山に舞い降りたのが起源なのだそうです。身近なお稲荷さんには真新しい深紅の幟が立てられていたのではないでしょうか。江戸時代にはこの日が寺子屋入門の日だったという風習もあるそうです。もちろん、もともとは旧暦で行われていました。今年の旧暦で初午は、3月21日(旧二月六日)の日曜日、春分の日ということになります。


 厳しい寒さももう一山、といったところではないでしょうか。明後日2月3日は節分で、翌4日は二十四節気の立春です。実際はまだまだ寒い日が続いて、もうしばらくは冬の装い、という感じです。冬季オリンピックもこれからですしね。
0201mansaku春を体感できるのは、二十四節気の啓蟄(今年は三月六日)頃になってからだと思います。そんな寒の〆の頃、今夜は東京でも雪が積もるかもしれないそうです。
 日差しの暖かさと高さ、日没が段々遅くなってきていることは、寒さに関係なく実感できるのもこの頃です。よく植物は日照時間や、地温によって芽吹いたり花を咲かせたりする、と聞きます。写真右は隅田川テラスの植えられている『満作』の花です。「まんさく」という名は「先ず咲く」が変化したという説や、花付きの良さが「豊年満作」を印象づけるから、という説などがあるようです。0201tsubomi_2 寒の内に咲いている花を見ると、春を先取りしたような軽快な気分になります。色彩が乏しいこの頃に、錦糸卵のような花びらはとても暖かさを感じます。もう一つ、春の芳香、沈丁花の蕾(写真左)も紅が濃く鮮やかになってきました。花が咲くのは3月半ば頃だと思いますが、その準備は着々と進んでいます。

 2月20日(土・旧七草)に開催するイベント『長唄三味線の会~香り立つ早春の響き』の準備を進めています。先日は出演頂く松永鉄九郎さん、松永鉄駒さん、松永鉄六さんと、当日の演目や進行などの打ち合わせをしました。内容はもちろん当日のお楽しみ、ということですが、楽しい会になること間違いなし、と確信致しました。素晴らしい演奏と、楽しくてわかりやすいお話し。三味線ばかりではなく唄のコーナーもあり、お客様参加型の長唄体験も、という盛りだくさんな内容になりそうです。どうぞお楽しみに。
 旧七草に因んで、当日は皆さんに七草粥をお振る舞いしようと企画しています。直前に日差しが暖かい多摩川土手辺りで、自生している春の七草を探しに行ってきます。早春の陽光を浴びた天然七草の苦みを併せてお楽しみに。
残席まだもう少しあります。ご予約・お問合せはこちらまでお願いします。