【風媒花、野生化し道端や庭先などに〝出没〟】
シンテッポウユリは台湾に自生するタカサゴユリと九州南部~沖縄地方原産のテッポウユリを掛け合わせて生まれた園芸品種。1951年に日本で最初の交配種が作出された。花期は7~8月頃で、ラッパ状の純白の花を横向き、または斜め上向きに付ける。花が少なくなる真夏に咲くことから切り花としての人気が高い。かつては高速道路の法面などの緑化材としても活用された。風媒花で、自家受粉で大量の種子を作って広範囲に飛ばす。このため今では全国各地で野生化し、分布域を急速に拡大している。
学名は「Lilium ×formolongo(リリウム×フォルモロンゴ)」。種小名の前の×印は「雑種」であることを表す。種小名はタカサゴユリの学名「formosanum(フォルモサヌム)」とテッポウユリの学名「longiflorum(ロンギフロルム)」の合成語。それぞれ「台湾の」「長形花の」を意味する。タカサゴユリは大正時代末期の1924年頃、観賞用として渡来し、各地で栽培されてきた。「ホソバ(細葉)テッポウユリ」や「タイワンユリ」とも呼ばれる。
タカサゴユリは播種後1年以内に開花するなど生長が早いのが大きな特徴。草丈はテッポウユリより高く大きなものは1.5m前後にもなる。一方、テッポウユリは開花まで3~4年かかるが、タカサゴユリより大輪の純白の花を付ける。シンテッポウユリはその両方の性質を併せ持つ。タカサゴユリも帰化植物として野生化しており、国立環境研究所の「侵入生物データベース」にも掲載されている。タカサゴユリは花被片の外側に赤紫色の筋が入ることが多く、それがシンテッポウユリと区別する際の目印の一つになっている。ただ赤紫の色模様にも濃淡があって判別が難しいことも。両者の自然交雑も進んでいるのだろう。