"暮らしのリズム"的できごと

先人が培った暮らしの知恵を通じて今を楽しむ【暮らしのリズム】のブログ。旧暦、落語、音楽、工芸品、食、民俗芸能などをご紹介

華の東京の真ん中で民謡の一週間

2010年05月23日 18時45分27秒 | 暦のおはなし

 旧四月十日。二十四節気の【小満】に入って二日が経ちました。

    万物盈満すれば草木枝葉繁る。
             
『暦便覧』(天明八年 /1788年出版)

 知らないうちに木々の緑がどんどん濃く旺盛に繁ってきて、木陰が嬉しい季節になってきました。弱々しかった野草も育ち小さな花をつけたり、種を飛ばし始めています。冷えたビールが一段と美味しくなってきました。これが初夏らしさというものなのでしょうね。

 先週一週間、東京青山のSPIRAL地下にあるライヴ・レストラン、CAYにて、つるとかめがプロデュースした『民謡酒場!!at 青山Cay』というイベントが行われました。0523flyer 事前に告知をしたかったのですが、タイミングを逸してしまい、このblogではサイドバーに小さくインフォメーションしました。それをチェックして来られた方に会場でお会いし、とても嬉しかったです。都合により初日の月曜日と最終日の金曜日にしか行くことができなかったのですが、とても楽しいライヴ・イベントでした。

 「民謡酒場」というのは、高度経済成長期に沸く東京で、地方から出稼ぎで上京していた労働者にとってオアシスのような場でした。建設現場や工場等でのキツい仕事のあと、故郷に思いを寄せ、同郷の仲間とお国の訛で語り合い酒を酌み交わし民謡を唄う。そんな店です。昭和30年代、魅惑の街浅草にはたくさんの民謡酒場が会ったと聞きます。出稼ぎ労働者のお楽しみを支えていたのは、唄につける三味線や尺八、太鼓、おはやしの担い手でした。お国で神童のごとく現れた若き名手たちはさらにその腕を磨くことを目指して民謡酒場を目指しました。つるとかめの澤田勝秋師匠もそんな一人。東京オリンピックの年、昭和39年に上京されました。初日と最終日に出演された秋田・角館出身の高橋祐次郎さんは昭和30年に来られたそうです。それぞれ、津軽出身者が集まる店、秋田出身者が集まる店で腕を磨き、名人の域に達しました。そんな浅草の民謡酒場、今ではルイヴィトンの東京ガイドにも掲載されているという店「追分」「みどり」があります。昭和の空気が漂う素敵な空間です。機会がありましたらぜひ行ってみて下さい。

 CAYでのイベントでは、つるとかめのお二人を軸に、お弟子さんのグループや、ゲストの歌手が次々にステージに上がり、素敵な唄や演奏を聴かせてくれます。客席からおはやしの方が飛び入りで上がったり、客席の後ろの方からも美声が聞こえて来たりと、場は洗練されたライヴハウスですが、目をつむれば心地良い民謡酒場そのものです。手拍子や合の手は次第に力が入って行きます。故郷に郷愁を抱いて民謡酒場の暖簾をくぐっていた人たちの心意気を、ほんの少しだけ感じることができたような気がします。もっともっと聴いていたくなる。いや参加していたくなるような楽しいイベントでした。

 次の機会がありましたら早めに告知をしたいと思っています。そして“暮らしのリズム”の民謡ライヴイベントも、この秋か初冬に実現させたいと思っています。どうぞお楽しみに。


みちのく岩手で満開の桜に迎えられ

2010年05月05日 18時40分15秒 | まち歩き

 旧三月二十二日。二十四節気の【立夏】です。

    夏の立つがゆえなり。
             
『暦便覧』(天明八年 /1788年出版)

 まさに今日はそんな陽気でした。二十四節気の季節の始まりを表す中で、立春・立秋・立冬と比べて明らかにその季節の到来を感じさせるのが立夏だと思います。5月に入って大型連休に突入した途端、暖かく爽やかな陽気に恵まれました。4月の不安定な陽気が嘘のようです。

 個人的な話ではありますが、妻の祖母が数え九十九で他界したため、急遽5月2日朝一番の新幹線に飛び乗り、翌3日の夕方には帰京するという、慌ただしい行程で岩手・北上に行ってきました。
 東北新幹線の車窓から望む風景は何度通っても魅力的です。都会から田園風景・山間の農村と旅情をかきたてるストーリーがあります。福島を過ぎた辺りから桜前線に追いついたようです。
0505sakuranamikiさらに岩手県に入って一ノ関辺りからソメイヨシノが見頃になってきました。目的地の北上はJRの駅に貼ってあるポスターの通り、東北三大桜の一つ(あと二つは弘前と角館)で、名所の北上川に沿った展勝地はたいへんな賑わいだったようです。のんびり花見というわけにはいきませんでしたが、3日の早朝にカメラを握って実家近くをジョギングした際には妻の母校である中学校の桜が見事に咲き誇っていました。

 祖母を埋葬する実家のお墓は、北上川から奥羽山脈を望む小高い丘の斜面にある、曹洞宗の古寺の境内にあります。0505sidare その墓地には孤高のしだれ桜が満開を迎えていました。まだ4~50年くらいの樹齢でしょうが、これからますます枝を伸ばし立派になってゆくと思います。樹の下は柔らかく淡い色の草が生え始め、よく見ると、ノカンゾウにわらび、ノビルが群生していました。一気に春がやって来たのだなぁ、と実感させられました。

 東北では3月から4月にかけてたいへんに寒さが厳しく、
0505tanbo_2その上日照時間も短かったので、水稲の苗の生育が遅れ少し田植が遅くなるそうす。 義父に言わせれば「焦らず昔の習慣通りに二十四節気【芒種】(6月6日頃)に田植をする方が美味しい米が出来るのだ」とのことです。この天候不順や北半球での大きな火山の爆発などが、さらなる異常気象を招かぬよう祈るばかりです。