【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

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広田照幸・川西琢也編『こんなに役立つ数学入門-高校数学で解く社会問題』筑摩書房新書、2007年

2010-04-24 01:24:05 | 自然科学/数学

            こんなに役立つ数学入門(筑摩書房)



 高校数学の学習指導要領には、数学の授業の目的のひとつとして「事象を数学的に処理する能力を高める」ことも掲げられてます。しかし、高校の授業でそのようなこと場面に直面することはまずありません。

 この本は、「格差」「選挙」「松枯れ」「地震」「環境問題」の研究に高校数学が活用される事例を、わかりやすく説明し、数学の有効性と面白さをうまく伝えています。

 学歴による格差問題では、「賃金構造基本調査」のデータを使って生涯賃金の計算が「定積分」で解かれています(付録にExcelでの解法がある)。選挙の仕組みを解き明かしている章では、「得票率と議席率」との関係が三乗法則で説明されています。格差問題を解明している章では、対数、微分係数が使われています。

 また、松枯れの元凶であるマツノマダラカミキリ(マツノザイセンチュウを媒介する)を退治するために、カミキリの初発日の推定がなされるようですが、その際の有効積算温量の計算に使う数学は三角関数、積分だそうです。

 さらに、地震の性質、大きさ、頻度、発生周期には、常用対数、確率が、環境問題には二次方程式、微積分、数列、因数分解が活用されるとのこと。

 著者はみな大学の教員ですが、みながみな数学をそんなに得意としていたわけではなく、あるときから、あることを切っ掛けに開眼し、自分を磨いていった人たちです。

 高校レベルの数学が実際の社会問題の分析やその解決に積極的に使われ、有効であることが丁寧に、分かりやすくかかれていて、非常に参考になりました。