CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】半暮刻

2024-05-15 20:55:26 | 読書感想文とか読み物レビウー
半暮刻  作:月村了衛

半グレを扱った話なんだが、
結構直接的な批判というか、なんとなくありそうな不穏、不平を扱っていて
ぐいぐい読まされてしまった、どうなるんだと思いつつ、
その不穏さが二手に分かれて、希望とそうではないもの、
あるいはどちらもそうであったみたいな感じになっていくのが
辞められないくらい面白く読まされてしまった

生まれの良し悪しという背景と、能力の多寡、
これがある種の善悪と結びついていく様が、対極となる二人の男を中心に話が進むのだが、
善悪というものをどう捉えるか、捉えることができるかというのが
人間の性質によるものなのか、色々なものが似ているようで
まったく異なる、そういう人は相容れることが決してない
没交渉という残酷を描いた作品のようでもあったけど、
これもまたリアルというか、この物語としては、そこに嫌悪が残るけど
解決はしない問題を扱っていてすごくよかったと思うのである
読んでいて、なんとなく、情緒にふれて判断してしまった結果が、
海斗の不幸を悲しむ気持ちになっているようでもあって、
だからといって、海斗がやってきた前時代的なものを否定できるだろうかとも
思わされたりするのである

モチーフが結構先鋭的というか、昨今問題になったそれこれのイベントを当てていて
かつ、その根幹に人の問題、とりわけ倫理を含めた人格の問題じゃないかと
能力とは別のものについて考えさせられるところがよいと思うのだが、
はたして、それを良いという判断は、善意からくるのかやっかみなのか
はたまた、そういう時代ではないということなのかとか
色々と考えてしまう模様をもっていて、凄く面白いと感じたのである

物語はわりとすんなりというか、複雑ではないわかりやすい展開で、
さくさくと読めるし、そこで想起する感情は、期待通りというか、
わかりやすく抱けるものとなっているのだけど、
本当にその感情のまま読んでいいのか、そうではない不気味さというか
それに対する反応というものが、何か、その悪意とも異なる悪に似たものじゃないかと
思ったりしてしまう読書となったのである

何書いてんだか、よくわからなくなったが、
いわゆるやり手という手口を努力と呼ぶのか、
そういう倫理観と対峙することが最近増えてるのか、
それにノれないから、そう思うのか
わからんけども、描かれていた悪のようなものに対して、悪感情を抱いたのは確かで
ある種の悲しさというか、諦めみたいなものを覚える物語であった

しかし扱ってる物がアレすぎて、映像化できなそうなのが残念だ