昨日の講義で話せなかった事

花粉症の患者さんのお話なんですけどね。目のかゆみが心配なので、いっその事水中眼鏡をして歩きたいくらいだと申しておりました。花粉症の方にとっては辛い季節ですなぁ（　´д｀）
でもね、さすがに恥ずかしくて水中眼鏡かけて街中は歩けないと。そう申すもので、「水中眼鏡だけだから変なんですよ。水着で水中眼鏡なら恥ずかしくない！」と解決策をご提案したのですが、どうも採用される見通しは低そうです（；・∀・）

・・・おとなしく治療に専念します（￣ω￣）

えーそれでは。

昨日の講義では、急遽おふたりのモデルさんを治療する事になり、時間の都合上お話しできなかった内容がございました。少しだけ付け加えたいと思います。
難しい話ではないので、気楽に読んでください。



＜産後の諸症状について＞

よく「産後は目を使うな」と申します。あれは古典的にはちゃんとした理由がございましてね。
ものを集中して見るという行動は目でかなりの血を消耗します。この場合の集中とは本を読んだりテレビを見たり、一点に集中する目の使い方を示しております。
出産で肝血を損なうために、産後の体は血虚の状態です。この状態で目を使うと肝血をより消耗する結果となり、産後の肥立ちに影響する恐れがございます。それでも若い頃は大丈夫ですが、年をとると目の病になる可能性が出て参ります。故に、産後は目を酷使すべきではありません。

また、産後間もない女性が直射日光に当たるとシミ・そばかすの原因となります。出産によって陽気を損なっているからでしょうか？時代劇を見ていると、時代考証をしっかりやっている作品では出産直後の女性は必ず日傘をさしていますよね。お年寄りの方に聞くと知っている方がいらっしゃいますが、この事は若い方は知らない方も多いと思います。
お天気がいいとついつい赤ちゃんと日光浴を・・・と思いがちですが、外出時は日傘を忘れずに。というか、やはり産後の肥立ちがあけるまでは外出は控えた方がいいですね。

これは余談ですが、とちぎテレビでは必殺仕事人の再放送をやってるんです。でね、時代劇が大好きなうちのおチビと一緒に観てたんですよ。
そしたらですね、女の人が次々と殺される連続殺人事件が起こるわけですよ。でも被害者の体には一切傷がなく、きれいなまま。殺しの手口は刺殺なのですが、どうやって殺したのかわかりますか？

・・・実はですね。女性の性器を刀で一刺し、という手口だったんです。だから体には傷がなかった。

そんなオチ（っていうのかしら？）だったわけですが、この事は『洗冤集録』という中国の古典（世界最古の法医学書）にしっかり書かれているんです。「傷がなければ産門（既婚女性の膣の事）を調べろ」と。古典ってのは面白いものですし、時代劇ってのもまた古典医学の描写が非常に多くて面白いものでございます。

その晩、おチビは100円ショップの刀で娘の股をつついて殴られてましたが（；・＿・）

さておき、『経心方』という古典には、産後目がくらみ意識不明になった（肝虚の状態）場合は、酢を口や鼻に塗り酢の匂いをかがせる、または少しずつ酢を飲ませると書いてあります。また『子母秘録（しもひろく）』には分娩後意識を失い唇や口が冷たくなり、脈が沈み、顔は青ざめ、ものをいわないという症状には鶏卵と一煮立ちさせた酢を混ぜて産婦に与えると書いてあります。たちどころに安定するそうでございます。
お酢（酸味）には肝気を収斂させる作用があるので、それを応用した対応なのでしょう。



＜乳汁不足、乳腺炎＞
栄養状態を良くし、水分をしっかりとって肩こりを取る事がまず第一です。肩の経絡や胸の経絡が詰まっていると起こります。ほら、胸の大きい人って母乳が出にくいって聞きませんか？あれは胸の重さで肩が凝っているからなんですよ。
乳汁不足は脾虚陰虚証で小腸経の熱、乳腺炎は胃経の熱が多いです。



＜産後の脱毛＞
これは少しお話しましたが、腎虚陰虚証、もしくは肝虚陰虚証で発生した虚熱が上昇し、頭にこもった際に起こります。通常は頭から適度に陽気を発散していますが、虚熱が旺盛で発散しきれない結果、熱の行き場がないので髪の毛と一緒に熱が抜けるというわけですね。
治療では本治方をしっかりやって、まずは熱の発生源を抑えます。その上で頭に停滞している熱を発散してあげるときちんと回復します。
産後不眠も同じ病理状態ですね（頭に陽気が残るために眠れなくなるのです）。