先日の軽井沢での「メサイア」に刺激を受け、CDでその全曲をとりそろえたかったが、まずハイライトのそれをもとめる。マリナー指揮、アカデミー&コーラス・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズのこの盤は、録音もよく、手軽に聴くにはよかった。
ソプラノはエリー・アーメリング、アルトはアンアナ・レイノルズ、テノールはフィリップ・ラングリッジ、バスはグウィン・ハウエルである。
ハレルヤ・コーラスは、毎年度、卒業式で交響楽団が演奏し、グリー・クラブが合唱するのを聴いているので、この曲を聴くと、卒業していった学生のことを思い出す。
ひたすらイエスを称賛するこの曲には、それゆえに勢いと活気がある、このコーラスを聴くと元気がでる。不思議なものだ。この部分は初演のときに、臨席したジョージ2世がこの合唱で感激のあまり立ち上がり、聴衆もこれにならったというエピソードがあり、今でも聴衆が全員起立することもあるのだそうだ。
このCDに収められたもののなかでは、合唱の「われわれはみな羊のように迷って」と、バスとトランペットで聴かせる「ラッパが鳴ると」が好きだ。「われわれはみな羊のように迷って」はヘンデルが合唱書法の粋をつくして仕上げたもので、各パートが華やかに掛け合わされ、最後はアダージョとなってしみじみと結ばれる。「ラッパが鳴ると」は、最後の審判のおりに響くと言われるラッパを模した前奏に導かれ、バスが力強くアリアを歌う。前奏のラッパの動機は、伴奏のなかで絶えず繰り返されるが、これがよい。
この曲は、ヘンデルが1741年、友人ジェネンズが聖書をもとに書いた台本に曲をつけたもので、演奏時間2時間半ほどのこの曲を24日間ほどで書きあげたという。
とまれ、この曲を聴きながら、往く年を惜しむ。