けいざい四季報2024 Ⅰ ③ 株価高騰 置いてきぼりの国民
【ポイント】
①日経平均株価が史上初めて4万円を超す。株価重視の経営に海外投資家が期待
②金融緩和が招いた異常円安も株価上昇の要因。多国籍企業の海外利益が膨らむ
③日銀はマイナス金利を解除。しかし緩和継続を明言したため、円安基調が続く
日経平均株価が急騰しています。2月22日の東京株式市場で日経平均株価の終値は3万9098円68銭となり、バブル経済ピークの1989年12月29日の大納会に記録した最高値(3万8915円87銭)を34年2カ月ぶりに更新しました。さらに3月4日の終値は4万0109円23銭となり、史上初めて4万円を超えました。その後もたびたび最高値を更新しています。
昨年春の日経平均株価は2万8000円台でした。1年足らずで1万円以上、値上がりしたことになります。
東京証券取引所=東京都中央区
異例の要請で
株価急上昇の要因として指摘されるのは、昨年3月末に上場企業に対して東証が行った異例の要請です。東証は株価と資本効率を重視した経営を促したため、海外投資家が株価上昇を期待して日本株への投資を積極化したといわれています。
もう一つの要因は異常円安に伴う多国籍大企業の利益膨張です。
昨年1月4日に1ドル=130円25銭だった円相場(日銀データ、午後5時時点)は、5月以降大きく円安に振れ、11月13日には1ドル=151円74銭に達しました。その後、12月末にいったん1ドル=140円台まで円が買われますが、今年3月には再び1ドル=151円台の円安となりました。
換算額膨らむ
円安になると多国籍大企業が海外で得る利益の円換算額は膨らみます。「日経」(2月17日付)の集計によると、上場企業の24年3月期の純利益は43・5兆円となり、3期連続で過去最高を更新する見通しです。値上げの浸透や円安が収益を押し上げ、昨年5月の期初予想から3・5兆円の上振れとなります。
円安が進む背景には、米国で金融引き締めが長期化して金利が高止まりする一方、日本では金融緩和が続くという見方があります。日米の金利差が意識され、金利の低い円が売られています。
3本の矢削除
「異次元金融緩和」を続けて異常円安を招いてきた日銀は、3月19日の金融政策決定会合でマイナス金利政策などの解除を決定しました。植田和男総裁は記者会見で「賃金と物価の好循環の強まり」が確認できたため、「大規模な金融緩和は、その役割を果たした」と述べました。政府は3月22日公表の月例経済報告で、大胆な金融政策など「アベノミクス3本の矢」に関する文言を削除しました。
しかし、異次元緩和で利益を得たのは多国籍大企業と、その株主だけです。国民の実質賃金は22カ月連続で前年同月を下回っています。円安が輸入物価の高騰を通じて国内物価を全般的に上昇させたためです。大幅賃上げを行う企業は一部にとどまり、植田総裁も中小企業の賃上げについて「自信」や「根拠」が「必ずしもない」と述べざるをえません。
日銀がマイナス金利解除後も「緩和的な経済環境」については継続すると明言したため、為替相場は引き続き円安基調となっています。大企業の利益が増え、株価が上がる中、国民生活は置いてきぼりにされています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年3月28日付掲載
株価急上昇の要因として指摘されるのは、昨年3月末に上場企業に対して東証が行った異例の要請。東証は株価と資本効率を重視した経営を促したため、海外投資家が株価上昇を期待して日本株への投資を積極化。
もう一つの要因は異常円安に伴う多国籍大企業の利益膨張。
日銀がマイナス金利解除後も「緩和的な経済環境」については継続すると明言したため、為替相場は引き続き円安基調。大企業の利益が増え、株価が上がる中、国民生活は置いてきぼりに。
【ポイント】
①日経平均株価が史上初めて4万円を超す。株価重視の経営に海外投資家が期待
②金融緩和が招いた異常円安も株価上昇の要因。多国籍企業の海外利益が膨らむ
③日銀はマイナス金利を解除。しかし緩和継続を明言したため、円安基調が続く
日経平均株価が急騰しています。2月22日の東京株式市場で日経平均株価の終値は3万9098円68銭となり、バブル経済ピークの1989年12月29日の大納会に記録した最高値(3万8915円87銭)を34年2カ月ぶりに更新しました。さらに3月4日の終値は4万0109円23銭となり、史上初めて4万円を超えました。その後もたびたび最高値を更新しています。
昨年春の日経平均株価は2万8000円台でした。1年足らずで1万円以上、値上がりしたことになります。
東京証券取引所=東京都中央区
異例の要請で
株価急上昇の要因として指摘されるのは、昨年3月末に上場企業に対して東証が行った異例の要請です。東証は株価と資本効率を重視した経営を促したため、海外投資家が株価上昇を期待して日本株への投資を積極化したといわれています。
もう一つの要因は異常円安に伴う多国籍大企業の利益膨張です。
昨年1月4日に1ドル=130円25銭だった円相場(日銀データ、午後5時時点)は、5月以降大きく円安に振れ、11月13日には1ドル=151円74銭に達しました。その後、12月末にいったん1ドル=140円台まで円が買われますが、今年3月には再び1ドル=151円台の円安となりました。
換算額膨らむ
円安になると多国籍大企業が海外で得る利益の円換算額は膨らみます。「日経」(2月17日付)の集計によると、上場企業の24年3月期の純利益は43・5兆円となり、3期連続で過去最高を更新する見通しです。値上げの浸透や円安が収益を押し上げ、昨年5月の期初予想から3・5兆円の上振れとなります。
円安が進む背景には、米国で金融引き締めが長期化して金利が高止まりする一方、日本では金融緩和が続くという見方があります。日米の金利差が意識され、金利の低い円が売られています。
3本の矢削除
「異次元金融緩和」を続けて異常円安を招いてきた日銀は、3月19日の金融政策決定会合でマイナス金利政策などの解除を決定しました。植田和男総裁は記者会見で「賃金と物価の好循環の強まり」が確認できたため、「大規模な金融緩和は、その役割を果たした」と述べました。政府は3月22日公表の月例経済報告で、大胆な金融政策など「アベノミクス3本の矢」に関する文言を削除しました。
しかし、異次元緩和で利益を得たのは多国籍大企業と、その株主だけです。国民の実質賃金は22カ月連続で前年同月を下回っています。円安が輸入物価の高騰を通じて国内物価を全般的に上昇させたためです。大幅賃上げを行う企業は一部にとどまり、植田総裁も中小企業の賃上げについて「自信」や「根拠」が「必ずしもない」と述べざるをえません。
日銀がマイナス金利解除後も「緩和的な経済環境」については継続すると明言したため、為替相場は引き続き円安基調となっています。大企業の利益が増え、株価が上がる中、国民生活は置いてきぼりにされています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年3月28日付掲載
株価急上昇の要因として指摘されるのは、昨年3月末に上場企業に対して東証が行った異例の要請。東証は株価と資本効率を重視した経営を促したため、海外投資家が株価上昇を期待して日本株への投資を積極化。
もう一つの要因は異常円安に伴う多国籍大企業の利益膨張。
日銀がマイナス金利解除後も「緩和的な経済環境」については継続すると明言したため、為替相場は引き続き円安基調。大企業の利益が増え、株価が上がる中、国民生活は置いてきぼりに。
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