"暮らしのリズム"的できごと

先人が培った暮らしの知恵を通じて今を楽しむ【暮らしのリズム】のブログ。旧暦、落語、音楽、工芸品、食、民俗芸能などをご紹介

静かな祭と猛暑再来な秋のはじまり

2013年08月07日 14時25分48秒 | 催しごと

 旧七月朔。二十四節気の【立秋(りっしゅう)】となりました

  初めて秋の気立つがゆえなればなり
            『暦便覧』(天明八年/1788年出版)

 関東は、7月6日に梅雨が明けましたから、すっかり夏に浸りきった感があります。このところは、涼しい日があったり、不安定で突然の雨に見舞われたりと、季節が少し戻って、梅雨の半ばから後半あたりの陽気が続いていました。それが、たまたまではありますが【立秋】とともに、猛暑が再来。厳しい残暑の日々を予感させる秋のはじまりです。

 佃島の住吉神社は、例年8月6日と
7日が例祭です。3年に一度となる本祭は、土日を挟んで4日間。町内には浮世絵にも描かれた6本の大幟が立てられ、獅子頭や八角神輿、氏子の各町内神輿による渡御が華々しく行われます。0807sumiyoshi 東日本大震災のため、4年ぶりの本祭が行われた昨年は、それはもう華々しく、厳粛に、祭が執り行われました。
 本祭に対して、
俗に陰祭と言われる例祭は、実に質素に、ひっそりとしたものです。そもそも神事たる祭は、拝殿の中で静かに執り行われるもので、それは、本祭とて同じことですが、陰祭では賑やかさがない分、より一層厳かな空気が島を包んでいるように感じられます。

 いつもと変わらない佃島の風景。旧家の軒下には、住吉神社の赤い提灯がつり下げられ、静かな祭を祝うかのように、町が薄化粧をしたかのようです。雲がすっかりとれた空は、昨日よりだいぶ高くなったような気がする秋のはじまりです。


秋の気立ったか

2012年08月08日 17時06分45秒 | 催しごと

 旧六月二十一日。昨日は二十四節気の【立秋】。

  初めて秋の気立つがゆえなればなり
            『暦便覧』(天明八年/1788年出版)

 暑中から残暑の季節となります。実際には甲子園の高校野球が開幕し、外に出れば賑やかに蝉が鳴き、陽射しも暑さも厳しく、秋と言われても実感できないのが立秋ではありますが、今日の東京は久しぶりに最低気温が25℃を下回り、吹く風が心地良く、鰯雲が広がる空は高く感じられ、確かに初めて秋の気が立っているようでした。
B0808sumiyoshi  夏に生まれ、どの季節より夏が好きな私としては、日が短くなって行くのと共に秋の気配が濃くなるのは、どこか寂しさを感じてしまうものです。そう思うのは、佃住吉神社の例祭がちょうど立秋前日に終わり、祭の雰囲気で高揚していたものが、ふっと治まってしまったからなのかもしれません。
 本来は三年に一度の本祭りである佃住吉神社の例祭ですが、神輿渡御の神幸祭は昨年東日本大震災の影響で延期となっていました。そのため、4年間待ちに待った今回の祭はこころなしか活気があったように思います。
 4年前の本祭り後に、佃島のすぐ隣に転居したのですが、ここに居るとこの地独特の祭の風情が風に乗って伝わってくるようで、
とても感慨深いものがありました。
 佃には三カ所に囃子の屋台が設けられ、初日の金曜日(8/3)17時に6本の大幟旗が上がってから、B0808wakayama_28/6月曜日の神輿宮入まで囃されます。囃子方は国指定重要無形民俗文化財、江戸里神楽の最高峰、若山胤雄社中の皆さんです。朝の5時、静寂を破る祭囃子の「打ち込み~屋台」は、特別な朝であることを告げる凛とした響きです。
 五十の手習いで二年前から稽古を始めたお囃子は、この若山の手によるものです。今回の祭の間、第一人者たちの囃子、その技術から立ち振る舞いまで、たいへん多くのことを学びました。



梅雨入り間近。もうすぐ【つきじ獅子祭】

2012年06月06日 06時34分32秒 | 催しごと

  旧四月十七日。昨日は二十四節気の【芒種(ぼうしゅ)】。いよいよ梅雨入りが近づいてまいりました。

  芒(のぎ)ある穀類、稼種する時なればなり
          『暦便覧』(天明八年/1788年出版)

 「芒」とはイネ科の植物の実にあるトゲのような突起のことで、「稼種」とは穀物を植えることです。雨の日が増えて来て、田植が本格的に行われる時。今は米の品種改良が進んで田植が早くなり、実際には4月~5月中には終わってしまうところが多いのですが、かつてはこの梅雨入りが近くなって来たこの頃が時期だったのでしょう。岩手県の郷土暦には芒種のことを「麦を収めて稲を植えるの意」とあります。実際、この頃に田植をした米の方が美味い、という話を聞いたこともあります。南北に長い日本列島。それぞれの土地ではいかがでしょうか。

 紫陽花の花が徐々に色づいて来るともうすぐ梅雨ですが、東京では鳥越神社や品川神社など、いくつかの神社でお祭りが行われます。中でも特別な思いがあるのが築地波除稲荷神社の【つきじ獅子祭】です。B0605shishiposter 二年前の夏から五十の手習いで始めていたお囃子を、初めてお祭りの場で披露することになりました。今度の土曜日と日曜日(6月9日・10日)に、築地六丁目の「築六睦」の山車に乗って、本社神輿(土曜日)、町内神輿(日曜日)を囃します。

 今年の【つきじ獅子祭】は『東日本大震災復興祈願、御鎮座三百五十年記念奉祝大祭』として、盛大に執り行われます。特に6月9日土曜日には神社創建以来初めてという神社千貫宮神輿、厄除け天井大獅子、弁財天お歯黒獅子が揃って担ぎ出されます。6月10日日曜日は築地各町の神輿が神社に集結し、社参したのち、各町内を渡御します。お時間のある方、ご興味のある方はぜひ見物にお運び頂けると嬉しいです。詳しいスケジュールなどは築地波除稲荷神社ホームページにある特設ページをぜひご覧ください。


必見!『DOMA秋岡芳夫展』

2011年11月03日 11時07分04秒 | 催しごと

  旧十月八日。上弦の月です。11月に入っても暖かい日が続いています。昨日は一の酉。築地波除神社でも規模は小さいながら酉の市が行われ、半袖姿の人も目にする陽気の中、威勢のいい掛け声で熊手が売られていました。今年は二の酉(11月14日)、三の酉(11月26日)まであります。三の酉がある年は火事が多い、とよく言われますが、これ以上の災いがない穏やかな年の瀬になりますように。

 目黒区美術館で10月29日(土)に始まった展覧会『DOMA秋岡芳夫展~モノへの思想と関係のデザイン』を観に行ってきました。(12月25日まで開催)
1103yoshioakioka  圧倒されるヴォリュームの展示品と、秋岡芳夫の志が立体感を持って伝わって来る展示構成が素晴らしく、しばし夢のような空間を歩きながら、思わず頷いていたり口角が上がってしまうほどでした。
 『熊本県出身の秋岡芳夫(1920ー1997)は、童画家、工業デザイナー、生活デザイナー、プロデューサー、家具の収集家など多彩な顔を持ち、伝統と現代を融合させるそのユニークでユーモアのある思想と方法論は多くの人々に影響を与えてきました。』目黒美術館館長 田中晴久(パンフレット ごあいさつより)
 館内には、絵画、挿絵や装丁を行った本、椅子、ラジオキャビネット、露出計、カメラ、三菱鉛筆uni、学研「科学」の教材、オートバイ、子供のための家具、漫画によるレンダリング(アイディアの描写・描出)、ポット、木の食器、木製子供のおもちゃ、木工道具などなど紹介にある通り実に多彩です。そしてその一つ一つが有機的である、と表現したらいいのか、温もりを感じます。
 わたしを含めきっと多くの人が共感しているであろう、秋岡芳夫の言葉があります。

消費者をやめて愛用者になろう!

 1971年に刊行された著書『割り箸から車(カー)まで』のサブタイトルにある言葉です。初めてこの言葉を見た時、ハッとさせられるものがありました。モノをつくること、モノを手に入れること、モノを手放すこと、そのすべてが自分の暮らしの創造性に深く関わらなければならないことを考えさせられました。今年、日本はいろいろなことにおいて転換を迫られました。今こそこの言葉の重みを受け止め、暮らしを見直して行く時なのかもしれません。そういった意味でも、とてもタイムリーで重要な展示だと思います。
 館内に足を踏み入れるとまず目に飛び込んでくるのが、1500本もの竹とんぼです。秋岡芳夫は晩年の十年間、竹とんぼを作り続けました。二本と同じものが無いそうです。目にもシンプルな遊び道具、手を離れて9秒から11秒間滑空する竹とんぼ、その飛型の美しさは儚げではなく輝きなのだなぁ、と最後にもう一度竹とんぼを見て感じました。たくさんの人に観てもらいたい展覧会です。

DOMA秋岡芳夫展~モノへの思想と関係のデザイン
目黒区美術館 Meguro Museum of Art
2011年10月29日(土)~12月25日(日)月曜日は休館

秋岡芳夫の御次男、秋岡 欧はブラジル・スタイルのマンドリン、バンドリン奏者として、30年以上に渡って弦楽トリオ、ショーロ・クラブで活躍しています。優しくとても温厚な人柄でありながら、芯が強く創造力に満ち、とても魅力的です。生まれ育った環境とDNAをあらためて感じました。
Choro Club Homepage
秋岡 欧 Website


Join at Victoria & Albert Museum

2011年08月23日 18時32分24秒 | 催しごと

 旧七月二十四日。二十四節気の【処暑(しょしょ)】です。 

陽気とどまりて、初めて退きやまんとすればなり
               『暦便覧』(天明八年/1788年発行)

 早くも秋雨前線が日本列島に沿って停滞し、ここ数日間は10月くらいの陽気で、そらも愚図つきっぱなしでしたが、東京では今日の午後から、また残暑が戻ってきました。それでも、もう猛暑日になるようなことはなさそうです。蝉しぐれが止んで夜になれば秋の虫が元気になってきているようです。

 “暮らしのリズム”では何度もご紹介している建具・指物の伝統工芸師、田中清八さんと、
オランダをベースに活動するイスラエル出身のアーティストのBoaz Cohenさんと山本紗弥加さんによるユニット(と言ったらいいのかな)『BCXSY』の共同作業0630bcxsyよる素晴らしい作品[Origin part I: Join]が、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館に収蔵されることになりました。
 まずは2011年9月17日~25日に開催される特別展『ロンドン・デザイン・フェスティヴァル』でお目見えし、その後は半永久的に、V&A博物館の収蔵品として常設展示され、場合によっては他国などで開催される展示に貸し出されたりすることもあるでしょう。ロンドンを訪れるご予定がある方は、ぜひ博物館に足を運んで
[Origin part I: Join]をご覧頂きたいと思います。

 山本紗弥加さんから頂いたメールを抜粋してお伝えします。
「本当に光栄な事で、私達もすごく感激しています。また博物館に常設させる事で10年後、50年後、もし悲しくも日本で建具細工を見る事が出来なくなっても、このすばらしい技術・伝統を人々に知っていただけるという事が私はすごく嬉しいです。これも田中さんのすばらしい腕前のおかげだと思っています。」
「(東日本大震災の復興支援に関して)
私自身何もする事が出来ず、自分の力の小ささを実感し、歯がゆい思いをしています。何か少しでも役に立ちたいと思いBoazと話し合い、実は建具作品の1セット目(今回V&A博物館に買い取っていただけたものです)の50%売り上げを震災にあった方々の支援に当てるための告知を込めた展示を今年(2011年4月)ミラノで行ないました。結局ミラノでは買い手は付かなかったのですが、今回こういった形で買い手がつき、ささいですがこういった形で支援が出来る事がすごく嬉しいです。」

Boazさん、紗弥加さん、田中清八さん。本当におめでとうございます。


田中清八さん、[BCXSY]に関してはこちらもぜひご覧下さい。
2011年2月11日『おめでとう![BCXSY]、田中清八さん』
2010年6月30日建具職人・田中清八さんとBCXSYの共同制作

2008年2月20日『伝統工芸、指物 師・田中清八さんを再び訪ねて』

2007年6月17日『職人技に触れる。指物師・田中清八さんとの再会』
2006年7月2日『指物建具工芸師、田中清八さんを訪ねる』


BCXSYのホームページ
http://www.bcxsy.com/

Origin Part I: Joinの詳細
http://www.bcxsy.com/work/collections/2010/origin-part-i-join/

Victoria & Albert Museumのホームページ
http://www.vam.ac.uk/