もうずっと前から(学生時代から)気になっていた小説です。野上弥生子の作品としてあまりにも有名ですが、内容はよくわからず、これまで過ごしてきました。完読して了解しました。
高級官僚であった曽根家の末娘の生き方を描いたもので、時代は昭和の初期と想定されます。いまの女性がおかれている環境とはほどとおいです。
彼女は大学の聴講生として社会学を学んでいます。いまから見れば何のことはないのですが、当時としては大学で女性が学ぶということ自体が大変なことで、それもよりによって社会学ということで、周囲は文学を勉強するならまだしも、社会学などやめてほしいと眉をしかめています。
その周囲は、社会的地位の高いひとばかり。財閥、医者、大学教授、プチ・ブルの人たち。定期的に園遊会も開かれています。真知子はそうした人々の発想、行動、しきたりの俗っぽさに辟易しています。
真知子は24歳なので、当然、結婚問題に悩まされ、御見合いの勧め、男性の紹介があり、それらにうんざり。愛のない結婚など考えられないのです。
彼女には米子という友人がいて、米子は東北の没落地主の妹、真知子と同じように聴講生でしたが、それをやめ三河島にあった貧民教育の社会事業(セツルメント)に関わっていました。
真知子はプチブルの生活にあきたらず、社会学を学び、米子そして彼女の知り合いの活動家・関との接触もあってマルクシズムに傾倒していきます。関との結婚も考え、ついに家を飛び出しますが、彼の不誠実さに絶望し、婚約を破棄。
関との関係ができるまえに、一度は結婚の話があったもののの、実現しなかった河合財閥の御曹司(考古学者)との新しい出発の予感があって、小説は終わっています。
真知子の考え方は、いまの時点からみると甘いといわざるをえませんが、冒頭にも書いたように昭和の初期の状況を考えると真知子をせめるのは酷でしょう。
また、当時の日本文学の世界ではとりあげられなかったテーマであり、この作品の登場は衝撃的だったと想像するに難くありません。
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