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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

「骨太」の雇用政策① 「労働移動」強調の異常

2023-07-08 06:59:14 | 働く権利・賃金・雇用問題について
「骨太」の雇用政策① 「労働移動」強調の異常
6月16日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2023」には、「人への投資」「構造的な賃上げ」という言葉が並んでいます。
岸田文雄政権の雇用政策をどうみるか、全国労働組合総連合(全労連)雇用労働法制局長の伊藤圭一さんに寄稿してもらいました。

全労連雇用労働法制局長 伊藤圭一さん

日本の労働者の賃金は長期にわたる抑制で先進国最低の水準に落ち込み、教育訓練投資は欧米の平均の20分の1程度です。賃上げと「人への投資」の増加は、当然、必要です。
ところが骨太の方針と、その雇用政策を準備した「三位一体の労働市場改革の指針」(指針)には、具体的な賃上げ政策そのものは掲げられていません。中心は①リスキリング(学び直し)による能力向上支援②個々の企業の実態に応じた職務給の導入③成長分野への労働移動の円滑化ーを一体的に進める労働市場改革であり、結果として「構造的な賃上げ」が実現するというのです。果たしてそうなるのか、骨太の方針の雇用政策の概要をみていきましょう。

自己責任を推進
①の能力向上支援策は、技術革新による産業の在り方の変化への対応として、各国で重視されています。しかし欧州連合(EU)諸国では、今の職場での雇用を守ることを目的として職業教育政策の強化が進められているのに対し、岸田政権のリスキリングの目的は「労働移動」であり、スキルアップへの労働者の自己責任が強調されている点が特異です。
労働移動、つまり転職は雇用の不安定化をもたらし、賃金も上がるとは限りません。ところが岸田政権は「これからの雇用の安定は、新たな形で保全される」と主張。政府が「円滑な労働移動の確保等を通じ、多様なキャリアや処遇の選択肢の提供」をするから、労働者は自らの選択でキャリアを切り開き雇用を確保せよ、と叱咤(しった)しています。



「骨太の方針2023」を議論した経済財政諮問会議でとりまとめを行う岸田文雄首相(中央)=6月16日(首相官邸ホームページから)

昇進で競わせる
企業に対しては年功賃金と長期雇用システムを捨て、②の職務給とジョブ型人事を導入するよう求めています。その内容は以下のようなものです。
▽企業は職務記述(職務内容を詳述した書類)と必要なスキルを労働者に示し、職務給を導入する。
▽ただ職務に応じた賃金を保障するのでなく、評価と賃金を連動させ、低評価なら賃下げや「パフォーマンス改善計画(PIP)」(通常業務に加え改善計画を履行する負荷をかけ、改善しなければ退職勧奨する仕組み)を適用する。
▽昇進も社内公募制(ポスティング制度)として労働者を競わせ、自己都合退職の際の退職金減額はやめる。
▽政府は転職コンサルティングの強化や雇用保険の適用対象の拡大、自己都合離職の場合の雇用保険の給付制限の解除(リスキリングをしている場合)、退職所得課税の控除の削減などを行う。
こうすれば、労働者はスキルアップに尽力し、「自らの意思で、企業内での昇任・昇給や企業外への転職による処遇改善、更にはスタートアップ等への労働移動機会の実現のために主体的に学び」、結果として③の「成長産業への労働移動が円滑化」する、といいます。(つづく)(3回連載です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年7月5日付掲載


ところが骨太の方針と、その雇用政策を準備した「三位一体の労働市場改革の指針」(指針)には、具体的な賃上げ政策そのものは掲げられていない。中心は①リスキリング(学び直し)による能力向上支援②個々の企業の実態に応じた職務給の導入③成長分野への労働移動の円滑化ーを一体的に進める労働市場改革であり、結果として「構造的な賃上げ」が実現すると。
岸田政権のリスキリングの目的は「労働移動」であり、スキルアップへの労働者の自己責任が強調されている点が特異。

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