ヴァイオリン一挺を片手に、ふらりと舞台に現れた人物を目撃した瞬間、私は思わず「のだめカンタビーレ」の峰くんだ!と叫びそうになった。
画像を後でよくよく観察すればロッカーで男っぽいキャラの好みのタイプ、峰君の風貌と異なることは一目瞭然なのだが、シルクの暗めな真紅のシャツにブラウンに近い金髪、耳元が遠めになんだかきらきらしている・・・それが最初にお目にかかった室内楽の魅力をもっともっと広めたいとトリオの大作を作曲した敬愛するBeethovenから命名した「Bee」のメンバー、ヴァイオリニストの石田泰尚さんだった。この「Bee」は、現在もっとも私が注目している男闘組である。
結成した翌年の本格的に演奏活動をはじめて昨秋のコンサートのチケットが、なんと満席でとれなかったという経緯がある。デビュー10周年を迎えたソフトなホスト系の雰囲気とダイナミックで情熱的な演奏スタイルに定評のある元祖茶髪のピアニスト、及川浩治さんの人気によるものだろうか。本日の芸術劇場という大ホールを満席にする集客力は、国内ではあまりなじみのない”トリオ”という男三人の新しい抱き合わせ販売の成功でもある。
冗談はさておき、オーケストラを担当した神奈川フィルハーモニー管弦楽団のソロ・コンサートマスターというポストに就任している石田さんは1973年生まれ。国立音大の在学中よりゲスト・コンマスとしても活躍した前途有望なヴァイオリニスト。メン・コンは及川さん曰く「情熱と繊細さが同居している」という彼の持ち味に、まさにふさわしい選曲である。この日も一緒に同席した友人がすべてのコンチェルトで最も好きだというメンデルスゾーンVn協は、ヴァイオリンを習うおこちゃまたちが中学生ぐらいから弾かせてもらえる憧れの一曲でもある。しかしその人の人間性や音楽性があらわれる大変難しい曲で、むしろコンクールや受験で選ぶ曲ではないかもしれない。あまりにも耳になじんだ珠玉の名曲は、かえってどんなに上手に弾いても聴衆のこころをつかむのはやさしくない。まさに情熱と繊細さが同居しているメンコンを、この業界では奇抜で不要なアピールとも受けとめられかねない風体とは別に、石田さんは自分の音楽性を存分に発揮している。彼の表現したいコンセプトは、そのスタイルとともに明確である。しかし惜しいことに楽器の質が、彼にはあっていないかもしれない。
これはチェリストの石川祐支さんにもいえなくもない。札幌交響楽団の首席を努める石川さんが、99年日本音楽コンクールで第1位を受賞した時の、毎日新聞主催による受賞者記念演奏会から注目していた人物である。石川さんの演奏は、安定したテクニックとともに音楽に真面目に取り組む真摯な姿勢が伺われる。今夜のドヴォルザークのVc協も、天才ジャクリーヌ・デ・プレほどの奔放な謳いには至らぬものの、整った演奏である。もっと楽器が響けばさらに素晴らしい音楽になると感じた。
最後の発起人である及川さんは、さすがにベテランである。のだめ効果で人気あるラフマニノフの2番を演奏。トリオだけでなくオケもしきり、盛り上がるところは派手なパフォーマンスで団員のお尻をたたく。わずかなミスタッチは気にしない。彼らも私たちも音楽の楽しみを求めているのだから。ピアニストの中村紘子”さま”が、「プロの音楽家は演奏だけでなく演出も必要」という格言を体言している及川さんはりっぱである。彼がイケ面を集めたと冗談飛ばすように、3人とも全然イケ面ではない。少なくとも私は全然好みではない。しかしピアニストととしての華がこの方には備わっている。そして自分自身のプロデュース能力とセンスもあり。
「僕は男が好きなもので(笑)。熱い音楽を持ったヤツと全身全霊をぶつけ合うような音楽をやりたいんですよ。それには男同士の方がいい。」と断言する及川さん。
もしかしたら意外と体育会系?そんな彼らの次の演奏会も決定。(10/28 オペラシティ)今後の活躍にも期待したい男闘組である。
------------------- 3月6日 東京芸術劇場
指揮:現田茂夫
ピアノ:及川浩治 ヴァイオリン:石田泰尚 チェロ:石川祐支
演奏:神奈川フィルハーモニー管弦楽団
曲 目: メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 Op.64
ドヴォルザーク/チェロ協奏曲 ロ短調 Op.104
ラフマニノフ/ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調Op.18
画像を後でよくよく観察すればロッカーで男っぽいキャラの好みのタイプ、峰君の風貌と異なることは一目瞭然なのだが、シルクの暗めな真紅のシャツにブラウンに近い金髪、耳元が遠めになんだかきらきらしている・・・それが最初にお目にかかった室内楽の魅力をもっともっと広めたいとトリオの大作を作曲した敬愛するBeethovenから命名した「Bee」のメンバー、ヴァイオリニストの石田泰尚さんだった。この「Bee」は、現在もっとも私が注目している男闘組である。
結成した翌年の本格的に演奏活動をはじめて昨秋のコンサートのチケットが、なんと満席でとれなかったという経緯がある。デビュー10周年を迎えたソフトなホスト系の雰囲気とダイナミックで情熱的な演奏スタイルに定評のある元祖茶髪のピアニスト、及川浩治さんの人気によるものだろうか。本日の芸術劇場という大ホールを満席にする集客力は、国内ではあまりなじみのない”トリオ”という男三人の新しい抱き合わせ販売の成功でもある。
冗談はさておき、オーケストラを担当した神奈川フィルハーモニー管弦楽団のソロ・コンサートマスターというポストに就任している石田さんは1973年生まれ。国立音大の在学中よりゲスト・コンマスとしても活躍した前途有望なヴァイオリニスト。メン・コンは及川さん曰く「情熱と繊細さが同居している」という彼の持ち味に、まさにふさわしい選曲である。この日も一緒に同席した友人がすべてのコンチェルトで最も好きだというメンデルスゾーンVn協は、ヴァイオリンを習うおこちゃまたちが中学生ぐらいから弾かせてもらえる憧れの一曲でもある。しかしその人の人間性や音楽性があらわれる大変難しい曲で、むしろコンクールや受験で選ぶ曲ではないかもしれない。あまりにも耳になじんだ珠玉の名曲は、かえってどんなに上手に弾いても聴衆のこころをつかむのはやさしくない。まさに情熱と繊細さが同居しているメンコンを、この業界では奇抜で不要なアピールとも受けとめられかねない風体とは別に、石田さんは自分の音楽性を存分に発揮している。彼の表現したいコンセプトは、そのスタイルとともに明確である。しかし惜しいことに楽器の質が、彼にはあっていないかもしれない。
これはチェリストの石川祐支さんにもいえなくもない。札幌交響楽団の首席を努める石川さんが、99年日本音楽コンクールで第1位を受賞した時の、毎日新聞主催による受賞者記念演奏会から注目していた人物である。石川さんの演奏は、安定したテクニックとともに音楽に真面目に取り組む真摯な姿勢が伺われる。今夜のドヴォルザークのVc協も、天才ジャクリーヌ・デ・プレほどの奔放な謳いには至らぬものの、整った演奏である。もっと楽器が響けばさらに素晴らしい音楽になると感じた。
最後の発起人である及川さんは、さすがにベテランである。のだめ効果で人気あるラフマニノフの2番を演奏。トリオだけでなくオケもしきり、盛り上がるところは派手なパフォーマンスで団員のお尻をたたく。わずかなミスタッチは気にしない。彼らも私たちも音楽の楽しみを求めているのだから。ピアニストの中村紘子”さま”が、「プロの音楽家は演奏だけでなく演出も必要」という格言を体言している及川さんはりっぱである。彼がイケ面を集めたと冗談飛ばすように、3人とも全然イケ面ではない。少なくとも私は全然好みではない。しかしピアニストととしての華がこの方には備わっている。そして自分自身のプロデュース能力とセンスもあり。
「僕は男が好きなもので(笑)。熱い音楽を持ったヤツと全身全霊をぶつけ合うような音楽をやりたいんですよ。それには男同士の方がいい。」と断言する及川さん。
もしかしたら意外と体育会系?そんな彼らの次の演奏会も決定。(10/28 オペラシティ)今後の活躍にも期待したい男闘組である。
------------------- 3月6日 東京芸術劇場
指揮:現田茂夫
ピアノ:及川浩治 ヴァイオリン:石田泰尚 チェロ:石川祐支
演奏:神奈川フィルハーモニー管弦楽団
曲 目: メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 Op.64
ドヴォルザーク/チェロ協奏曲 ロ短調 Op.104
ラフマニノフ/ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調Op.18
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