CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】スペードの3

2014-07-05 17:48:08 | 読書感想文とか読み物レビウー
スペードの3  作:朝井リョウ

以前に「何者」という賞を取った本を読んで、
衝撃を覚えたのが懐かしいところ
めったにやらない、作家で選ぶ読み方をしました
この人の新作が読みたい、そういうわけで
手に取った次第なのであります

今回も面白かった

ただ、前回のほどの衝撃はなかったというか、
いや、同じテイストの似たような話じゃないかと
心のどっかで思ってしまったところがあるのが
前ほどの衝撃を受けなかった理由であると
思うのであります
さりとて、それが、二番煎じかというと
そんなことはあるはずもなく、今回も、ざっくりというか
ぐっさりと、突き刺さるような物語を
堪能できたのであります

3篇の短編からなる本でありましたが、
その中身というか、登場人物と物語は
それぞれがリンクしていて、各章の主人公たちの
後ろめたさというか、何か哀しいと思うような
漠然とした不安みたいなのが、
まぁ、本当、目を背けたくなるほど
克明に描かれておりまして、
目が離せないという具合でありました

自尊心とか、虚妄、虚栄といった芥の数々が、
それぞれの人となりというか、
その形作っているなにかを支える屋台骨のようで
そんな些細な嘘だとか、狡猾さだとか、
守りたい陳腐な何かが、小者っぽさとは違う
なんとも形容しがたいそれを見事に書いていまして
悶絶しきりなのでありました

そういう中身で、どっぷりと浸りきることもできるのですが、
文章というか、情景描写が、かなり好きでして
凄く寒いんだろうなと思わせる表現が、
まぁ秀逸きわまりなくて、軽々と書かれた文章それこれが
目に浮かぶようで見事だと感嘆したのでありました
まさに、花が咲いたようなんだろうなと、
冷たい空気が華やぐ感じが、これでもかと
短い文章なのに十分に伝わってきて、
揺り動かされるようでありました、素晴らしい

ちょっと、げんなりするような、
何かを背負わされてしまうような、
読後感に後ろめたさがまとわりつく感じだけども、
最後には明るいとはいわないまでも、
何か、よい予感が匂うようでもあるのが
まぁ、非常に魅力的でありまして
今回もあたりであったと、楽しんで読んだ一冊でありましたとさ