【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

独自の視点にたった杉浦さんの「江戸へようこそ」

2009-07-11 00:21:40 | 歴史

杉浦日向子『江戸へようこそ』筑摩書房、1986年
               
江戸へようこそ
 少し変わった視点に立っている江戸論です。その視点とは精神としての江戸、「日本人の精神的なニュートラル・ポイントが江戸、そういうふうにとらえたい」のだそうです(p.10)。

 「あっけらかんとした絶望感が、江戸市民の大半を占めていたのではないか・・・。明るい絶望感というちょとおかしいかもしれないのですが、絶望に近いほど明るい、そういっ湿り気のなさ、その感覚に、東京人であるわたしたちが共感を覚えた時、東京もまた江戸へとたどりつく事になる」(p.11)のだと著者は書いています。

 それゆえに、著者はいわゆる江戸趣味を否定し、ノスタルジーも否定し、話したいのは「江戸時代の江戸という名の都市に起こったさまざまな現象」とのことです(p.7)。

 というわけで話題は、吉原、花魁、春画、浮世絵、戯作、歌舞伎、粋などなど。「ありんす国だよりー吉原について」「よっこら、すうすう、はあはあー春画について」「真(まこと)があって運のつきー戯作について」「つかず、はなれず、ユラユラとー粋について」、そして3つの対談(中島梓、高橋克彦、岡本蛍の各氏)、さらに著者提供の「黄表紙を読む」と「特別付録」と続きます。

 中島氏との対談で話題となった「着物」の効用と推奨、高橋氏との対談で話題となった浮世絵の意味(情報)が面白かったです。

 また、江戸時代の春画は情事ではなく色事であり、「知的ゲーム、好色的な諧謔としてのエロティック・スケルツォ」であるという見方(p.77)、「粋」とはなにかはっきりと言えないが、媚態、意気地、あきらめが集約した浮遊状態、固定してしまったおのは「野暮」という見方(pp.177-179)、が胸にストンと落ちました。


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