CLASS3103 三十三組

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【読書】空白を満たしなさい

2021-12-13 21:00:23 | 読書感想文とか読み物レビウー
空白を満たしなさい  作:平野啓一郎

SFとは異なるのだけども、不思議な世界観の物語だった
死者が復生する、そんな現象が突然に起こった世界で、
復生者である主人公が、自身の死因を探り、また、残されていた家族と再び絆を築く
そんなお話なのであります
のっけから、死んだ人が生き返るという話なので、
そこをあれこれ深く考えず、それでも戸惑いながらも
そういうものか、でも、どうしてといった方向で迷っていくと
なかなか面白い話でありました
まかり間違っても、復活したときになんで服着てんだとか
そういうところに不思議を感じたりしてはいけないものである

つまらない冗談はさておいて、
非常に興味深い、人間が生きている、その人格というものは
どこで定義、あるいは、形作られるものか
それに肉薄しようとする物語でありまして、
この小説では、それぞれを分人として、誰かと接している自分という人格は、
別の誰かと接している自分の人格とは異なるというスタンスで、
理解しようとするものでありまして、
このあたりはかなり興味深いのでありました

ありていなら、そういう様々な自分というものが集まった一個体が
自分であろうなんていうまとめ方をしそうなもんだが、
それぞれは、別に分裂症的な症例ではなく、
ごく自然に異なる自分として存在していて、
その、異なる自分が、別の異なる自分を気に入らない、消えてほしいと願ったとき
その人はどうなってしまうかといったことに言及していたのでありました
心のありようというか、そういう人間理解の方法もあるのかなと
素直に感心したのであります

物語は、主人公の苦悩と、それを引き出したともとれる
佐伯という謎のというか、主人公の死を発見した男との
胸糞悪いやりとりで起伏を見せて
様々な人間関係、また、死後のその世界というものとの不一致と
戸惑いの多い物語になっていて面白いと感じたのでした

ラストシーンが、なかなか素敵な感じで終わるので
いい余韻だと思って読み終えたのでありますけども
ちょっと考えて、すぐこうだとわからない
そんな哲学っぽい内容で、面白く読めたのでありました


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