CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】森は知っている

2018-01-23 20:27:56 | 読書感想文とか読み物レビウー
森は知っている  作:吉田 修一

クライムサスペンスというのではないんでしょうが、
産業スパイを描いた、少年漫画のような物語でありました

孤児を産業スパイに仕立て上げる
そういう組織があるとしたらと、
そんな物語なのでありますが、そのアクションや頭の回転なんかが、
どっか浮世離れしすぎていると感じつつも、
そういう世界があって、そういう人材が居るのかもしれないなんて
思わされたりしながら、スパイの動向を楽しめる小説であります

ただ、そういうアクションいっぱいの面白い
エンタメ小説のようでありながら、
主題としていたのは、孤児という存在、
その闇にかなり割いていたんではないかと
思わされるところ
育児放棄の末に死にかけたという経歴について、
少しずつ明かされていく過去とエピソード、
その少年がどう育っていくのか、その現在形と過去形とが
ゆっくりと交わってくるようになって、
物語としては産業スパイがどうしたということよりも、
その生き方を選択する少年の物語になっていて
なんというか、感動といったらいいのか
深く、読み込まされたのでありました

何かをするということについて、
限られた情報から、その意味と意図を探り、
誰がどうしているのかを考えて、
生きるとは、つまるところそういうことなんだと
一番、生きることに希薄と思われる主人公の動きに、
なんだか思い知らされるようで
楽しいと思えた読書でありました

難しく考えすぎた感想でありますけども、
いい物語だったと、深い満足を得ているのであります