"暮らしのリズム"的できごと

先人が培った暮らしの知恵を通じて今を楽しむ【暮らしのリズム】のブログ。旧暦、落語、音楽、工芸品、食、民俗芸能などをご紹介

若き剣士の勇壮な舞~二子鬼剣舞

2006年08月31日 12時29分58秒 | 芸能の催しごと

 旧閏七月八日。8月も今日でおしまい。街路樹から聞こえる蝉の声も夏の終わりを告げるツクツクホウシが多くなりました。こどもの頃からの習慣なのでしょう、カレンダーが9月になる今日から明日にかけでが、夏から秋への移り変わりであるように実感します。

 先週の土曜日(8/26)に、江戸川区のタワーホール船堀で開催された「全国中学校総合文化祭」というイベントを観に行ってきました。“全国の中学生の文化・芸術・研究活動の祭典”ということなのですが、お目当ては岩手県北上市立北上北中学校の二子鬼剣舞(おにけんばい)です。831onikennbai1たまたま現地の新聞記事をwebで見つけ(岩手日報の記事です)、私ごとで縁のある学校でもあるので、その勇姿を観に行こうではないか、と出掛けました。
 鬼剣舞は岩手県北上地方に古くから伝わる郷土芸能です。修験道の行者が悪鬼を踏み鎮める動作「反閇(へんばい)」と先祖供養の念仏踊りをルーツとする力強く勇壮な舞です。二子鬼剣舞は、数ある踊り組の中でも熱心に修行を重ね、意欲的に公演を行い、全国に鬼剣舞の名を広めた功績が評価されています。831onikenbai2
 この日ステージに上がった生徒たちは、皆保育園・幼稚園の頃から鬼剣舞の修行を始めて、二子鬼剣舞修行生として活躍しています。すでに10年ほどのキャリアを積んでいるため、単独で見ている限りでは大人の舞と何ら遜色の無い、力強く見事な完成度を実感できました。演目はこの日の限られた持ち時間で、鬼剣舞の魅力を最大限に伝えるために、代表的な演目をメドレー形式で披露してくれました。

 後継者不足で伝統が途絶えてしまう、というはなしを様々なジャンルにおいて良く聞きますが、二子鬼剣舞にとってはそんな心配はまったく無用なようです。家族や学校に強制されたりやらされているのではなく、一人一人が自主的に取り組んでいる、そういう姿勢を強く感じられるのです。そして彼らに対して、地域の人たちは暖かく、後輩や仲間は羨望の眼差しを送っています。稲穂が黄金色に色づく頃、久し振りに彼の地を訪れてみようかな、と郷愁に駆られるひとときでありました。

写真上:基本の舞「一番庭」に少女の胴取による「ハネ胴」が加わる伝統的スタイル(実はとても珍しくなっている)で幕開け。
写真下:膳を用いた「膳舞」と刀を一本ずつ増やしてゆく「宙返り」をミックスした「曲芸」。


秋の足音少しずつ~明日から閏月(?!)

2006年08月23日 09時45分41秒 | 季節のおはなし

 旧七月三十日。今日は二十四節気の【処暑(しょしょ)】です。

陽気とどまりて、初めて退きやまんとすればなり。
       『暦便覧』(天明八年=1788年)より

 雲のかたち、陽の差しこむ角度、朝夕に吹く風・・・盛夏の頃とは違う秋の気配を少しずつ感じますね。旧暦の七月も今日で終わり、明日からは八月、といつもならそうなるのですが、今年は違います。明日からは“閏(うるう)七月なのです。なぜそのようなことになるのか、旧暦のからくりを簡単にご紹介しましょう。
 二十四節気は、地球から見て太陽が天空を一周する1年間を角度で二十四等分した点です(=定気法)。
春分点を起点に15度ずつ動いていきます。また二十四節気には季節の指標を示す『節気』と、暦月を決める『中気』が交互にあります。中気から中気までの一ヶ月間は29.42日~31.45日ですが、月の周期は平均29.53日のため、月の名前を決める中気の無い月が存在してしまうのです。今回の場合、今日=旧七月三十日は旧七月の中気『処暑』です。そして明日は朔(新月)で月が変わり、次の朔は9/22、また八月の中気『秋分』はその翌日の9/23となります。そのため明日から始まる中気のない、つまり名前の無い月を閏七月とするのです。

 説明が足りずにうまく伝わらないと思いますが、ご興味をお持ちの方詳しくは左覧下の“いいリズムで暮らすための本です”にあります。どうかご参照下さい。

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盛夏の頃、佃住吉神社の陰祭り

2006年08月07日 11時29分39秒 | 催しごと

 旧七月十四日、明日は旧暦のお盆、そして二十四節気の【立秋(りっしゅう)】です。秋と言われてもほとんど実感できませんが、台風のシーズンが迫っていることを天気図が示していますね。どうやら今週後半から影響で天気が崩れるようです。明日が立秋と言うことは今日までが土用。暑中見舞いは今日まで、明日からは残暑見舞いになりますよ。

 8月6日は佃にある住吉神社の例祭でした。大祭が三年に一度のため、今年、来年は陰の祭りです。87sumiyoshi御神輿の巡行はなく、ひっそりとした雰囲気で祭礼の儀式だけが執り行われます。8月4日の夕方には各町会の祭り組織、睦がそれぞれ揃いの浴衣を着て、勝どきにあるお旅所(住吉神社の分社)でお参りをし、佃までを練り歩き、宵宮の儀式を行います。境内を中心に佃島界隈では、奉納の江戸里神楽が行われたり、伝統的な獅子頭のお披露目をしたり、静かな中にも祭りの雰囲気を感じることができます。周囲がすっかり埋め立てられたとはいえ、隅田川河口の小島であった名残で、夕方には風が心地良く、いつになくどこか凛とした空気が漂います。
(左上より時計回りで。幟があること以外普段と変わらずひっそりとした住吉神社の境内/各町会の提灯を先頭に夕刻の住吉神社を目指す隊列/境内の神楽殿からは若山胤雄社中の神楽囃子が響きます/御神輿が無い頃の名残だという説がある伝統的な獅子頭は、佃で3箇所に設けられている)


星が煌めく旧七夕の夜

2006年08月02日 10時24分37秒 | 季節のおはなし

 旧七月九日。関東地方も梅雨が明けました。82yokoze本来は真夏の太陽が照りつけ猛暑となるはずの土用ですが、涼しい日が続いています。 それはそれで過ごし易く有り難いのですが、あの暑さがないとどうも拍子抜けした気分です。今週末頃からは本格的な猛暑になる、とのことですが、一週間後の8月8日(火)は早くも“立秋”です。「暑中見舞い」より「残暑見舞い」の方が実感こもるのではないでしょうか。(↑元気な子どもたちが遊ぶ清流は大人たちにとっても羨望の風景ですね。秩父の横瀬川にて)

 一昨日、7月31日(月)は旧暦の七夕でした。ここしばらく日差しはあっても薄雲に覆われる関東地方も、この夜はすっきりと晴れ渡り、西の空には七日目の宵月が明るく、月が沈むと星空を臨むことが出来ました。旧暦であるということは、七夕の夜いつも同じ姿の月が沈み、闇に包まれた空には満天の星空が広がるのですね。今のカレンダーでの七夕は、梅雨空に覆われてしまったり、星が霞んでしまうほど明るい月夜だったりすることがあるわけです。計ったようにこの夜だけ晴れ渡ったことには、何かとても神秘的な因縁を感じてしまいます。