【別名「タンポポモドキ」細長い花茎に黄花】
キク科エゾコウゾリナ属の多年草。原産地はヨーロッパで、日本には昭和初期に牧草や穀物飼料に混入して渡ってきたといわれる。今では世界各地に帰化植物として広がっており、国内でも空地や公園、野原、河川敷などでごく普通に見られる。花期は5~9月頃。高さ30~60cmの細長い花茎を立ち上げ、途中で2~3本に分岐してそれぞれの茎頂に直径3~4cmのタンポポに似た黄花を1つずつ付ける。根出葉はロゼット状に地面に広がり、踏み付けや刈り取りに耐え寒さにも強い。白い綿毛が付いた種を風で飛ばして仲間を増やす。
ブタナ(豚菜)の名前はフランスの俗名「Salada de pore(豚のサラダ)」をそのまま訳したもの。約90年前の1933年に北海道の札幌で最初に見つかった時はその花姿から「タンポポモドキ」という名で報告された。しかし神戸の六甲山で翌年見つかった際にはブタナに。それがこの植物の標準和名になっている。ただ風にそよぐ可憐な花を見ていると、ブタナという名前は少々気の毒にも思えてくる。よく似たタンポポに比べると、草丈が高い、花茎が分岐、花期が遅いといった違いがある。若葉はサラダなどとして食用に、乾燥した根はタンポポ同様コーヒーとして飲用できるそうだ。
ブタナが属するエゾコウゾリナ属には世界の温帯に50種ほど分布するが、日本の在来植物は北海道・日高地方のアポイ岳など生息域が限られるエゾコウゾリナの1種だけ。近い将来の絶滅が懸念されており、環境省は絶滅危惧ⅠB類としてレッドリストに掲載している。それにしてもエゾコウゾリナというややこしい名前はどこから? エゾの「蝦夷」はともかく、分かりにくいのはその後ろのコウゾリナ。この植物は茎などに黒い剛毛が密生するのが特徴。その様子が髭剃り跡のようにザラザラしていることから初め「顔剃菜(カオソリナ)」と呼ばれ、それがやがて「コウゾリナ」に変化したという。ちなみに学名(属名)は「Hypochaeris(ピポカエリス)」。その属名は「hypo(-のため)」+「choeros(子豚)」から来ているそうだ。
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