旧四月十六日。5月だというのに早くも台風が二つも接近しました。今年は本州南の太平洋で海水温が高くなる傾向があるそうで、台風が大型化しやすくなるそうです。十分に用心して備えを怠りなくしたいものです。
明日は二十四節気の【小満(しょうまん)】です。
万物盈満(えいまん)すれば草木枝葉繁る
『暦便覧』(天明八年/1788年出版)
気がつけば緑は一段と濃く、木々は鬱蒼とし、緑が清涼感を与えてくれる季節がやってきました。そんな時期だからこそなのか、特に気になるのが“苔”です。清らかな水辺、神社や寺の境内にある石段、普段視線も日差しもと届きにくいところに苔はひっそりと佇んでいます。
そのままやり過ごしてしまえば何ということはないのですが、じっと視てみると、そこは小さな熱帯雨林の森のように見えてくるから不思議です。最近はミニ盆栽や、苔玉をインテリアに飾ることがちょっとしたブームになっていて、雑貨のお店などでもよく目にしますね。そんな気になる苔と親しくなれるきっかけを与えてくれそうなユニークな本をご紹介します。(写真はゴールデンウィークに那須に行った際に撮った清流の苔石です)
その名も『苔とあるく』(田中美穂著・WAVE出版/2007)です。仲良くさせて頂いているイラストレーター、浅生ハルミンさんが、あの雰囲気のあるイラストをふんだんに提供しているご縁でこの本のことを知りました。
初めて手に取ってパラパラとページをめくった時に心の中で「これだっ!」と叫んでいました。専門書のような難しさはなく、かといって苔の知識はおざなりにせず、とても自然にするする~っとその世界に引き込んでいってくれます。適当なマニアックさが、苔をなんとなく意識していた人にはたまらない距離感と肌触りを生むのかもしれません。
本では、身近なところを探索するところから始まり、観察、研究でお勉強して、採集して標本にしたり、この世界にお友達を巻き込んだり、栽培し、最後には食べてしまう。というこれ以上の愛で方があるか、という内容になっています。緑が豊かで、水の流れが心地よく感じるこの頃。苔の世界に足を踏み入れてみるのはいかがでしょうか。