千の天使がバスケットボールする

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男が女に惚れる時「ハケンの品格」③

2007-01-25 23:45:15 | Nonsense
第三回「ハケンの品格」は、なにかと派遣社員の大前春子を敵視し、彼女をあからさまに嫌う態度を表していた東海林武が、帰宅する途上のバス亭前にいた彼女にいきなりキスをして終わった。。。

ストーリーは、ブームのマグロの解体ショーに目をつけた彼らが、売り場拡張に成功したデパートの一角でマグロ解体ショーを企画するが、マグロの解体師がいない。そんな中運よく”マグロの神さま”ことツネさんとコンタクトをとって東海林が出演依頼の交渉に成功する。準備を整えいざというところで、打算的な東海林のひと言でツネさんを怒らしてしまい、不注意から怪我をさせてしまう。ところがかわりの解体師が見つからない。
人生最大のピンチ!マグロを大量に準備して肝心のマグロの解体ショーが中止になったら、東海林のクビが飛んでしまう。そんな絶対絶命の危機を救ったのが、時給3000円スーパー派遣の春子だった。★★★
その春子(篠原涼子)を眺め、胸につまる思いで一杯の東海林(大泉洋)。この時の彼の感情が、窮地を救ってくれた春子への恋心に満たされていたわけではなかった。シゴトにおける厳しさと職場における友情に、胸がはりさけそうだったのだ。春子にひと言、感謝の気持ちを伝えたいと声をかけたのだが、降る雪を手のひらで受け止めて微笑む春子に衝動的にキスをしてしまったのだ。理屈ではない、まさに自分で自分の気持ちを理解する前に、いや自分の感情に気がつく前に感情の奔流が溢れるままにいきなりキスをした。ルール違反だ。第三回目でキスをするのは早くないか。最終的に東海林が春子にほれるのは予想できたが、急展開で今後の成り行きが気になる。

ところで東海林のように仕事がデキルと自他ともに認める生意気な男が強烈なライバルであり、周囲もあきれるくらいに嫌っていた女性を好きになっていた、という話は珍しくない。大学時代の友人の郷里での同級生の話だが、彼女の中学時代のクラスメートに非常に頭のキレル男の子がいた。その男の子A君は、同じクラスメートのB子を徹底的に嫌っていた。最初は、顔立ちもよく、成績も抜群な彼女への関心がよぶA君の幼い気持ちの裏返しでの嫌がらせだろうと周囲は静観していた。然し、その嫌がらせはどんどんエスカレートしていき、今でいうイジメの状態になりクラスでも問題になるくらいだった。この時点で、クラスメートもA君の行動や言動に怒りを覚えるようになった。とうとうその地方都市で医師をつとめるB子の父親が、学校に相談にくる事態にまでなった。クラスメートが理解できなかったのが、何故すべての方面において何事も優秀で模範的であるA君が、イジメなどという愚劣な行為をするのか。また何故、いじめられる根拠が思い当たらない理由のないB子だけをターゲットにするのか。

大学に進学して親しくなった友人から私はその話を聞いて考えた。やっぱりそうは言ってもA君は、B子を好きだったのではないか。最初はみんなそう思ったが、あの陰湿ないじめ方は好きだからという理由では、決してないと断言した。彼女の分析によると、頭脳優秀なA君にとって唯一自分と対等にはりあえるライバルが、B子だった。それが脅威でもあり、気に入らなくもあり、ゆるせない存在だったのではないだろうか。
私は友人の指摘は、けっこう的を得ていると思った。けれども、愛と憎悪は表裏一体。A君は気がついていないけれど、憎悪の裏には自分と対等にはりあえる貴重な女性としての存在と離れることができないのではないかとも感じていた。それに敵対しているふたりだが、共通している点もなきにしもあらず。ふたりとも、大学受験に関しては第一希望は能力を充分に発揮できずに挫折組。A君は、別の友人が合格したT大学に落ちて私立(といっても一番の難関私大)に進学。B子は、医学部受験を親から期待されていたが某大学に進学。
その後東京に進学した彼、彼女たちは時々呑み会を主催して旧交をあたためていたのだが、話題になるのはこのふたりのことだった。
どうもあのふたり、時々ふたりだけで会っているみたいなんだよね、そうつぶやく耳年増で猥談の好きな友人の不思議そうな表情は、今でも忘れられない。

東海林タイプで傲慢な男が、男以上にできる女性に惚れることは理解できる。優秀でも謙遜するタイプではない。自分の能力に自信満々な男に限って、能力の高い女性を敵視するにも関わらず、心底では賢い女性を好む。男と女は矛盾している。米国のマスコミはクリントン元大統領とヒラリー夫人を不思議な夫婦として度々報道してきたが、クリントン大統領のような野心家タイプが、ヒラリーのように弁護士としては自分よりも優秀で高給とりだった女傑を選ぶ気持ちもわからなくもない。
少し話が長くなったが、結論。結局、A君とB子はどうなったのか。ここまで読んでいただいた方の予想どおり、紆余曲折あり家族の反対もあったが、身内だけで結婚式を挙げたそうだ。その事実は、かっての同級生たちを驚かすにたるインパクトを与えたが。