千の天使がバスケットボールする

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「インドの衝撃 わきあがる頭脳パワー」NHKスペシャル

2007-01-29 22:58:43 | Nonsense
キムタク主演の「華麗なる一族」を観ちゃった方が後悔するほどおもしろかったのが、昨夜のNHKスペシャル「インドの衝撃 第一回わきあがる頭脳パワー」であろう。

とっくに衆知のことではあるが、IT関連のヘルプデスクに電話すると流暢な英語でお世話してくれるのが、インド在住のインド人だったりする。独立から60年、IT産業を牽引きに大躍進しているのが11億の民を抱えるインド。その秘密を探ると、超エリートを育てて科学技術の振興を図るシステムにあるようだ。なかでも「IIT(インド工科大学)に落ちたらMITに行く」とまで伝えられるインド最難関校IITは、夜中の一時まで図書館を開館、徹底的に論理的思考を鍛える独自のカリキュラムから、世界的に活躍する卒業生を数多く輩出している。
物流システム、二階建ての航空機の設計、ソフトウエア開発などいまやインド人の存在、頭脳ぬきには語れない。

その優秀な頭脳は、インドでどう育てられたのか。
教育の崩壊、地盤沈下を叫ばれる日本人としても、無視できない興味深い内容だった。(以下、固有名詞を控えていないので、記憶に残っている印象のみ)
まず小学校での算数の授業風景。
33×33=1089 333×333=110889 
という解の規則性に注目し、3333×3333 33333×33333 と教師の質問に次々に挙手をして、競いあい答えるこどもたち。清潔な制服を着ているところから私立小学校だろうか、比較的裕福なこどもたちが通学しているようにも見える。「算数はおもしろい」とはきはきとマイクに答えていた少女の大きな瞳が輝いている。ゼロを発見したインドでは、現在も数学教育に力を入れている。それは家庭教育でも同様。数字を加減乗除して、同じ数をつくるゲームに興じる姉と妹の姿が紹介されたが、行儀のよい彼女たちを見守る両親と背後に見える本棚の蔵書から、教育熱心なインテリ家庭と見受けられる。

ここまでは日本の教育熱心なお受験家庭も勝るとも劣らない家庭環境だとは思ったのだが、タイトルどおりに衝撃を受けたとしたら後半のIITに進学する予備校の様子だった。
インドの貧困層が密集する地域に、未整備の道路を歩いていくとトタン屋根、バラック建てのその予備校がある。授業料は、他の予備校に比べて格安。1000人収容する教室には、肩を寄せ合い若者が熱心に授業を聴講している。雨が降ると片側には壁がないため、傘をさして半分濡れながら熱心にノートをとる生徒の姿も見受けられる。誰もが真剣そのものの表情だ。教室の主催者でもある教師が予備校を開校したきっかけは、ケンブリッジ大学に優秀な成績で合格するものの、貧しかったために進学を断念した時の体験による。そのためどんなに貧乏でも教育の機会均等のために、夕方からはじまる選抜30名の特別クラスでは、授業料免除、宿舎と食事も提供している。昨年は、なんとこの30名から28名がIITに合格するという実績を誇る。
そのなかの一人、アーザード・クマール君に同行して、彼の実家にカメラが取材に行く。彼は、農業を営む両親、ふたりの弟、妹、祖父と村で生活をしていた。小学校を卒業すると、片道2時間かけて中学校に通っていたと言う。いかにも土地は貧しく、祖父の病院代にも事欠くと窮乏を訴える父。家族だけではない、村一番の秀才、アーザード君には、村民みんなの期待が肩にのしかかる。「IITに合格したら、いずれこの村に中学校を建てたい。」
彼だけでなく、こうした一流大学をめざす青年たちの表情は、誰もが勉強熱心で真剣である。その表情は、性別、顔立ちのつくりに関わらず、ある種の荘厳ささえ醸し出している。もしかしたら戦後の復興期の日本の青年たちもこのような感じだったのだろうか。
優秀な頭脳は、国家の隆盛を左右するという認識を国家レベルでもっている。そのために生まれたエリート養成のシステム。しかし、インドの識字率は65%程度。
テレビの画面に映る庶民の暮らしぶりは、まだまだ発展途上国だ。一部のエリートを育てることも必要だが、国民全体の教育レベルの底上げをしない限りは、本当に豊かな国にはならないのではないか、そんな印象もした。