三軒茶屋にある「シアタートラム」で「トップドッグ/アンダードッグ」(シス・カンパニー公演;作スーザン=ロリ・パークス[翻訳・演出小川絵梨子])が公演中である。見逃せない。(トップドッグ、アンダードッグは「勝者」「敗者」と言った意味合い)
二人芝居。堤真一さんと千葉哲也さんが出演している。
ボロ屋アパートの一室にシェアする二人の兄弟。アフリカ系のアメリカ人である。名前はなんとリンカーンとブース。黒人解放で有名なリンカーンと彼をピストルで暗殺したブース。親が半分冗談でつけた名前のようだ。その両親ともいまはいない。二人は幼いころに捨てられたも同然で、離別した。二人は苦しい中、助け合って生き抜いてきた。
ブースに稼ぎはなかく、あちこちで窃盗を働いている様子。結構いいものを身につけているが、盗んできたものばかりだ。兄のリンカーンは、遊園地で暗殺されたリンカーン大統領のものまねで稼いでいる。リンカーンはかつてはトランプの賭博のディーラーで稼いでいたが、いかがわしいその世界から足を洗った。いまの仕事はいいとはいえないが、まじめに生活しようとしている。
ブースは兄のトランプ賭博の凄腕ぶりを知っていて、それに憧れ、練習し、その道でひと儲けしようとして企んでいるが、兄ほどの才覚もなく、根気もなく、その日ぐらしで、恋人との甘い生活を無邪気に夢想している。
舞台はこのふたりの過去と現在、そして二人の信頼と確執。最後に決定的な破たんが・・・。
アメリカの演劇らしく、兄弟のやりとりのなかに、この国が孕んできたいろいろな問題をとりこみ、この国がどのような国だったのか、そこに住む人々はいかに生きようとしたのかが見えてくる。しっかりした構成劇で、堤さんと千葉さんはその世界をうまく見せてくれた。