千の天使がバスケットボールする

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『しあわせの隠れ場所』

2010-10-17 12:57:00 | Movie
女優のサンドラ・ブロックは、米国の映画館経営者の投票による2009年の「最も興行的に稼げるスター」に選ばれた。彼らの見込みどおりに「フォーブス」誌によると2009年6月~10年6月までの収入が48億円とハリウッド女優の中でも一番の稼ぎ頭。そんな彼女の出世作は、1994年のアクション映画の「スピード」ヒロイン役。それほど美人でもなく、米国人好みのグラマラスなスタイルでもないと思われた彼女についたニックネームが、”Next door girl"(隣のお姉さん)。インタビューを読んでも、彼女の気さくで気風もよく頭の回転も速い賢さが感じられるが、自分の親しみやすいキャラの売り出し方もよくわかっているのもサンドラだ。それにも関わらず、失敗作を“bomb(爆弾)”と呼ぶハリウッドで「ブロックは軍需工場よりも多くの爆弾を製造した」というありがたい?定評までいただいている。しかし、本作は公開3週目にして興行成績全米1位を獲得。これまで1億9000万ドルを超える興行成績を上げた。もう爆弾製造機なんて呼ばせない?

隣のお姐さんが結婚した。ミシシッピ大学の同級生だっただんなは、やり手のビジネスマン。結婚後、飲食店を次々と店舗を増やして、今や85店のオーナー。インテリアデザイナーとしても活躍する隣のお姐さんは、ふたりのこどもにも恵まれて、歳月とともに豪華で邸宅と素敵な家庭を運営する貫禄のある肝っ玉母さんになった。

リー・アン(サンドラ・ブロック)は、ここ南部でも冬の凍てつくように寒い夜、半袖シャツでとぼとぼとひとりで歩いている黒人の高校生マイケルに声をかけた。正義感が強く、親切な女性。そんな印象のアンは、最初は一晩だけと思っていたのだが、彼のおかれている状況に同情するうちに、服を買い与え、ベットを提供し、部屋と机も与え、とうとうひとりの家族として迎えるようになった。アンが用意してくれたベットは、彼にとっては生まれて初めての自分専用の自分のためのベットだった。そして、巨漢の体を活かしてアメリカン・フットボール部に入部したマイケルは、家族の助けをえて自分の人生を切り開いていくようになっていく。

本作は、実話である。アメフト全米代表のスター選手だというマイケル・オアーの生い立ちが書かれた本がベストセラーとなり、映画化された。映画の中で最初に気になったのが、裕福な資産家の自己満足のための慈善事業に近いのではないだろうか、白人の偽善ではという懸念である。アンと同じようなクラスの、最新ファッションで着飾りエステで磨いたママ友たちとの高級レストランのランチでの会話である。アンは、彼女達に原題にもつながるある質問をする。美食を楽しむ彼女達から返ってくるのは、常識的で傷つくことを恐れる上品な会話の退屈さと空しさである。こういう付き合いは私には苦痛とも思ったのだが、考えれば職場でのランチの仲間とも似たようなものだ。女性には、どうでもよい日常会話の相手が必要なのだが、最初のランチでの場面でアン自身も気がついているのだが、気楽な会話をする友人たちを失うことはできなかった。ところが、ランチの二回目の場面では、映画の要となる会話がある。

You're changing that boys life.
こう感想を述べる友人に、アンはきっぱりと答えたのが次のセリフである。
No, he's changing mine.

そして実際にマイケルに会ったこともない友人が、失礼な心配をするとアンは憤然と席をたち彼女たちに絶交宣言をする。潔く、エネルギッシュで、善意の人、男前のアンの魅力を見事に演じたサンドラ・ブロックの演技と、脇を固める家族や家庭教師のキャラクターとユーモラスな場面が、ともすれば金持ちの道楽に流されかねない安易なアメリカン・ドリームという見方をばっさりはねのけた。最後の大学選びの理由を明快に答えるマイケルのセリフは、心にせまってくる。孤独で貧しくホームレス同然の黒人の少年のサクセスストーリーではなく、家族というチームの結束の強さに視点をもっていったからこの映画は成功したのだろう。

原題:The Blind Side
監督・脚本:ジョン・リー・ハンコック
2009年米国製作

■これも”爆弾”にならなかったサンドラ姐さんの映画
『あなたは私の婿になる』


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