"暮らしのリズム"的できごと

先人が培った暮らしの知恵を通じて今を楽しむ【暮らしのリズム】のブログ。旧暦、落語、音楽、工芸品、食、民俗芸能などをご紹介

お花盛りの旧ひな祭りと古都の風景

2006年03月31日 14時47分44秒 | まち歩き

 旧三月三日。そうです今日は旧暦で五節句の一つ“上巳(じょうし)”雛祭りです。関東地方は桜も満開、花盛りです。染井吉野とほぼ同じ時期に花が咲く桃の花も今が見頃でしょう。やはり雛壇には季節に呼び起こされて自然に花をつける桃の花が欲しいですね。

 先日好機に恵まれ春爛漫の古都鎌倉を訪れました。まだまだたくさんの蕾を枝先に残す桜も美しかったのですが、道ばたの小さな草花から様々な樹の花まで、目移りしてしまうほどたくさんの花に溢れていました。季節遅れの寒気襲来で北風が強かったこの日、相模湾に向かって背後の三方を小高い山に囲まれている鎌倉は、日差しが心地よくより一層華やかな陽気です。無粋な説明はこのくらいにして、今日はフォトエッセイ風にまとめてみます。ご覧下さい。

331toukeiji 右の写真は北鎌倉駅にほど近い駆込寺で知られる東慶寺の桜です。枝先が少し垂れ下がっています。シダレザクラでしょうか。最近はこのように一本立ちの桜「一本桜」を鑑賞するがブームだそうです。孤高で力強い姿に魂のようなものを感じますね。

 春の彩りをまとめてご紹介します。
写真左上から時計回りに。
331hanas_1○東慶寺の境内にひっそりと咲くスミレ。
○同じく東慶寺で見つけた紅白のマンリョウの実。白いマンリョウの実は珍しいそうです。
○その下は海蔵寺の雪柳。このお寺は様々な花が美しくヤマブキ、リンゴの一種で桃色の花と蕾が可愛らしいカイドウや、沈丁花の一種ミツマタが印象的でした。
○浄智寺に咲くカタクリ。美しい水が湧き出すような深い山に咲く花で、花が終わるといつのまにか葉も枯れて消えてしまう儚げな花です。

331koumyouji 海に近い光明寺まで足を伸ばしました。荘厳な山門に本堂と格式ある雰囲気がある浄土宗の名刹です。広々とした境内では染井吉野をはじめとする桜が見頃でした。近所の子供たちやお年寄りが、桜に彩られいつもとは少し違う雰囲気を楽しんでいるようです。

 昨年の晩秋以来となる鎌倉でした。つい最近のことのように思っていましたが、季節は二つ進んでいました。まもなくやってくる新緑の風景も見事でしょう。見たもの感じたものすべてが思い出に残る、鎌倉は特別な場所です。


松徳硝子の“うすはり”

2006年03月28日 17時38分14秒 | 手しごと

 旧二月二十八日。桜は五分咲きくらいでしょうか。328sakura陽あたりや風の流れで開花の早さがかなり違うようです。明日から三日間くらいは寒気の影響で肌寒い日が続くそうです。“花冷え”。でも週末まで桜はしっかり咲き続けてくれることでしょう。
(←佃住吉神社の桜。3/25~桜祭りをやっています)

 このブログでも何度か登場している拙宅前
328buna1のブナも新緑の季節を迎えました。堅い皮に包まれていた新芽が徐々に開くと、初々しい小枝を伸ばし、優しいうす緑色の葉を開きます。奥羽山脈で拾ってきて1996年に実から最初の双葉を開いたブナは樹齢10年を迎えました。春は何かと花に話題が集中しますが、新緑のまぶしさも魅力的ですね。
(→ブナの新緑は鮮やかです。この葉が夏の日差しを和らげてくれます)

 さて、以前『すみだガラス市
でご紹介した錦糸町にあるガラス工場328syoutoku1松徳硝子でガレージセールがあるというので行ってきました。(←歴史を感じさせる町工場の風情)松徳硝子は創業が大正11年。電球用の薄いガラスを作る工場としてスタートしました。電球の生産はもうずいぶん前に止めてしまったそうですが、その類い希な技術を応用して手作りでごくごく薄いグラスや酒器“うすはり”を作っています。328syoutokuガレージセールではちょっとした歪みや気泡が入ってしまい、出荷することができなくなってしまった商品をとても安く販売しています。生活雑貨やこだわりの工芸品を扱うセレクトショップなどで大変人気がある松徳硝子だけに、ガレージセールも賑わっています。目移りしてしまう商品の中から、今回は「うすはりタンブラーM」「SHIWAオールドS」「ワイングラス」を買いました。手にとってよ~く眺めてみても、どこに難があるのかまったくわかりません。松徳硝子、職人の心意気が感じられます。日本の物づくりはやはり素晴らしいです。ぜひ工場見学に行ってみたいものです。
 錦糸町駅から松徳硝子に向かう道には、懐かしの駄菓子の「ふ菓子」と「きなこ餅」を作る町工場があり、甘く誘われる香りが漂っていました。

 


“春分のこの佳き午後に味噌仕込み”

2006年03月24日 16時38分39秒 | 主催する催し

 旧二月二十五日。彼岸の明けです。“暑さ寒さも彼岸まで”と言うとおり、今年は厳しい寒さからちょっと早く解放され、桜も開花いたしました。先日初めて浜離宮恩賜公園に行ってみたのですが、梅が散り、桜が僅かにほころび始め、ぼけ、れんぎょう、ハクモクレン、雪柳、眩しいばかりの菜の花・・・と春真っ盛りであることを実感しました。

 さて初の試みである“手前味噌仕込みの会”を無事3月21日火曜日に、お馴染みの渋谷の【居酒屋ニュー信州
で行いました。当日は春分の日=二十四節気の中でも天文学的に起点となる日、国民的関心事WBC決勝戦=初代王者の座をかけたキューバとの一戦の日、そして東京地方で染井吉野の開花宣言がされた日、と滅多にない身も心も浮き足立つ日でした。ご参加いただいた皆様、“王ジャパン”よろしく見事なチームワークで仕込みから酒宴まで、楽しいひとときを過ごすことができ、感謝しています。今日はイベントレポートを簡単にいたしましょう。

 まずは会の前日夜、お店が閉店する深夜0時頃に大豆を水に浸します。
一般家庭ではなかなか大変なのですが、大量(5.5kg)の大豆にも業務用の大鍋なら3つに分けて一気に煮ることができます。324daizu13時間かけてゆっくり水を吸った大豆を火に掛けます。ほどなく参加メンバーが集合しメンバーの紹介と簡単なガイダンスを。WBC決勝戦はお店の有線放送から流れるラジオ放送で。大豆は1時間ほどで食べられるようになります。皆でちょっと味見をしてみましょう。水で戻して煮ただけの大豆のなんと甘いこと。塩にからめたり、醤油に浸したりで、素朴なおやつに最高です。味噌にする大豆はもう少し柔らかく、あと30分ほどじっくり煮てゆきます。
(写真は左上から時計回りに~水に浸し~水を吸ったところ~そろそろ煮上がる~煮ただけの大豆の旨味にびっくり)

 大豆が煮上がると一気に味噌仕込みらしい労働の時間が待っています。各自少しずつポテトマッシャーで潰してゆきます。昔ながらの方法、巨大なすり鉢と擂りこぎも登場。多少大豆の粒を残して手造り感を出しましょう、とメンバーの総意で完全に潰さない大豆も残しました。324shikomi塩と米こうじを均一になるようによく混ぜ合わせます。そこに潰した大豆を一気に投入し、ここからがクライマックス、メンバー全員で大豆と塩とこうじを混ぜ合わせてゆきます。こうじや大豆はお肌に良いのでしょうか。温泉に入ったように手の甲がスベスベになります。さすが天然素材のコスメですね。混ぜ合わせた素材の堅さを確かめながら、大豆を煮汁を少しずつ加えていきます。この堅さがたいへん微妙なところです。仕上がりの味噌の水分をイメージしながら試行錯誤の上、調整してゆきました。そして各自の1升瓶に空気を抜いて詰め込み、表面に薄く塩を振り、ラップをかぶせ、落とし蓋をして仕込み作業は無事完了です。

(写真は左上から時計回りに~最もアナログなすり鉢登場~塩切りこうじを作ります~すべての材料をよく混ぜて~空気を抜きながら瓶に仕込みます)

 チームワークの良さで作業は予想より遙かに早く完了。正味2時間ほどでした。適度な力仕事で喉の渇きもピークです。WBCの祝勝ムードもあったのか第二部酒宴への支度も素早いこと素早いこと。
324miso4syuビールで乾杯し、まずは先輩味噌を味見してみましょう。ということで私の手前味噌一年もの、二年ものとお店で秘蔵している四年もの?と六年もの?(写真の一つだけ色が薄いのが一年もの)を、あさつき、胡瓜につけて食べてみます。続いてはお店からのお振る舞い【ふろふき大根の柚子味噌】【黒ムツの味噌漬け】が登場。さらに味噌と酒粕を使った料理レシピを店主の榎 慎一さんに教えていただき、お土産に佐渡の大吟醸酒粕まで頂いてしまいました。明るい時間にスタートした酒宴も、時計を見ればあっという間にもうこんな時間!参加メンバー、お手伝い頂き全ての写真を提供してくれた水野さん、お店の皆様のお陰様で楽しいイベントになった、と思い感謝しています。

324syuugou_1 なんだかとても思い出深い日になってしまった3月21日。半年後、あるいは一年後でしょうか。各メンバーのご自宅で見事飴色に熟成した手前味噌の味噌汁を味わうたびに、この日を思い出して頂ければ、幸いです。また、熟成する環境で味噌の風味にどんな変化が表れるのかも、興味深いところ。ぜひメンバー一同再会し、手前味噌自慢に花を咲かせましょう。

 


春風に乗って沈丁花香る

2006年03月17日 14時24分43秒 | 季節のおはなし

 旧二月十八日。爆弾低気圧が駆け抜けた今日は西からの強い風が吹きこんでいます。春の強風。杉の花粉に大陸からの黄砂など、辛い時期ですね。

 “手前味噌仕込みの会”(3/21開催)に多数お申し込みいただきありがとうございます。ご参加いただく皆さん、楽しいイベントにしましょう。ただいま着々と準備を進めています。なお、当日の模様は後日じっくりレポートさせていただきます。お楽しみに。

317jinchouge さて、本格的に暖かい日が続き、桜の開花予想もずいぶんと早まり、東京では来週の半ばに開花するであろう、と言われています。そんな中、梅や桜と並んで春を代表する花がいい香りを届けてくれています。
 一つは“沈丁花(ジンチョウゲ)”。花は独特の甘い香り放ち、秋の金木犀と同じように季節を感じさせてくれます。生け垣や玄関先など身近なところに植えられているので、甘い香りの主を捜すのは簡単でしょう。
(↑写真からも香りが漂ってきそうな沈丁花の花)
317hakumokuren もう一つはコブシやハクモクレンの真っ白な花。共に葉より先に花を咲かせるので、突然周囲をパッと明るくさせてくれます。
(ハクモクレンかこぶしか。図鑑で見る樹形からハクモクレンかな→)
 お花見と言えば、やはり桜に限るのでしょうけれども、陽気に誘われて春の花を眺めて歩くのは楽しいものです。
317buna 私の家の前に置いてある鉢植えのブナも新芽の蕾が今にも開きそうです。雪深い奥羽山脈出身の樹ですが、まだ雪深い山より一足も二足も早く新緑の季節を迎えそうです。
(←いよいよ緑の季節がやってきます。ブナの新芽は3cmくらいまで大きくなりました)



“啓蟄”に春を実感

2006年03月06日 09時46分14秒 | 季節のおはなし

 旧二月七日。今日は二十四節気の“啓蟄”です。

陽気地中にうごき、ちぢまる虫、穴をひらき出ずればなり。  (『暦便覧』1788年ーより)

 雪の多い地方では、今年の場合特に土はまだまだ雪に覆われていることでしょう。それでも青空が広がり、暖かい日差しが降り注ぐ時間も少しずつ多くなってきて、木々の芽や鳥のさえずりから春を実感できるようになってきたことと思います。雪解け水が行きよい良く流れる用水路の脇には、早春の味覚“蕗のとう”を見つけることができたりします。
 東京の都心では、例年より少し遅いかな、という気がしますが、梅の花が見頃です。ひと気のない公園で梅の木を眺めていると色々な鳥が飛び交っているのがわかります。シジュウカラ、メジロ、に鶯の姿も見られます。彼らがあの独特の鳴き声を響かせ始めたら、誰にとっても春はぐっと身近なものになることでしょうね。春の香り沈丁花の蕾も膨らんできました。