【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

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山下文夫『津波てんでんこ-近代日本津波史-』新日本出版社、2008年

2011-04-30 00:32:48 | 歴史

              津波てんでんこ
 「てんでん」というのは「てんでんに」「てんでんばらばらに」という意味で、「てんでんこ」と「こ」が付いているのは、岩手の方言で、可愛らしく表現するときのやり方です。

 「津波てんでんこ」は、津波がきたら、「てんでんばらばらに、他人のことをかまってないで(場合によっては家族も)、一目散に逃げろ」ということです。

 本書で民間の地震研究者である著者は、日本に起きた8つの津波の実態を紹介し、そこから教訓をひきだしています。8つの津波とは、明治三陸大津波(1896年6月15日)、関東大震災津波(1923年9月1日)、昭和三陸津波(1933年3月3日)、東南海地震津波(1944年12月7日)、東海地震津波(1946年12月21日)、昭和のチリ津波(1960年5月23-24日)、日本海中部地震津波(1983年5月26日)、北海道南西沖地震津波(1993年7月12日)です。日本は世界一の地震国であり、三陸海岸は津波常習海岸、宿命的な津波海岸とのこと。

 明治三陸大津波、関東大震災津波、昭和三陸津波は、吉村昭の本で詳しくしっていましたが、東南海地震津波、東海地震津波のことはあまり知りませんでした。それもそのはずで、この2つは太平洋戦争敗戦前後の地震にともなって生じた災害、、被害の実態はほとんど隠されていたとのことです。

 また、昭和三陸津波は日本の中国侵略の頃で、被害にあった東北地域の青年は家族の被災を背負いながら大陸に派兵されたとのことです。

 地震にともなう俗説がたくさんあること(井戸が渇水すると津波が来る、地震が起きてからご飯が炊きあがる時間に津波が来る)
、また地震災害は風化しやすいことを踏まえて、とにかく防災教育、訓練、意識が肝要と、繰り返し述べられています。

 ちなみに、著者は今回の東日本大震災の最中、陸前高田の県立病院に入院中で、4階の病室にいたそうで、研究者として津波を見届けたいとの思いがあり、逃げ遅れ、ようやく助けられました。「すぐに逃げなかったことを反省している」と弁明しています。以上は、朝日新聞4月3日付朝刊の記事で紹介されていました。


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