2025年度予算 概算要求の焦点③ 雇用 貧弱な賃上げ支援策
日本の労働者の実質賃金は5月まで26カ月連続でマイナスに沈み、プラスになった6~7月もボーナスを除けばマイナスです。2025年度の厚生労働省の雇用に関する概算要求は、失敗が明らかな岸田文雄政権の「構造的賃上げ」政策に固執し、賃上げや労働者の職業訓練に対する国と大企業の責任をいっそう放棄する中身になっています。
デジタルを偏重
構造的賃上げの柱の一つがリスキリング(学び直し)です。しかし、本来リスキリングの要となるはずの公的職業訓練の概算要求は1222億円(24年度当初予算比36億円増)と微増要求にとどまります。そのうち556億円(16億円増)をデジタル人材の育成にひも付けるなど、大企業が重点投資を求めるデジタル分野への偏重も目立ちます。
リスキリングではほかに、雇用保険に加入していない非正規労働者などを対象に月10万円の給付金と職業訓練を提供する「求職者支援制度」に285億円(26億円増)、企業が従業員に職業訓練を実施した際の経費や賃金を助成する「人材開発支援助成金」に623億円(22億円減)を計上しています。
新規事業として「教育訓練休暇給付金」の創設に79億円を求めています。同事業は、労働者が職業訓練を目的に休暇を取得した場合、賃金の一定割合を失業手当から給付する仕組みです。同制度利用後1年以内に自己都合退職した労働者は失業手当を受けることができなくなります。本来企業が負うべき職業訓練の費用を、失業手当の受給資格喪失という危険と一体で労働者に肩代わりさせるものです。
さらに雇用破壊
賃上げ支援策も貧弱です。中小企業の賃上げを支援する「業務改善助成金」は、わずか22億円(24年度比約14億円増)。企業が生産性向上に資する設備投資をすることや、企業の賃金が最低賃金に張り付いていることが支援を受ける要件になっており、全国の中小企業・小規模事業者336万者に対し、23年度の支援実績は1万3603件しかありません。
社会保険料の事業主負担の軽減など、全ての中小企業・小規模事業者を対象とした賃上げ支援策はありません。社会保険料軽減による賃上げ支援は、中小企業家同友会や各地の地方最低賃金審議会からも強い要望が上がっています。
非正規雇用労働者の正社員化を支援する「キャリアアップ助成金」は962億円(144億円減)です。同事業には、勤務地や職務などを限定する「限定正社員」制度を新たに設けた事業所への助成金を加算する仕組みが入っています。限定正社員は一般的な正社員より待遇は低いのに、責任は正社員と同じ水準が求められます。企業が地域、業務から撤退すれば、解雇される危険とも隣り合わせです。
ほかにも「副業・兼業に関する情報提供モデル事業」に4400万円(1500万円増)など、さらなる雇用破壊につながる予算案も盛り込まれています。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年9月27日付掲載
構造的賃上げの柱の一つがリスキリング(学び直し)。しかし、本来リスキリングの要となるはずの公的職業訓練の概算要求は1222億円(24年度当初予算比36億円増)と微増要求にとどまります。そのうち556億円(16億円増)をデジタル人材の育成にひも付けるなど、大企業が重点投資を求めるデジタル分野への偏重も。
社会保険料の事業主負担の軽減など、全ての中小企業・小規模事業者を対象とした賃上げ支援策はありません。社会保険料軽減による賃上げ支援は、中小企業家同友会や各地の地方最低賃金審議会からも強い要望が上がっています。
日本の労働者の実質賃金は5月まで26カ月連続でマイナスに沈み、プラスになった6~7月もボーナスを除けばマイナスです。2025年度の厚生労働省の雇用に関する概算要求は、失敗が明らかな岸田文雄政権の「構造的賃上げ」政策に固執し、賃上げや労働者の職業訓練に対する国と大企業の責任をいっそう放棄する中身になっています。
デジタルを偏重
構造的賃上げの柱の一つがリスキリング(学び直し)です。しかし、本来リスキリングの要となるはずの公的職業訓練の概算要求は1222億円(24年度当初予算比36億円増)と微増要求にとどまります。そのうち556億円(16億円増)をデジタル人材の育成にひも付けるなど、大企業が重点投資を求めるデジタル分野への偏重も目立ちます。
リスキリングではほかに、雇用保険に加入していない非正規労働者などを対象に月10万円の給付金と職業訓練を提供する「求職者支援制度」に285億円(26億円増)、企業が従業員に職業訓練を実施した際の経費や賃金を助成する「人材開発支援助成金」に623億円(22億円減)を計上しています。
新規事業として「教育訓練休暇給付金」の創設に79億円を求めています。同事業は、労働者が職業訓練を目的に休暇を取得した場合、賃金の一定割合を失業手当から給付する仕組みです。同制度利用後1年以内に自己都合退職した労働者は失業手当を受けることができなくなります。本来企業が負うべき職業訓練の費用を、失業手当の受給資格喪失という危険と一体で労働者に肩代わりさせるものです。
さらに雇用破壊
賃上げ支援策も貧弱です。中小企業の賃上げを支援する「業務改善助成金」は、わずか22億円(24年度比約14億円増)。企業が生産性向上に資する設備投資をすることや、企業の賃金が最低賃金に張り付いていることが支援を受ける要件になっており、全国の中小企業・小規模事業者336万者に対し、23年度の支援実績は1万3603件しかありません。
社会保険料の事業主負担の軽減など、全ての中小企業・小規模事業者を対象とした賃上げ支援策はありません。社会保険料軽減による賃上げ支援は、中小企業家同友会や各地の地方最低賃金審議会からも強い要望が上がっています。
非正規雇用労働者の正社員化を支援する「キャリアアップ助成金」は962億円(144億円減)です。同事業には、勤務地や職務などを限定する「限定正社員」制度を新たに設けた事業所への助成金を加算する仕組みが入っています。限定正社員は一般的な正社員より待遇は低いのに、責任は正社員と同じ水準が求められます。企業が地域、業務から撤退すれば、解雇される危険とも隣り合わせです。
ほかにも「副業・兼業に関する情報提供モデル事業」に4400万円(1500万円増)など、さらなる雇用破壊につながる予算案も盛り込まれています。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年9月27日付掲載
構造的賃上げの柱の一つがリスキリング(学び直し)。しかし、本来リスキリングの要となるはずの公的職業訓練の概算要求は1222億円(24年度当初予算比36億円増)と微増要求にとどまります。そのうち556億円(16億円増)をデジタル人材の育成にひも付けるなど、大企業が重点投資を求めるデジタル分野への偏重も。
社会保険料の事業主負担の軽減など、全ての中小企業・小規模事業者を対象とした賃上げ支援策はありません。社会保険料軽減による賃上げ支援は、中小企業家同友会や各地の地方最低賃金審議会からも強い要望が上がっています。
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