最近は、仕事で全国各地に行くことが多くなった。そのたびに思うのは、新幹線や飛行機の速さだ。とくに新幹線。東京から、仙台・新潟・富山・金沢などは、すぐに着いてしまう。ちょっと前まででいえば、北関東の宇都宮か前橋あたりの感覚だ。移動時間が短すぎて、遠くに来たという実感がない。
10年後には、リニアモーターカーが開通する予定になっている。東京-名古屋間が40分になる。電車賃はともかく、時間的には、名古屋は首都圏の一部になる。東京にいても、名古屋にいても、ほとんど違いがなくなる。
電車だけではない。遠くない将来に車の自動運転が普及すれば、「車の中で寝ている間に目的地に着く」というのが当たり前になり、これまた移動革命が起きるであろう。電気自動車の場合、床は段差がなくて平たい。車の中は、箱みたいな空間になっており、布団と枕が置いてある。寝ていれば、朝には勝手に目的地に着いている。まさに、「移動するカプセルホテル」だ。
21世紀に入って十数年。いよいよ、SF映画みたいな世界が現実になろうとしている。2001年頃は、「20世紀とたいして変わらないな?」とよく言われていたが、その判断はまだ早すぎた。2020年頃から、いよいよ世界が、本当にSF映画みたいになってくる。
問題は、それが人間の精神にどういう影響をもたらすかだろう。
考えられるのは、「おそらく、この世界そのものが、壮大なバーチャル・リアリティーに見えてくるのではないか?」ということ。
というのも、もともと、この世界は壮大なバーチャル・リアリティーなのである。これは、精神世界の探求者にとっては、古来から常識だった。でも、世間の一般人には、いまひとつ普及しなかった考え方。
でも、だんだん、昔はどうにもならなかったことが、自由自在にできるようになってくる。遠いところにも素早く移動できるし、物理的な障壁がだんだん薄れてくると、この世界の本質が、あらわになってくるに違いない。
ていうか、遠いところに移動する必要もなくなってくる。代理となる昆虫サイズくらいのロボットを現地に派遣して、自分の目と耳の代わりをさせればよいのだ。まるで、現地にいるのと変わらない現地体験ができるようになるであろう。
筆者のように、好奇心は旺盛だけど、行動力が乏しくて、どこにも行かないタイプの人にとっては、実にありがたい技術だ。最近は、上にも書いたように国内ではアチコチに行ってるけど、しょっちゅう海外出張している知人などと比べたら、まだまだ行動範囲は狭い。しかし、これからは、行動範囲を広げなくても、認識範囲をどんどん広げることができる。
いろんな面で危険な技術ではある。とくに、盗撮・盗聴をいかにして防ぐかが、将来は極めて難しい課題となるだろう。自分の身近にいる昆虫が、地球の裏側の人と直通する情報端末だった・・・というようなこともあり得る。
例によって話がズレてきたので、もとに戻すと、要するに近い将来、この世はバーチャル・リアリティーに見えてくる。今までにも、精神世界の探求者には、そのように見えていた。でも、これからは、世間の一般人にも、明らかにそう見えてくる。人によって個人差はあるだろうけど、おそらく大半の人にとって、そう思える日がきっと来る。
そのとき、精神世界というジャンルが大きくクローズアップされるものと筆者は見ている。今までは、どちらかといえば、「陽が当たらない日陰のサブカルチャー」という扱いだったけど、おそらく遠くない将来に脚光を浴びることになる。
(つづく)