旧四月十日。二十四節気の【小満】に入って二日が経ちました。
万物盈満すれば草木枝葉繁る。
『暦便覧』(天明八年 /1788年出版)
知らないうちに木々の緑がどんどん濃く旺盛に繁ってきて、木陰が嬉しい季節になってきました。弱々しかった野草も育ち小さな花をつけたり、種を飛ばし始めています。冷えたビールが一段と美味しくなってきました。これが初夏らしさというものなのでしょうね。
先週一週間、東京青山のSPIRAL地下にあるライヴ・レストラン、CAYにて、つるとかめがプロデュースした『民謡酒場!!at 青山Cay』というイベントが行われました。
事前に告知をしたかったのですが、タイミングを逸してしまい、このblogではサイドバーに小さくインフォメーションしました。それをチェックして来られた方に会場でお会いし、とても嬉しかったです。都合により初日の月曜日と最終日の金曜日にしか行くことができなかったのですが、とても楽しいライヴ・イベントでした。
「民謡酒場」というのは、高度経済成長期に沸く東京で、地方から出稼ぎで上京していた労働者にとってオアシスのような場でした。建設現場や工場等でのキツい仕事のあと、故郷に思いを寄せ、同郷の仲間とお国の訛で語り合い酒を酌み交わし民謡を唄う。そんな店です。昭和30年代、魅惑の街浅草にはたくさんの民謡酒場が会ったと聞きます。出稼ぎ労働者のお楽しみを支えていたのは、唄につける三味線や尺八、太鼓、おはやしの担い手でした。お国で神童のごとく現れた若き名手たちはさらにその腕を磨くことを目指して民謡酒場を目指しました。つるとかめの澤田勝秋師匠もそんな一人。東京オリンピックの年、昭和39年に上京されました。初日と最終日に出演された秋田・角館出身の高橋祐次郎さんは昭和30年に来られたそうです。それぞれ、津軽出身者が集まる店、秋田出身者が集まる店で腕を磨き、名人の域に達しました。そんな浅草の民謡酒場、今ではルイヴィトンの東京ガイドにも掲載されているという店「追分」「みどり」があります。昭和の空気が漂う素敵な空間です。機会がありましたらぜひ行ってみて下さい。
CAYでのイベントでは、つるとかめのお二人を軸に、お弟子さんのグループや、ゲストの歌手が次々にステージに上がり、素敵な唄や演奏を聴かせてくれます。客席からおはやしの方が飛び入りで上がったり、客席の後ろの方からも美声が聞こえて来たりと、場は洗練されたライヴハウスですが、目をつむれば心地良い民謡酒場そのものです。手拍子や合の手は次第に力が入って行きます。故郷に郷愁を抱いて民謡酒場の暖簾をくぐっていた人たちの心意気を、ほんの少しだけ感じることができたような気がします。もっともっと聴いていたくなる。いや参加していたくなるような楽しいイベントでした。
次の機会がありましたら早めに告知をしたいと思っています。そして“暮らしのリズム”の民謡ライヴイベントも、この秋か初冬に実現させたいと思っています。どうぞお楽しみに。