【従来の版画の概念を超える幅約11mの超大作も】
奈良県立美術館(奈良市)で「アメリカ現代美術の巨匠達―CCGA現代グラフィックアートセンター所蔵版画名品展」が始まった。ロイ・リキテンスタインをはじめとする米国を代表する現代美術家の作品約100点。中には幅が約11mもある超巨大作も出品されており、従来の版画の概念を超えた意欲的な作品群に圧倒される。5月25日まで。
サブタイトルの中の「CCGA現代グラフィックアートセンター」は大日本印刷が1995年、優れたグラフィックアートの収集・研究拠点として福島県那須川市の宇津峰山麓に開設した。米国の「タイガーグラフィックス」制作のアメリカ現代版画作品群と日本の現代グラフィックデザインの秀作を2本柱としている。
ロイ・リキテンスタイン(1923~97)は印刷インクのドット(網点)を拡大して描く手法で、20世紀後半、米国の代表的なポップアーティストとして活躍した。展示作品は11点。代表作の1つ『会話に反射』(上㊧))は2人の顔を斜めに横切るシャープな光の筋が、見る者に会話の中身を様々に連想させる。一連の「反射シリーズ」はある作家の版画作品を撮影するとき、額装のガラス面に光が反射し撮影がうまくできなかったことをヒントに生まれた。『青い髪のヌード』や『考えるヌード』も目を引く。
デイヴィッド・ホックニー(1937~)の『セリアのイメージ』(上㊨)は友人のテキスタイルデザイナーをモデルとしたキュビズム(立体派)的な人物画。ホックニーはピカソの作品の模写を通してキュビズムの手法を学んだ。『カリビアン・ティータイム』は避暑地の情景を明るい色調で屏風仕立てのスクリーンに描いている。
ジェームズ・ローゼンクイスト(1933~)の『時の塵』(上)は約10.7m×2.2mという大きさで世界最大の版画といわれる。「大量消費社会」をテーマとし、広大な宇宙空間に管楽器や空き缶、宇宙船のような鉛筆、トンボのような折り紙などが浮遊する。『スペース・ダスト』など「水の惑星にようこそ」シリーズの3点も展示中。着色した紙パルプを巨大な手漉き紙の上に吹き付けるという手法で、大画面と鮮やかな発色を実現した。
フランク・ステラ(1936~)の『泉』(写真)も約7m×2.3mという大作で、これまでの版画の概念を打ち破るスケール。中央の黒い植物のようなものを基点に様々な色・柄の抽象的なフォルムが画面いっぱいに湧き上がる。同展にはハワイを拠点に浮世絵版画の制作に取り組む寺岡政美(1936~)の作品3点も展示されている。『ナマズに嫉妬』は歌舞伎役者が美女に寄り添うナマズを睨みつける構図でユーモアに溢れている。
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