インフレ不況と希望の出口戦略④ 賃金主導型経済成長へ
下関市立大学教授 関野秀明さん
日本経済の行き詰まりを突破する手段は、利上げしても企業も家計も困らない「十分な危機対策」を講じ、次に適切に利上げして円安・インフレを鎮圧することです。この「十分な危機対策」=「希望の出口戦略」の第1は「最低賃金全国一律1500円と中小企業支援」です。
要因は過少な分配
過去30年において、日本の実質年間平均賃金はG7(主要7カ国)の中位から最下位に転落し、日本の実質国内総生産(GDP)成長率も中位から最下位水準に転落しています(OECD統計)。日本のGDPは、支出・需要側から分析すると「家計消費」が5割強を占めます。したがって賃金が上昇し「家計消費」が増大しないと、経済成長は困難になります。
日本の賃金が上がらない理由は、労働生産性が低いからではありません。図1は日本、米国、欧州連合(EU)の労働生産性と実質雇用者報酬の推移を、1995年を基準値100として表しています。雇用者報酬とは賃金と企業が労働者のために払う社会保険料事業主負担を足し合わせた広義の賃金です。2022年までに、米国は労働生産性が140・3に、雇用者報酬も126・8に上昇しています。EUも労働生産性が125・6に、雇用者報酬も105・1に上昇しています。しかし、日本は労働生産性が132・1に上昇しているにもかかわらず、雇用者報酬が89・9へ低下しているのです。日本の低賃金の原因は低い生産性ではなく過少な分配なのです。
日本の低賃金、過少な分配の原因は雇用の劣化です。高賃金の正規労働者が減少し、低賃金の非正規労働者が増えれば、平均賃金は低下します。
1995年から2023年までに日本の企業社会は正規労働者を199万人減らし、非正規労働者を1153万人増やしました(総務省「労働力調査」)。したがって「正社員が当たり前」の働き方・雇用に戻すと同時に、最低賃金全国一律1500円を実現し、非正規労働者の賃金を底上げすることが必要なのです。
最低賃金が基準に
図2は05年と22年における短時間労働者の賃金分布と地域別最低賃金(地賃)全国加重平均との関係を示します。05年に地賃全国加重平均は668円でしたが、賃金分布は668円付近に集中せず800円、900円台にも広がっています。しかし、20年に、地賃全国加重平均が961円になると、賃金分布は961円付近に集中するようになります。
要するに日本の非正規労働者の賃金は、明らかに最低賃金を基準に決定され、最賃が上がらなければ賃金全体が上がらない構造になっています。逆に言えば、最賃をあげれば日本の賃金水準全体が引き上がるのです。
だからこそ、全国一律最低賃金1500円実現のために抜本的な中小企業支援策を先行して実施しなければなりません。
アベノミクスで史上最高の利潤をあげている大企業の内部留保に課税し、さらにはもっぱら大企業を優遇する特別減税措置(租税特別措置)を順次廃止することも視野に入れて、中小企業支援の財源を十分に確保することが重要です。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年5月31日付掲載
日本の賃金が上がらない理由は、労働生産性が低いからではありません。日本は労働生産性が132・1に上昇しているにもかかわらず、雇用者報酬が89・9へ低下している。日本の低賃金の原因は低い生産性ではなく過少な分配。
「正社員が当たり前」の働き方・雇用に戻すと同時に、最低賃金全国一律1500円を実現し、非正規労働者の賃金を底上げすることが必要。
最賃をあげれば日本の賃金水準全体が引き上がる。だからこそ、全国一律最低賃金1500円実現のために抜本的な中小企業支援策を先行して実施を。
下関市立大学教授 関野秀明さん
日本経済の行き詰まりを突破する手段は、利上げしても企業も家計も困らない「十分な危機対策」を講じ、次に適切に利上げして円安・インフレを鎮圧することです。この「十分な危機対策」=「希望の出口戦略」の第1は「最低賃金全国一律1500円と中小企業支援」です。
要因は過少な分配
過去30年において、日本の実質年間平均賃金はG7(主要7カ国)の中位から最下位に転落し、日本の実質国内総生産(GDP)成長率も中位から最下位水準に転落しています(OECD統計)。日本のGDPは、支出・需要側から分析すると「家計消費」が5割強を占めます。したがって賃金が上昇し「家計消費」が増大しないと、経済成長は困難になります。
日本の賃金が上がらない理由は、労働生産性が低いからではありません。図1は日本、米国、欧州連合(EU)の労働生産性と実質雇用者報酬の推移を、1995年を基準値100として表しています。雇用者報酬とは賃金と企業が労働者のために払う社会保険料事業主負担を足し合わせた広義の賃金です。2022年までに、米国は労働生産性が140・3に、雇用者報酬も126・8に上昇しています。EUも労働生産性が125・6に、雇用者報酬も105・1に上昇しています。しかし、日本は労働生産性が132・1に上昇しているにもかかわらず、雇用者報酬が89・9へ低下しているのです。日本の低賃金の原因は低い生産性ではなく過少な分配なのです。
日本の低賃金、過少な分配の原因は雇用の劣化です。高賃金の正規労働者が減少し、低賃金の非正規労働者が増えれば、平均賃金は低下します。
1995年から2023年までに日本の企業社会は正規労働者を199万人減らし、非正規労働者を1153万人増やしました(総務省「労働力調査」)。したがって「正社員が当たり前」の働き方・雇用に戻すと同時に、最低賃金全国一律1500円を実現し、非正規労働者の賃金を底上げすることが必要なのです。
最低賃金が基準に
図2は05年と22年における短時間労働者の賃金分布と地域別最低賃金(地賃)全国加重平均との関係を示します。05年に地賃全国加重平均は668円でしたが、賃金分布は668円付近に集中せず800円、900円台にも広がっています。しかし、20年に、地賃全国加重平均が961円になると、賃金分布は961円付近に集中するようになります。
要するに日本の非正規労働者の賃金は、明らかに最低賃金を基準に決定され、最賃が上がらなければ賃金全体が上がらない構造になっています。逆に言えば、最賃をあげれば日本の賃金水準全体が引き上がるのです。
だからこそ、全国一律最低賃金1500円実現のために抜本的な中小企業支援策を先行して実施しなければなりません。
アベノミクスで史上最高の利潤をあげている大企業の内部留保に課税し、さらにはもっぱら大企業を優遇する特別減税措置(租税特別措置)を順次廃止することも視野に入れて、中小企業支援の財源を十分に確保することが重要です。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年5月31日付掲載
日本の賃金が上がらない理由は、労働生産性が低いからではありません。日本は労働生産性が132・1に上昇しているにもかかわらず、雇用者報酬が89・9へ低下している。日本の低賃金の原因は低い生産性ではなく過少な分配。
「正社員が当たり前」の働き方・雇用に戻すと同時に、最低賃金全国一律1500円を実現し、非正規労働者の賃金を底上げすることが必要。
最賃をあげれば日本の賃金水準全体が引き上がる。だからこそ、全国一律最低賃金1500円実現のために抜本的な中小企業支援策を先行して実施を。
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