あらすじは、次のようです。
悪徳経済雑誌記者(トリ屋と呼ばれる)・大屋圭造は、往年の名女優・滝田香具子を亜細亜精糖社長・古川恭太に斡旋、紹介、自由化を控えて蠢く業界の動向を探ろうとする。
ところが、女優の滝田は時の農務大臣の是枝にまわされ、大屋の思惑はからぶりとなる。しかし、古川の行動は奇怪そのもの。このことを追求するうちに、古川は精糖業界の水面下の動きにまきこまれていく。
一方、彼の同業の藤岡真佐子は鶴田という奇妙な人間(政界ゴロ)と接触していた。ひょんなことから大屋はこの鶴田を真佐子に紹介をしてもらうが、このことを契機として、大屋は現職の農相が闇取引する現場をおさえることになる。
実はこの鶴田という男はドミニカ砂糖汚職事件の際の農政局長であったが、真佐子はこの汚職事件で犠牲になって自殺した課長の愛人で、鶴田に復讐の機会をねらっていた。
大家はこの真佐子から精糖業界の汚職摘発を狙う矢口検事を紹介してもらい、そのおおらかな気質、正義観に共鳴し、協力を誓う。
しかし、亜細亜精糖は設立したばかりの工場を、対立するN精糖に売却し、古川社長は大損をしたかにみえたが、この措置は実は次にくる砂糖自由化への布石すぎなかった。
予想どおりの展開にはならない。話が迷宮化するが、ストーリーは筋がとおっている。社会の悪にはらをすえかね、ひとりの人間がそれに立ち向かうが、社会の大きなうねりが小さな人間の意図をかき消してしまう。清張文学のニヒリズムがここにある。
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