仮 定 さ れ た 有 機 交 流 電 燈

歴史・文化・環境をめぐる学術的話題から、映画やゲームについての無節操な評論まで、心象スケッチを連ねてゆきます。

死角:穴にいる巨人

2007-01-12 11:46:57 | 書物の文韜
10日(水)は、1限「樹木をめぐる心性史」にて〈講義始め〉。大木の秘密型伝承の成立から神殺しに話が及びましたが、残るはこの回を入れて2コマのみ。スケジュールが消化できないのは毎度のことですが、木霊婚姻にまでたどり着くことも叶いませんでした。来年度は「II」と題して、婚姻の問題を集中的に扱いましょうかね。

研究室へ戻ってメールを確認すると、歴博の作業をもう少し余裕を持ってできるらしい、いい知らせあり。学科会議と1年生へのプレゼミ説明会をこなした後、上記の書物、日野巌『植物怪異伝説新考』上・下(中公文庫、2006年11月)を買いに書店へ。なかなか見つからず、結局翌日にジュンク堂の新宿店で購入しました。恥ずかしいことに、この本、今まで存在を知らなかったんですよね。著者の日野巌は明治生まれの植物学者で、その後民俗学にも進出した人のようです。平野仁啓といい斎藤正二といい、やはり〈隠れた巨人〉は存在するもので、この人の著作も凄い。古代から近世に至る500以上の文献から植物の怪異に関する記事を抽出、類別して解説を加えた〈植物怪異類書〉とでもいうべき書物。1978年の初刊で、昨年の夏に文庫化されたんですね。最近、同文庫から、姉妹編にあたる『動物妖怪譚』上も出版されました。いずれも読み応えあり、私の研究に資すところも大です。先ほど〈隠れた〉と書きましたが、隠していたのは私の不明であり、やはり研究史には注意して取り組まねばなりません。どこぞの本のように、学界のイニシアティヴを握ろうと学び捨ててちゃいけません。そういう理論、方法論更新の繰り返しはパラダイム・シフトでもなんでもない。もう止めた方がいいと思いますね。

気をよくしたついでに、『幽』最新号と、ちょっと気になっていた入江亜季『群青学舎』松本大洋『竹光侍』を購入。『幽』は毎号必ず手に入れている怪談専門誌で、怪異と真剣に取り組んでいる点が魅力。民俗研究・文学研究としても、読み物としても質が高い雑誌です。趣味と実益を兼ねた実録怪談を読みつつ家に帰ると、某大学から宅急便が…! なんと、副査を引き受けていた修士論文ではありませんか。今年は提出できないかも知れないという情報を得ていたので、安心していたのですが…。がんばったんですね。試問はいつなんでしょう。
しかし、これで少し出来た余裕も消滅、また分刻みの仕事三昧に逆戻りです。ある意味、怪談よりも怖ろしい話。

ちなみにプレゼミ説明会終了後、早くも女子3名が登録をしに来ました。ミイラが好きとのこと…今の2年生にも即身仏を研究したいといっている学生がいるのですが、なんでそういう人たちが集まるのだろう(と疑問に思っているのはぼくだけ?)。
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