2016年12月10日(土) 新国立劇場 中劇場
●第一部 -混沌-
1階 17列 センターブロック ややシモテ寄り
舞台はロンドン。王ヘンリー四世は、前王リチャード二世から王位を簒奪した罪悪感に苛まれていた。一方、長男ハル王子は大酒飲みの、無頼の騎士フォールスタッフと放蕩三昧。そのころノーサンバランド伯の息子パーシーが謀反を起こす。シュルーズベリーに出陣したハル王子とパーシーの一騎打ち。勝敗の行方は……。
●第二部 -戴冠-
1階 14列 センターブロック ややカミテ寄り
フォールスタッフはシュルーズベリーの戦いで手柄を立て、過去の罪状を許されるが、ノーサンバランド伯の討伐軍に加わることになる。昔馴染のシャロー判事の暮らすグロスターシアに徴兵に訪れた彼に、ハル王子がヘンリー五世として即位したとの報が。意気揚々と新王の前に姿を現すフォールスタッフを待ち受けていた運命とは?
皇太子ヘンリー(ハル)=浦井健治、1-ヘンリー・パーシー(ホットスパー)/2-ピストル=岡本健一、大司教リチャード・スクループ=勝部演之、ノーサン・バランド伯=立川三貴、1-番頭/2-地方判事サイレンス=綾田俊樹、1-ギャッズヒル/2-地方判事シャロー=ラサール石井、ヘンリー四世=中嶋しゅう、ジョン・フォールスタッフ=佐藤B作。水野龍司、木下浩之、有薗芳記、今井朋彦、青木和宣、田代隆秀、那須佐代子、小長谷勝彦、下総源太朗、鍛治直人、川辺邦弘、佐川和正、亀田佳明、松角洋平、松岡依都美、藤側宏大、岡﨑加奈、清水優譲。
作=ウィリアム・シェイクスピア、翻訳=小田島雄志、演出=鵜山仁。
(役名の前の数字は1:一部、2:二部)
通し観劇。第一部、第二部共に約3時間程度。
新国立の座席は固いので心配していたが、エアウィーブと共同開発したという貸しクッション(1日500円)がとても効果的だった。
ちょっと座高が高くなるのが難点だけど(^_^;)
「ヘンリー四世」は、以前さい芸で蜷川幸雄演出版(ハル王子=松坂桃李、フォールスタッフ=吉田鋼太郎)を観劇したが、その時はたしか4時間で一部・二部を一気に上演したタイプだった。
ロビーに置いてあった模型。木組みで出来た森のような、不安定(そう)な足場のセットだった。この上をキャストが登り降りするのだ。
シモテ端には赤い砂が沢山の砂場。舞台上には小さな板場があり、たまに移動したりして、二部のラスト(ハルがヘンリー五世として即位する)には五角形になったので「ほほー」と感心してしまったw
またいつもはカーテンで閉ざされている、最カミテと最シモテを解放しているので、扇形が広い!
座る席によって随分と印象が変わるだろう。私は一部と二部で、センターブロック内を8席ほどズレただけだが、かなり見え方が違った。
新国立にしては客席使いが多かった。しかしまぁマイクの調子は何とかならないものか。良く聞こえる時と、そうでもない時と。謎すぎるw
正式な世継ぎではなかったヘンリー四世(中嶋しゅう)が、リチャード二世から力づく(というか若干セコイ)方法で王位を奪い即位するのだが、常にその「背徳感」が王にはある。息子(ハル)は悪い仲間と盗みや遊びをしまくってばかりだし、即位する時に力を貸してくれたノーサンバランド伯とその弟ウスター伯らはヘンリー四世に反乱して戦を起こそうとしている…と、王にとっては不安の種だらけ。
王、というか父としてのヘンリー四世と王子ハルとの関係性が強めに出ていた気がする。
王が被る王冠はこれまた木で出来た、小学生が作った工作のような王冠なのだ。権力の象徴たる玉座も転がされてテーブルになったり投げられたり吊されたり悲惨である(笑)
そんな父の心配をよそに酒好き・女好きのフォールスタッフやいかがわしい連中と遊びまくっている王子ハル。スタッズの沢山ついたライダーズ・ジャケットにモサモサ頭、ヘッドフォンからはQeenの曲が流れてました。
酸いも甘いも何事も経験しなきゃ解らない。何が正しいのか何が悪しき事なのか? 王になるときにはキレイさっぱり悪事からは足を洗い、立派な権力者として上に立つんだね~。
浦井ハル王子、チャラい王子だけど父は好きで当然尊敬してるんだね。弟達も好きなんだね~。
前半の放蕩っぷりと、即位してからの威厳さの差が大きければ大きいほど、より際立つわ。
もーね、ヘンリー四世の中嶋しゅうさんがイイ!あと、若い王子の周りを固める文学座を始めとするオヂさま方が、皆様好演!でございます。
肉アンコ巻きのフォールスタッフB作さん。ノド大丈夫かな?ちょっと枯れてた気もしますが。調子いいんだわ、このフォールスタッフってのが!(笑)
だけど突然哲学的なセリフ(独白)を言うからね、あなどれないw
別名「ホットスパー」(熱い拍車)と付く位、瞬間沸騰男。こちらもヘンリー岡本健一さんであります!(ていうか同じ名前の人が多すぎなんだよ!)
いやいや、熱いわ。逆上型タイプなのね。もちつけ。
二部はフォールスタッフの腰巾着みたいなピストル、という役。こっちもキテますなw パンクだわ~「We Will Rock You」だわ!
全体的に動きが多く、戦闘シーン(特にハルとホットスパーの一騎打ちなど。あ、ヘンリー四世自らも殺陣シーンが!しゅうさんの立ち回り初めて観たかも!?)もあるので第一部の方が面白く感じる。
第二部は、1幕の半分くらいを占めているような気がする酒場のシーンとか、判事シャローの家の前のシーンが長く感じてしまう。
所々現代モノを組み合わせているのは好き嫌いが別れそうだけど、私は大丈夫でした。
ラスト、セットの最上段に登るヘンリー五世。下から見上げる父の視線だけで、何かホッコリした。